クードクラース

イトウアユム

第17話「安楽処置」(脚本)

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〇黒背景
海崎蓮(『運も実力のうち』ならば 俺は実力が無い人間なのだろう)
海崎蓮(なにせ、生まれた瞬間から 貧乏くじを引いてるのだから)
海崎蓮(暴力で家庭を支配する父と その父に依存する母)
海崎蓮(俺を所有物だと勘違いする、 最低な両親)
海崎蓮(勉強は好きだ。なぜなら知識は何もない 俺が持てる、両親に奪われる事の無い、 たったひとつの俺の所有物で──)
海崎蓮(俺の希望、だった―― あなた達はそれすらも俺から奪った)
海崎蓮(俺はあなた達に何も求めない、 命を奪われた事も恨まない)
海崎蓮(だからどうか、俺を・・・自由にして)
海崎蓮(――俺はあなた達から生まれた事を 忘れたいんだ)

〇荒廃した遊園地
黛ましろ「――吊るされた男発動 (オープン・ハングドマン)」
  ミラーハウスの入口に吊るされていた
  スケープゴート。
  それをためらいも無く、チェンソーで
  切断するましろに架純は口笛を吹いた。
設楽架純「容赦ないねぇ、首吊りちゃん」
黛ましろ「・・・どっちにしろ、 あのままだと死んでいたし」
設楽架純「ま、逆さ吊りされて喉を切り裂かれてたら助からないもんね~☆」
黛ましろ「・・・・・・」
設楽架純「ええ? ノーレス? ちょっと待ってよ~」
  なぜこの2人が一緒に行動しているかと
  言うと──

〇荒廃した遊園地
  青紫郎の言う通り、スケープゴートは
  園内のいたる場所に『あった』。
  四肢を切断されてジェットコースターに
  乗せられたり。
  メッタ刺しにされてコーヒーカップの中に放置されていたり。
  ――死ぬに死ねない、助からないであろう瀕死の重傷を追わされた状態で配置されていた。
綾瀬静「まずはカードを集めてから青紫郎に挑もう」
  そして互いを監視し合うという事で、
  ましろと架純
  静と蓮と二手に分かれて
  園内を散策していたのだ。

〇荒廃した遊園地
設楽架純「あ~。コイツ、オレの客だわ」
  大きな噴水に内臓が浮かぶ真っ赤な水面。
  そこに下半身だけ浸かる女。
女「か。すみ・・・助けて・・・」
設楽架純「助けてって、そんなにハラワタこぼして たら、もー助からないっしょ」
  架純はあっさりと先ほど手に入れた
  審判のカードの斧を女の顔面に打ち込む。
黛ましろ「・・・あなたも容赦ないと思うけど」
設楽架純「え~、ホストと客の関係なんて こんなもんしょ」
設楽架純「・・・ってあれ? カードが出てこない?」
黛ましろ「この人・・・アプリに表示されていない」
設楽架純「って事は・・・ タダの人間ってコトぉ??」
設楽架純「──ねえ~! 名無しさーん! なんで普通の人間もいんの?」
篠宮青紫郎「――宝物だけじゃつまらないからね。 ハズレも入れておいたんだ」
篠宮青紫郎「でも、もう少し驚いてくれると 思ったんだけどなぁ」
篠宮青紫郎「架純君はやっぱり、ましろちゃん寄りだね」
黛ましろ「私寄り? どういう意味・・・?」
篠宮青紫郎「契約者以外の人間関係に 興味もしがらみも無いって事さ」
篠宮青紫郎「でもさ・・・君の契約者はどうかな?」
設楽架純「オレの契約者?」
篠宮青紫郎「いじらしいよね。自分を虐げて殺した両親を殺そうとしないなんてさ。だから・・・」
篠宮青紫郎「――そういう可哀そうな子には、 手助けをしてあげたいと思うんだよね」
設楽架純「アンタさぁ・・・レンレンに・・・ なんかした?」
  ひと際低い声で架純は問い掛け、
  答えを待たずに走り出した。

〇お化け屋敷
  その頃、静と蓮はお化け屋敷に
  足を踏み入れていた。

〇拷問部屋
  この遊園地のお化け屋敷は
  拷問部屋をモチーフとし、
  内装を忠実に再現しているのが
  開園当初の売りのひとつだった。
海崎蓮「あそこの拷問椅子・・・ 誰か座ってるのか?」
海崎蓮「でも・・・ アプリには何も表示されていない・・・」
  壁の燭台の蝋燭の炎がゆらゆらと揺らす、
  薄暗い室内。
  部屋の中央に設置されている2つの拷問
  椅子に人影が2つ、縛り付けられている。
  慎重に人影に近づいて行った蓮──
海崎蓮「嘘だ・・・」
海崎蓮「――母さん、父さん・・・ なんでこんなところに・・・」
蓮の父「蓮・・・なんで・・・?」
  しかし、殺したはずの子供が生きていた事よりも、間近に迫る死の方が怖いのか──
蓮の母「・・・ねえ、蓮、助けて・・・ 私、死にたくないのよ・・・」
蓮の父「そ、そうだ! 助けろ、俺達を! 早く、早く―っ!」
  必死に命乞いをし始める両親に
  蓮は思考が停止する。
海崎蓮(何を・・・言ってるんだ? この人達は・・・俺を散々虐待して・・・)
海崎蓮(挙句に殺したくせに・・・ そんな俺に死にたくないだと?)
蓮の母「蓮・・・れん・・・」
  自分を呼ぶ母の声。
  僅かに蘇る、母が幼い頃の自分に優しく
  笑い掛けてくれて・・・抱きしめた記憶。
海崎蓮「・・・・・・」
  蓮は唇を噛むと、2人の元に歩み寄った。
綾瀬静「おい、蓮・・・」
海崎蓮「・・・待ってて、2人とも。今外すから」
  2人を椅子に拘束していた金具が
  次々と外されていく。
海崎蓮「・・・ここから早く逃げた方が・・・」
海崎蓮「え・・・?」
  蓮の腹には2本のナイフが刺さっていた。
  父と母、それぞれが隠し持っていた
  ナイフだった。
蓮の母「知ってるのよ・・・! あなたがいるから、 だから・・・私達はこんな目にっ!」
蓮の父「もう一度死ねっ! この悪魔めっ!」
綾瀬静「――悪魔はお前達だ! 吊るされた男発動(オープン・ハングドマン)」
  自分勝手な、子供を省みない醜い大人の
  姿に、静の怒りは一瞬で沸き上がった。
綾瀬静(親と言うのはそういうものじゃないだろ!)
  そしてナイフを再び振り上げようとした
  両親の首に縄を掛け天井に吊り上げる。
  頭上でもがき、苦しみ、死にゆく2人を
  気にも留めず、静は床に倒れた蓮の元に
  駆け寄った。
綾瀬静「・・・あいつらには、 助ける価値なんてなかったのに」
海崎蓮「ふふ・・・僕も・・・綾瀬さんみたいに 強くなりたかったな・・・」
海崎蓮「弱いから、最後まであの人達から 逃れられなかった・・・」
綾瀬静(蓮が葬りたかったのは、 自分の遺伝子ではなく・・・)
綾瀬静(こんな親に一抹の愛情を期待する 自分だったのかも知れない)
  出会った当初のましろと、幼少の自分が
  重なる孤独な少年の亡骸を、静は慰める
  ようにそっと抱きしめた。

〇拷問部屋
  駆け付けたましろと架純の目に飛び込んで
  きたのは、天井に吊された男女の死体と、
  床に横たわる蓮の姿だった。
設楽架純「――あーあ。 レンレン・・・死んじゃったんだ」
  架純はそう呟くと、
  動かない蓮の姿をじっと見つめ・・・
  そして、ましろにカードを渡した。
設楽架純「――ほら、やるよ。 俺とレンレンの持ってるカード」
設楽架純「このゲーム、もう飽きちゃった」
  渡されたカードの中に架純のカードである星のカードを見てましろは眉を潜める。
黛ましろ「なぜ? それにあなたのカードまで渡す 必要は無いんじゃないのかな・・・」

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