渋谷イーストゲート・ニワトリ

明里灯

エピソード1(脚本)

渋谷イーストゲート・ニワトリ

明里灯

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〇渋谷駅前
サブロー「よう」
サブロー「俺はサブローって者だ」
サブロー「訳あってこういう姿になっている」
ハチ「すごーい! ハトがしゃべった!」
サブロー「ハトじゃねぇ! ニワトリだ!」
ハチ「え? サブローじゃないの?」
サブロー「そうだよサブローだよ! サブローだったよ俺!」
ハチ「いただきます!」
サブロー「ちょっと待て! おめぇ、人語しゃべるチキン食えるの?」
サブロー「普通食わないだろ! 気持ち悪いし! 止めとけ! ぜってぇ身体に悪りぇから!」
ハチ「分かったガマンする」
サブロー「泣くほど悲しいことか?」
サブロー「俺を助けてくれたら、チキンくらい腹いっぱい食わせてやるよ」
ハチ「サブローどうやったら助かる?」
ハチ「食べればいい?」
サブロー「何で食べられたら助かるの? 『死が唯一の救済』とかそれ系!?」
ハチ「人間に戻りたいんだよね?」
サブロー「そうだよ、急に核心つくな」
サブロー「そう、俺は人間に戻りたい」
サブロー「力になってくれるか?」
ハチ「いいよ!」
サブロー「おう、元気いいな お前さん、そういや母ちゃんはどうした?」
ハチ「お母さんは私が小さなころ・・・」
サブロー「悪い 踏み入ったことを聞いちまったな」
ハチ「お母さんは私が小さい頃、アイスが好きでよく食べてたんだ・・・」
サブロー「その情報、今必要!?」
ハチ「実はね・・・」
ハチ「迷子なんだ」
サブロー「ま、そうだよな」
ハチ「お母さんは目を離すとすぐいなくなる」
サブロー「多分、迷子なのはお前さんだ」
サブロー「こう言っちゃ何だが お前の母さん苦労してそうだな」
サブロー「まぁ、いい 元の姿に戻るのは後だなこりゃ」
サブロー「まずはお前のお母ちゃんを探そう」
ハチ「うん!」
サブロー「イカれたガキだが、笑った顔はかわいいじゃねぇか」

〇渋谷のスクランブル交差点
  夜のスクランブル交差点
サブロー「見つからないな」
ハチ「もう歩けないよ」
サブロー「どうすっかな」
ハチ「おうち帰りたいよぉ・・・」
サブロー(なんだよ、ようやく年相応の顔しやがって)
サブロー(でも、こいつ助けたところで、 俺を助けてくれなさそうだし・・・)
サブロー(ここらがシオドキか・・・)
サブロー「コケ! コココ・・・」
ハチ「サ、サブロー?」
サブロー「コケーコココ」
サブロー(こうしてりゃ俺から離れるだろ)
ハチ「サブロー・・・ もとに戻れたんだね」
サブロー(このちびっ子、 俺のもとがニワトリだと勘違いしてやがる)
サブロー(訂正したいとこだが、止めておこう)
ハチ「サブローがんばったんだね 私も・・・がんばらなきゃ!」
サブロー「ふぅ・・・何とか撒いたか」
サブロー「最初からこうしてりゃよかったんだ」
サブロー「俺はクズ人間 人助けなんて何でしようと思ったのか」
サブロー「こんなナリになっちまったから、 少しは人間らしいことしようと思ったんだろうな・・・」
サブロー「あとは自分のことだけ考えよう よくよく考えれば、俺のほうがよっぽどヤバい状況じゃねぇか」

〇新橋駅前
親父「おや、かわいいお嬢さんだね」
ハチ「えと・・・その・・・」
親父「一人だと危ないよ? そうだ、おじちゃんについてきてごらん」
親父「悪いことはしないよ ご飯食べさせてあげるから、ほら はぁはぁ」
ハチ「知らない人についていっちゃダメって・・・」
親父「大丈夫、僕はこう見えて紳士だから 全部任せてくれればいいよ」
ハチ「や! 触らないで!」
親父「何だね、その手は せっかく優しくしてあげてるのに」
親父「少し教育が必要みたいだね」
ハチ「やだ・・・」
ハチ「サブロー!!!」
親父「三郎?」
サブロー「いやいや、呼ばれていく訳ないでしょ」
サブロー「俺、ニワトリよ? 戦ったら絶対負けるし」
ハチ「サブロー!!」
親父「何かと思えばチキンじゃないか 驚かせやがって」
サブロー「おい、こら 油断しすぎだろ」
サブロー「そこのちびっ子 俺はてめぇのために戦うんじゃねぇ」
サブロー「舐められたから戦うんじゃい!!!」

〇ハチ公前
サブロー「ボロボロだぜ・・・」
ハチ「サブロー大丈夫?」
サブロー「毛の色が変わるくらい蹴られたがよぉ まぁ大丈夫だ」
ハチ「サブローが無事でよかった・・・」
サブロー「さっきはその・・・ごめんよ」
ハチ「何が?」
サブロー「いや、何でもない」
ハチ「うん・・・」
サブロー「これでも食え さっきもらったファ〇チキだ」
サブロー「鳥にファミチキくれるってのも なかなかにファンキーなやつだったぜ」
ハチ「でも・・・サブローもお腹すいてるでしょ?」
サブロー「さっきからお前さんの腹の音がうるせぇんだよ」
ハチ「うん・・・ありがとう」
ハチ「サブローおいしい!」
サブロー「俺の肉じゃねぇ!」
ハチ「いつものサブローだ!」
サブロー「まぁ、な」
サブロー「それより俺気づいたんだが・・・」
サブロー「渋谷ハチ公前と言えば、 すぐ近くに交番あったよな」
ハチ「コーバン?」
サブロー「悪りぃ、俺ってバカだな」
サブロー「一緒に交番に行こう そしたら母ちゃんに会えるさ」
ハチ「うん!!」

〇街中の交番
よしお「キミは?」
ハチ「迷子です!」
よしお「その割には楽しそうだね もしかしてハチちゃんかい?」
ハチ「うん!」
よしお「良かった! お母さんがキミを探していたよ」
よしお「連絡するから待っていてね」
ハチ「はい!」
ハチ「サブロー! ありがとね!」
ハチ「ってあれ? サブロー?」

〇渋谷のスクランブル交差点
  離れた場所で
サブロー「ふむ、良かったなちびっ子」
サブロー「しかし、腹が減ったなぁ・・・」
サブロー「俺このまま死んじゃうのか?」
親父「死なせはせんよ」
サブロー「貴様は!」
サブロー「まさかリベンジマッチ? 俺もうボロボロなんだけど?」
親父「いや、実は俺、神様なんだ」
サブロー「ん?」
親父「キミをそんな姿にしたのもボク」
サブロー「まさか・・・俺の日頃の行いが悪いからニワトリにして、いい行動したら人間に戻す的なアレ?」
親父「違うんだなコレが」
親父「ただ何となくキミをニワトリにした」
親父「そして、何となく戦った」
親父「最後に、なんとなく人間に戻す」
サブロー「・・・」
サブロー「・・・・・・」
サブロー「・・・・・・・・・」
サブロー「殴っていい?」
親父「2回までなら♡」

〇渋谷駅前
サブロー(こうして俺は人間に戻った)
サブロー「朝陽がまぶしいぜ」
サブロー「人がゴミのようだし、 みんな疲れた顔してるし・・・」
サブロー「相変わらずの渋谷ってとこだが・・・」
サブロー「嫌いになれねぇんだよな」
サブロー「この朝の空気感」
サブロー「それに、人だって、一人ひとり向き合えば、あのちびっ子みたいにおもしれぇしさ」
サブロー「たまにはニワトリになるのも悪くねぇかもな」
サブロー「俺はもう御免だがな」
サブロー(マック寄って帰ろ)
  完

コメント

  • 絶妙ですね…すらっとお話が頭に入りました😂どっかネジ吹っ飛んでるけど、何かしらお話は通常軌道に乗ってって、転々とお話が進んでく不思議…そしてちょいちょい挟まるギャグのキレ…好きです😂

  • こういうシュールな雰囲気大好きなので、全てがツボで全てが面白かったです!あっという間に読んでしまいました。台詞もお話もセンスに溢れてる…!

  • サブローのツンデレにやられるんでしょうね、まず。
    おきまりのストーリーをゆるい感じでかき分けながら、
    でも浪花節での大立ち回りもやっちゃいます。
    うーん、ずるいでしょう。ハート鷲づかまれ。

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