クードクラース

イトウアユム

第11話「交通事故」(脚本)

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〇大きい交差点
毛利陸男(――さえないサラリーマンは俺の仮の姿)
毛利陸男(ある日突然、誰かに特別な存在なんだと 告げられ、新たな世界に召喚される)
毛利陸男(・・・なんてね。 流行りの小説や漫画じゃあるまいし)
毛利陸男(だけど・・・)
  キキーッ! ドンッ!
  トラックにはねられた瞬間、
  陸男は心のどこかで期待した。
毛利陸男(・・・もしかしたら・・・ 俺は異世界に転生するのかも知れない)
毛利陸男(実は俺は選ばれたヒーローで・・・ この物語の主人公なのかも・・・!)
  しかし現実は残酷だった。
  激しい痛みがそれらは全て小説や漫画の
  世界の幻想だと陸男に突きつける。
毛利陸男「クッ・・・いた・・・ 目の前が・・・暗く・・・」

〇黒背景
  何も聞こえない、見えない、
  感じない闇の中。
毛利陸男(俺、死ぬのか? ・・・死ぬ? 俺は平凡なサラリーマンで終わるのか?)
毛利陸男(そんなの嘘だ!)
毛利陸男(・・・俺は、 選ばれたヒーローになるんだ!)
毛利陸男(このまま・・・何もしないまま、 出来ないまま・・・)
毛利陸男(死ぬはずじゃないのに!)
毛利陸男(嫌だ、誰か、誰か助けてくれ!! 俺は・・・死にたくない!)
  現世に未練を残し、
  地獄へと引きずり込まれ・・・
  毛利陸男の人生はこうして
  幕を閉じたのだった。

〇モヤモヤ
毛利陸男(俺はたくさんの未練を この世に残して死んだ)
毛利陸男(けれども俺は選ばれた・・・ ストレイシープに)
毛利陸男(やっぱり俺は特別な存在だった。 運は俺に味方したんだ!)
毛利陸男(・・・いや、味方したのは悪魔だけどさ)

〇大きい交差点
  陸男にストレイシープとしての仮初の生が与えられ、ゲームが開始してから数日。
  最初こそ選ばれ、生き返った事を
  喜んでいた陸男だったが──
毛利陸男(でも、このゲームはちょっと・・・ 俺の趣味じゃなかったな・・・)
  自分以外の家畜達は『異常』で
  殺伐とした血生臭い戦いばかり。
  陸男は戦いを避け、
  ひたすら身を隠す事に徹していた。
毛利陸男(ちょっと情けないけど・・・ あんな人達と戦ったって勝ち目は無いし、 運も実力のうちだしね)
  陸男の所有している唯一のカードである
  『運命の輪』も、戦って手に入れたもの
  ではない。
  偶然目の前で死んだスケープゴートから
  手に入れたものだった。
毛利陸男(なるべく戦いには参加しないで 細く長く生きる・・・)
毛利陸男(そして運良く勝つ。 これが一番堅実だ)
毛利陸男(・・・そのためにはなるべく 目立たないように行動しないと)
  しかし、
  陸男の考え方はある日突然変わる。
  ストレイシープに襲われていた愛良と
  運命の出会いを果たしてしまったからだ。
小早川愛良「助けてください・・・」
毛利陸男(・・・思わず守ってあげたくなるような)
毛利陸男(そんな可愛らしさというか、 可憐さが愛良さんにはあったんだよなぁ)
毛利陸男(これが・・・ ひとめぼれってやつなんだろう)
  それまで陸男の知っている家畜の女性は、
  レイナや愛乃、みくる達の様な強烈な
  個性の持ち主ばかり。
  さえないサラリーマンの陸男にとってどちらかというと苦手なタイプばかりだった。
  それに加えて愛良の様な美少女に頼られるというシチュエーションに陸男はすっかり舞い上がってしまったのだった。
  そして――愛良の弟の亜里寿も
  スケープゴートだった。
小早川愛良「弟にはこんな戦いに参加させたくないんです・・・亜里寿の手を血で汚したくない」
小早川亜里寿「ボクは・・・ お姉ちゃんがそう望むなら・・・」
  美少女と美少年に頼られ、
  陸男は愛良と契約した。
  愛良は愚者のカードの
  スケープゴートだった。
  愚者のカードは恥辱の仮面を召喚し、
  被って願うと、その願いを1つだけ
  叶える事が出来る。
  ただ、そのカードで叶えられる願いは
  使用者が具体的にイメージ出来るもの
  でなければならない。
小早川愛良「亜里寿の病気を治す、というのは 私がイメージ出来なくて駄目でした」
小早川愛良「亜里寿は生まれた時から、 病弱だったので・・・」
  愛良と陸男は、どうすれば亜里寿を
  この殺し合いに巻き込まないで済むか
  話し合った。
  迫りくる逃れられない亜里寿の死。
  これを穏やかに迎えさせるためには
  どうすれば良いのか。
毛利陸男「亜里寿君はスケープゴートではない、 と願うのはどうだろう?」
毛利陸男「アプリから消えているイメージなら 想像しやすいと思うし・・・」
毛利陸男「亜里寿君のカードも 表示されなくなると思うんだ」
  予想は当たり、亜里寿は『スケープゴートとして』アプリに表示されなくなった。
  そして陸男は、当初の引きこもりが
  嘘のようにアクティブに動きだす。
  ストレイシープ達に積極的に連絡を取り、協定を結び、カードを狩り始めたのだ。
毛利陸男(運命の輪のカードさえあれば、 俺は何度でもやり直せる)
毛利陸男(何度も何度でも勝つまで時間を巻き戻す)
毛利陸男(――生きてた頃から 作業ゲーは得意だったしね)
  正義のカードを手に入れたのも
  その頃だった。
  全ては愛良のために、
  愛する女性のために。
  それが今の陸男のモットーだった。

〇川沿いの公園
小早川愛良「今日はご馳走様でした」
  陸男と愛良は夜の静かな川を
  眺めながら歩いていた。
  昼間は人でにぎわう公園も、
  夜は人影がまばらで静寂が辺りを包む。
小早川愛良「ふふ、あんな美味しいお食事を陸男さんと2人だけで食べたなんて・・・ 亜里寿が知ったらすねちゃうかな?」
毛利陸男「じゃあ、亜里寿君が退院した時に 今度は3人で食べに行こっか」
小早川愛良「亜里寿が退院した時・・・ですか」
  陸男の言葉に愛良は歩みを止めた。
毛利陸男「そうだ、なんだったらあの店で 退院祝いをしようよ!」
毛利陸男「せっかくだから貸し切りにして・・・」
小早川愛良「亜里寿は・・・ もう退院出来ないと思います」
  先程までふわりとした笑顔を浮かべていた愛良の表情が暗くなる。
小早川愛良「今日、先生に言われました、 亜里寿はもう数か月持たないだろうって」
毛利陸男「そんな・・・」
小早川愛良「覚悟はしていました」
小早川愛良「でも・・・やっぱり悲しいです・・・ 亜里寿を失うなんて耐えられない・・・」
小早川愛良「それに・・・ すごく怖いんです」
小早川愛良「もうスケープゴートも半数近く カードになってしまった」
小早川愛良「次は私の番かも知れません」
毛利陸男「愛良さん・・・」
小早川愛良「なんで・・・こんな・・・」
  泣き崩れ、震える愛良の背中を
  陸男は優しく撫でた。
毛利陸男「――愛良さん。 俺ね、最初は生き返りたくて このゲームに参加したんだ」
毛利陸男「なるべく長く生きて、そして運良く 最後まで生き残れたらいいなって 程度の気持ちだった・・・」
毛利陸男「でも、今は違う」
毛利陸男「俺は愛良さんのために 最後まで生き残りたい」
小早川愛良「陸男さん・・・」
毛利陸男「いろいろ考えたんだ。どうすれば 愛良さんの望む未来になるかって」
毛利陸男「それで・・・閃いたんだ」
毛利陸男「俺がタリスマンを手に入れて、 最強の悪魔になれば良いんじゃないかって」
  なにせ、このゲームの主催の様な上位の
  悪魔には、1度に12人もの死者を蘇らせる
  力があるのだ。

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