被験体「A」

わらやま

山奥の研究所にて(脚本)

被験体「A」

わらやま

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〇原っぱ

〇ボロボロの吊り橋

〇山奥の研究所

〇古生物の研究室
西調査員「・・・」

〇古生物の研究室
西調査員「こちら、西」
西調査員「薬剤保管庫には東の姿は無い」
西調査員「鍵の施錠もされており、電気系統も問題はなく室内も正常な状況」
西調査員「引き続き調査を続ける」
  了解した。
  では地下の居住スペースおよび被験体保管庫の様子を確認しろ。
西調査員「・・・簡単に言ってくれるぜ」
西調査員「異変があったらどうすんだよ」
西調査員「電波も通じねーのに」

〇地下室
西調査員(こんな閉塞的な環境で被験体と2人っきり)
西調査員(しかもそれが薬物投与された狐の様子を見るだけってんだろ)
西調査員(んで、毎日異常なし変化なしの定期連絡を打ち続けると・・・)
西調査員(気が滅入ってもしょうがないよな)
西調査員(どうせ仕事放棄してるだけだろ)

〇研究所の中
西調査員「おい、東!!」
西調査員「ここにもいねぇのか」
西調査員「てっきり趣味の読書でもしてんのかと・・・ん!?」
西調査員「こりゃあ・・・東の手記か」
西調査員「こんなもんがあるなんて報告受けてねぇぞ」
西調査員「まさかあいつ虚偽の報告をして、研究記録の抜け駆けを・・・!?」
西調査員「中身を確認しねぇと!?」
  被験体観察記録
  興味深い、大変興味深い
  まだ私には理解出来ない事が多いが
  驚きに満ちている
  これからの『観察』が非常に楽しみである
西調査員「えらく仰々しいな」
  私はこの被験体を「A」と名付け、この記録を残す
西調査員「何言ってんだコイツ?」

〇牢獄
  Aは私を見て興奮しており
  その目を輝かせながら多くの事を質問してきた
  言葉を交わせるという事に喜びを見出しているのだろう

〇研究所の中
西調査員「言葉だって!?」
西調査員「あの野郎、そんなことは報告では一つも・・・」
西調査員「マジで抜け駆けする気じゃねぇか!?」

〇牢獄
  私は本を読むところを見せた
  これも『A』は大いに喜んだ
  私が何の本を読んでいるのかしきりに聞いてきた
  どうやら本が好きなようだ
  私と同じである
  続いて文字を書いてみせた
  一瞬困惑し驚いた様子だったが
  すぐにまた喜び出した

〇牢獄
  読む本も無くなった頃
  『A』は少し悩んでいるかのようだった
  まるで何かに怯えているように見える
  被験体についてもっと学ぶ必要がある

〇牢獄
  『A』はほとんど喋らなくなった
  私が話しかけてもどこか虚ろで、ひどく怯えた目をしている
  優しく宥めても聞く耳も無い
  『A』は何かを書いた紙をロッカーに入れた
  私は何を入れたか問いただしたのだが・・・

〇研究所の中
西調査員「・・・ここまでで終わりか」
西調査員「日付は一昨日・・・ 連絡が途絶えた日だな」
西調査員「ロッカー・・・」
西調査員「マスターキーで見てみるか」

〇更衣室
西調査員「えと、東のロッカーは・・・これか」
西調査員(しかし、変な日記だったな)
西調査員(別にロッカーなら自分のカードキーで開ければいいし)
西調査員(それに被験体『A』って・・・)
西調査員(あいつには被験体『5721』って識別番号があるのに、なんでわざわざ・・・『A』なんて)
  Researcher 『Azuma』checked

〇黒
東研究員「被験体『5721』、こいつは人智を超えた存在だ」
東研究員「最初は研究者として名をあげるチャンスと喜んでいたが」
東研究員「身体能力、頭脳、全てにおいて常識を超える」
東研究員「伝えようにも定期連絡の際にこちらを見るあの『目』」
東研究員「まるでこちらを『観察』でもするかのようなあの『目』の前では」
東研究員「迂闊な事は出来ない」
東研究員「故にこの手紙を残す」
東研究員「俺にはこれが精一杯だ」
東研究員「あの被験体5721を止めてくれ!!」

〇更衣室
西調査員「ど、どういう事だよこりゃ!?」
被験体5721「なるほど、そうやって開けるのですか」
西調査員「お、お前は!?」
被験体5721「私にもまだまだ分からない事は多いですね」
西調査員「お前まさか被験体『5721』か!?」
被験体5721「ええ、ようこそ西調査員」
西調査員「な、何で俺の名を・・!?」
被験体5721「A・・・東さんから本部の同僚の件は色々聞きましたからね。来るとしたらあなただろうと」
西調査員「そうだ、東は!?東は一体!?」
被験体5721「いやぁしかし、あなたにはいいところに来ていただきました」
被験体5721「ちょうど被験体がいなくなって困っていたんです」
西調査員「ひっ」

〇黒
  ぎやぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁああ

〇研究所の中
  被験体『N』の観察では『A』での反省を活かしなるべく四肢や生命維持に必要な臓器に損傷が無いように努めた
  そのおかげで多くの実験が出来、大変貴重なデータがとれた
  だが私のたぎる知的好奇心を前に
  被験体数が『2』とは少なすぎる
  私自身に同胞への思い入れなどは無いが
  この名に刻まれた5721・・・
  これくらいの個体は観察したいものだ
  ここでは些か手狭である・・・
被験体5721「・・・」
被験体5721「待っていろ」
被験体5721「実験の時間だ」

コメント

  • この作品はホラージャンルであり、高曲原研究所での調査が進行しています。被験体「A」と呼ばれる存在の観察が主なテーマで、物語が進むにつれて研究員たちの心情や被験体との関係が明らかになっていきます。

    感想: 「被験体『A』」は、ホラージャンルの作品として緊迫感があり、一気に読ませる展開でした。研究所の密室状況や被験体の謎に引き込まれました。また、登場人物の心情や行動には驚きや緊張感があり、読み終わった後も考えさせられる作品でした。

  • 見事なまでにミスリードされてしまいました😅 その見事さと、ストーリーの魅力にとにかく感服しきりです🙌

  • 騙されました〜!ゾクッとする展開でした😱

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