化け物クリエイターズ

あとりポロ

エピソード21『決戦前夜』(脚本)

化け物クリエイターズ

あとりポロ

今すぐ読む

化け物クリエイターズ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇豪華な王宮
  【2034年、モンガル。『歯車フォーチュン』】
歯車フォーチュン「こんなものかな、『ホーム・ホルダー』も」
  自室のホールにてしゃぶりつくした鳥骨を舐める。そこにはもう髄液の一滴すら残っていない。唾と一緒に屑箱へ放った。
歯車フォーチュン「飽きた。飽きましたよワタシ」
  ホームに蓄えられたデータは、全て閲覧しこの頭に容れてある。あいつらの『ノウミソ』もこの骨と同様、舐め終えたも同然だ。
歯車フォーチュン「手に入れるモノも、もう無さそうですし、・・・主席聞こえているかい?」
「はい、『フォーチュン様』。全てが順調です」
  モンガル大帝国、新・国家主席へベルを飛ばす。コンマ1秒で応える彼に思わず頰が緩んだ。
歯車フォーチュン「年明けにアラスカへ核ミサイルを3つ、それで終いにしよう。その後、私が新たな『ホーム・ホルダー』を結成する」
「仰せのままに」
  端末を置くと、『ハエ』キメラが窓から帰投してくるところだった。羽ばたきで表す報告を聴き、ソレを口へ放る。
歯車フォーチュン「『ウジたん』は、実にイイ仕事をしたね」
  咀嚼、吟味しながら自室から繋がるホールへの暗幕を解かせた。

〇大広間
歯車フォーチュン「さて、『ウジたん』のかたき討ちと行こうじゃないか? 日本に残した『ゴミクズ』どもを片づけよう」
歯車フォーチュン「迎え撃つよ、我が『フォーチュン・ファミリー』!」
  私の言葉に、整然と並んだ幾千の『化け物』が敬礼する。こいつらは、私が創った最強の部隊。私の遺伝子を継いだ『化け物』だ。
  今、この『モンガル』の地に、ありとあらゆる『化け物』を集めた。全ては、日本の『化け物』から宝を取り上げ、抹殺するためだ。
歯車フォーチュン「・・・・・・役に立ってくれよ、雌豚ども」
  私の前には、幾つもの艶めかしいクローンが並んだ。その、チカラ持つ少女たちは、こぞり押し退けあいながら私の靴を舐めていた。

〇村の眺望
  【2034年、イバラキ。『言霊 みれい』】
みれい「イジってごめん。けど絶対強くしてあげるから!」
スバリナ「ミンナガンバレ! 『スバリナ』オウエンシタ!」
みれい「あんたもよ! 『スバリナ』」
  私たちは、キメラの皆をありとあらゆる方法で弄り、強化した。
  資金は悲しいくらい余っていた。
  
  それは全て『創』が持ち帰ったもの。『創』のチカラがあってこそ、だった。
楽々「やっと銃が使えるー! 『楽々ちゃん』圧倒的安堵だよっ♪」
  弾薬の詰まった銃を手に『楽々』が飛び跳ねる。銃弾や剣などの武器の補充も、食糧の補充も申し分ない。満を持して、って感じだ。
  後方から『創』が足を進めた。
ツクル「そしてボクたちには『切り札』が居る。 ・・・・・・おいで」
  『創』の背後から皆の前に、銀色の巨躯 が足を踏み出す。
  現れたのは太い豪腕、かつ全身を銀の甲冑で包んだ戦士、
  
  ──『化喰《ばくら》人魔《じんま》』だった。
化喰《ばくら》人魔《じんま》「ワタシハ、善ヲシラナイ。悪モ、シラナイ。ケレド」
  彼がカタコトで話す。その目は、元となった『あのヒト』と同じ優しさを宿している。人を安心させる煌めきが、そこには在った。
化喰《ばくら》人魔《じんま》「タオスベキハ『創』ノテキ。ソレダケハ、ワカル」
緋色「チカラを貸してくれるのか? あんた」
  『人魔』が『緋色』に向かって頷く。『緋色』が、満面の笑みでその肩を叩いた。
緋色「よろしく頼む! あんたなら申し分ない! 心強いよ!」
  旧知の友のような、何処か似た雰囲気を持つ2人だった。『人魔』は寡黙に佇み、その背をぐしぐし、『緋色』が小突いている。

〇村の眺望
  あれから何匹もの家族が、『ペスト』で亡くなった。
  二次感染の危険を少しでも下げる為、私たちの農場から近隣に住む人々を離れさせる。
  それでも金内さんをはじめとした工房のみんな、商店街のみんなが、恐れずに私たちをサポートしてくれた。
  『緋色』は毎日お祈りをしている。
  朝、誰よりも早く起き昇っていった魂へ祈りを捧げていた。もちろんその隣には『タタミ』の姿が在る。言葉無く2人で祈っていた。

〇村の眺望
  その翌日、私たちは『ヒタチナカ』の街とお別れをした。
  農場の世話、学校の管理は、信頼できる知人へお願いしてある。
  
  きっともう、心残りは無い。

〇トラックの荷台
  月を仰いで、貨物列車の荷台の中、飲みに飲んだ。食べた。歌った。
タタミ「美味しいね、『真衣』」
真衣「お姉ちゃん、飲みすぎ?」
  美味しそうに『ヒユイマギイナ』を飲んで、酔っ払う『タタミ』が居た。
  荷台に作ったお立ち台で踊る、『楽々』が居た。
  『緋色』から教えを乞う、『コージ』の姿が在った。
ツクル「・・・・・・」
  『創』は最後の最後まで、本を手に勉強をしていた。
  そんなみんなを前に、私は書きかけの物語の最後を描《えが》 く。
  PCの充電量も残り僅かだ。
  
  【Fin.】と書いた文章を、一息に閉じる。
  私はそのデータをメモリースティックへ移しポケットに押し込める。
  見上げた空は星の光で満ちていた。広く高く光が広がっている。
みれい「戦士たちは皆であの地へ帰った。その手は永久《とわ》 に離れる事はない。 そして、末永く、末永く幸せに・・・・・・」
  呟きは、冷たい夜風に砕けて溶けた。儚く散ったモノ皆を、まるで嘲笑うかのように。

〇赤レンガ倉庫
  夜明けを前に、皆が浅い眠りから目を覚ます。
  陸路を終えた私たちは、風に煽られながら港へと足を進めた。
  
  振り向き、皆に向かって檄を飛ばす。いよいよだ。
みれい「行くよっ! みんな!」
  岸に寄せられた巨大なクルーザー、その前に立つ船長・船員の方々へ皆で一礼する。

〇沖合
  大きくチカラ強い汽笛が、朝焼けの空を流れた。
  チーム『化けクリ』の皆を乗せた船が、一路大陸へとその舵を切ったんだ。
  𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

次のエピソード:エピソード22『光で満ちて』

成分キーワード

ページTOPへ