エピソード22『光で満ちて』(脚本)
〇荒廃したセンター街
【2034年、モンガル『ホビロン』。『言霊 みれい』】
船を降り、幾里と歩いてようやく辿り着いた国『ホビロン』。
そこは、噂に聞く、不夜光絶えぬ街では無かった。
在ったのは、覆うように連なる建屋が燃え上がる姿と、逃げ遅れた数多くの人々、
そしてそれを追う『キメラの軍勢』だった。
逃げまわる人「化け物だ! 日本の『化け物クリエイターズ』が化け物を送ってきた!」
逃げまわる人「逃げろ! 兎に角逃げろ!!」
逃げまわる人「これだから、日本は!!」
逃げまわる人「助けて! 死にたくない!!」
叫ぶ人々を、押しのけ、押し潰し、連なる家屋をぶち壊して走ってきたのは、
──『祈』の顔をした化け物だった。
〇荒廃したセンター街
ツクル「──そのキメラ、お、オマエ、よくもッ!!」
歯車フォーチュン「あらあら、お早いお着きで。 ええ! キメラ『イノリ』は私が使わせてもらってまーちゅ。より良くイジってね」
歯車フォーチュン「『創くん』、キミと私は、ちょっと違う」
歯車フォーチュン「私はコイツを乗り回して使う。 この機動性、力強さ、汚いツラ、 全ては、私に乗り回されて真価を発揮する」
『フォーチュン』は、仮面の前で指を振って嘲けた。
歯車フォーチュン「つまり、これは私のモノ♪」
歯車フォーチュン「こ・れ・は、私の騎乗型キメラ『イノリ』です。ゴミはゴミ箱に捨てないと悪用されちゃいますよ? 解りまちたか? 『創くん』」
背をのけ反らせて、『イノリ』の首に巻いた手綱を引きに引いた。
『祈』だった怪物が涎を振りまく。
『フォーチュン』は、キレイだった『祈』を侮辱して、首を引き乗り回した。私たちが大好きだった『祈』を。
歯車フォーチュン「イイ顔してるでしょ? この子! 最高に気持ち悪い! 乗り心地も悪い! だがそれがイイ」
『イノリ』を弄って創られたキメラは縦横無尽に駆け、仲間たちを踏み潰した。
鎌を振るい、私たちのキメラを次々と刈っていく。その巨体と鎌に、家族が、1人また1人と殺されていく。
『イノリ』から私たちを守る為、『緋色』と『人魔』 が武器を構える。
けれど『緋色』と『人魔』の怪力にも、『イノリ』の熊と馬の四つ脚は止まらない。
『イノリ』の顔をしたアレが、ヨダレをまき散らして吠え狂った。
『イノリ』に乗った『フォーチュン』の後方にも、ものすごい数のキメラが居る。クマ?ゴリラ?馬?どれも普通のキメラでは無い。
奇形ばかりが其処に居た。その中にペスト持ちも当然居るんだろう。
キメラの群れ、その一角を『ファジー』の弓で撃ち崩す。けれど状況は変わらない。黒い群れが、私たちを吞み込もうとしていた。
みれい「『楽々』! 銃は身を守る為にだけ使って! 攻めるのは神器を持つ私たちと、『人魔』でイイ」
楽々「み、『みれい』 で、でもこれじゃ、あたしたち、」
楽々「・・・死んじゃう」
『楽々』がその言葉を飲み込む。いつも陽気なその声がかすれていた。
『イノリ』の猛攻、そして騎乗した『フォーチュン』の銃をも裁き、『緋色』がどれだけのキメラを殺したのだろうか?
『人魔』が『イノリ』相手にどれだけの攻撃を凌いだというのだろう。
2人のその腕が、どれだけの赤に染まったというのだろう。
どれだけ、ペスト持ちの血を浴びてしまったんだろう。
〇空
・・・私たちはナニを敵に回したのだろう。
無尽蔵に湧くキメラを、先の世界に、土煙の中一面に見て、
諦めるわけがないのに、諦めたくなんてないのに、諦めきれるわけがないのに、
・・・指示を出す声が薄れていく。
『創』の撃った銃が、運良く『フォーチュン』の仮面をはじいた。
その現れた顔に、その顔に張り付けられたモノに、私たちは言葉を無くした。
緋色「お、オマエ、『剛おじちゃん』の顔を! 『剛おじちゃん』の顔を剥いだのか?」
叫ぶ『緋色』が『イノリ』の脚にはね飛ばされる。『フォーチュン』を前に、『創』の腕が完全に止まった瞬間だった。
『イノリ』の前部剛腕、カマキリのソレが振りかぶられる。息を呑む間も無く『フリーシー』の剣と『創』の腕が斬り落とされた。
歯車フォーチュン「残りカス『化け物クリエイターズ』から『赤い宝』をまずは回収♪ っと」
〇荒廃したセンター街
私は覚悟した。
『タタミ』へあの『メモリースティック』を手渡す。
みれい「『タタミ』、この中に私が書いた物語がある。これをアナタに任せるからっ! あとはお願い! 私の夢を!」
タタミ「ま、待って! 『みれい』!!!!」
私は『タタミ』の声を振り切り、もしもの時の為にとっておいた、爆薬の束を体へ巻いた。
背中を任せていた『緋色』へ、すれちがいざま言葉を掛ける。
みれい「『緋色』みんなをお願い! 絶対、絶対守ってね! 世界で1番大好きな、世界で1番強い私の『緋色』!」
緋色「待て! おい! 何を!!」
私は『緋色』をはね飛ばし、『イノリ』へと手を伸ばす。
みれい「『祈』、」
みれい「・・・一緒に行こっ」
イタカッタ、
そして、熱を伴う世界は、圧倒的な光に
ミチ──ミチテイタ。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭