カチコミ(脚本)
〇川沿いの原っぱ
とある河原──
リュウ「・・・1週間後の今日と同じ時間に決着を着けるってことでいいな?」
タイガ「・・・あぁ」
リュウ「勝ったほうがこの街のボスだ ビビって逃げるなよ」
タイガ「フッ・・・」
リュウ「おい、何がおかしい? 今ここでぶちのめしてやっても良いんだぞ!」
タイガ「・・・弱い犬ほどよく吠えるってことわざ知ってるか?」
リュウ「!!!!」
リュウ、タイガを噛みつきにいくが、
避けられる。
タイガ「その様子じゃ自覚があるみたいだな! ・・・ハーハッハッハ」
走り去るタイガ
〇土手
歩いているリュウとヒロシ。
ヒロシ「実際、兄貴やったら楽勝ちゃいますの?」
リュウ「いや、そう一筋縄じゃいかない もっと力をつける必要がある」
ヒロシ「で、渋谷ですか?」
リュウ「名前は分からないが 相当な実力者がいるらしい」
ヒロシ「渋谷のことはよく知らんけど、 兄貴レベルのヤツがそうそういるとは思えへんけどなぁ・・・」
リュウ「もうこのあたりで俺に喧嘩を売ってくる奴もいなくなった・・・」
ヒロシ「・・・」
リュウ「現状維持は退化と同じなんだ」
ヒロシ「兄貴・・・」
〇川に架かる橋の下
リュウに蹴り飛ばされ、
壁に叩きつけられるマサ。
リュウ「お前らのボスはどこにいる?」
マサ「・・・ハッ、ボスだ? 渋谷にはそんなのいねぇよ、ボケが!」
ヒロシ「こいつ、兄貴に・・・!」
リュウ「いないっていうのはどういうことだ?」
マサ「そのまんまの意味だよ! ボスが仕切るなんて 古臭ぇルールは渋谷にはねぇのさ!!」
リュウ「・・・質問を変える 渋谷で一番喧嘩が強いヤツは誰だ?」
マサ「・・・知ってても お前らみたいなよそ者には教えねぇよ!」
マサ、リュウの顔面に唾を吐き掛ける。
リュウ「クソガキが・・・!!」
マサを思い切り殴るリュウ。
気を失うマサ。
リュウ「・・・チッ」
「さすがじゃな・・・ ただのチンピラでは相手にもならんか」
リュウ「誰だっ!?」
ゴロウが物陰から姿を表す。
ゴロウ「やれやれ、 凄まじい殺気じゃのう」
リュウ「・・・誰だ?」
ゴロウ「ワシはゴロウ このあたりでは長老と呼ばれておる」
ヒロシ「長老・・・?」
リュウ「あんた、色々と知ってそうだな」
ゴロウ「あぁ確かに長生きした分持っている知識は多いかもしれんな 黒鬼のリュウ君とその舎弟のヒロシ君よ」
ヒロシ「!!!!」
ゴロウ「閃光のタイガとの対決を前に 渋谷でどさ回りってとこかの?」
リュウ「!!!!」
ゴロウ「渋谷にも喧嘩自慢はおるが、 あんたほどの猛者はそうおらんよ」
ヒロシ「兄貴、やっぱりガセネタやったんですよ 兄貴と張るぐらい気合が入ってるヤツが渋谷におるなんて」
リュウ「・・・本当にいないのか?」
ゴロウ「気合が入っている、ということであれば いないこともない」
リュウ「だったらそいつでいい そいつに会わせてくれ」
ゴロウ「・・・しょうがないのう 付いて来るんじゃ」
〇ハチ公前
渋谷駅前──
リュウ「ここは・・・駅か?」
ゴロウ「・・・あの方じゃ」
ゴロウ、ハチ公像を指差す
ヒロシ「・・・おいおい爺さん! なめてんちゃうぞ! あれは人間が作った銅像やないか!」
リュウ「どういうことだ?」
ゴロウ「どういう事もなにも、 気合が入っている渋谷の打表として ハチさんを紹介しただけじゃ」
リュウ「ハチ!? あれが・・・」
ヒロシ「アニキ、知ってるんですか?」
リュウ「詳しくは知らないが、 人間の間で伝説になった結果、 ああやって崇められてるらしい」
ヒロシ「伝説?」
ゴロウ「・・・ハチさんは10年もの間、 帰ってこない主人をここで待ち続けていたんじゃ」
ヒロシ「なんや、待ち続けただけかい・・・」
ゴロウ「当時、魔都と呼ばれていた渋谷で徒党も組まずにじゃぞ? 暴力も振るわず、やり返すこともしなかったらしい」
リュウ「・・・」
ゴロウ「渋谷にはボスがいないわけじゃないんじゃ」
ヒロシ「・・・え?」
ゴロウ「ハチさんという圧倒的な伝説を前に 恐れ多くて渋谷のボスを名乗ることが皆できないんじゃ」
リュウ「・・・回りくどいな 戦いでボスを決めるのはくだらない、 そうはっきり言え」
ヒロシ「・・・兄貴」
ゴロウ「儂は事実を語ったまでじゃ ただ、強さでねじ伏せる者は いつか必ず強さでねじ伏せられる」
リュウ「・・・」
ゴロウ「渋谷にはそんなものに左右されない 本物がいたっていう自慢話じゃよ」
リュウ「本物・・・」
〇川沿いの原っぱ
1週間後──
佇んでいるタイガ、
その周りには大勢のギャラリー。
タイガ「・・・ハッハッハ リュウは俺に恐れをなして逃げた! 今この瞬間から、俺がこの街のボスだ!!」
〇土手
歩いているリュウとタカシ。
ヒロシ「・・・兄貴、本当に良いんですか?」
リュウ「この街のボスになることの意味も 自分がどうなりたいのかも よく分からなくなった・・・」
ヒロシ「・・・」
リュウ「お前こそいいのか? 当てのない旅になるぞ」
ヒロシ「兄貴の側が俺の居場所です! どこまでも着いていきます!!」
リュウ「・・・そうか」
歩いていく2人。
〇川沿いの原っぱ
1年後──
リュウ「・・・」
ジョージ「おいそこのお前、見ない顔だな」
リュウ「・・・タイガは元気か?」
ジョージ「昔この街に住んでたクチか・・・ タイガはな、俺様が叩き潰してやった! もうこの街にはいない!!」
リュウ「・・・そうか」
ジョージ「・・・お前相当できるな? 俺の兵隊になれ 良い思いをさせてやるぞ」
リュウ、ジョージを無視して去ろうとする。
ジョージ「俺の立場を脅かす可能性のある奴には、 消えてもらう!」
リュウに飛びかかるジョージ。
リュウ「・・・じゃれるな」
リュウがジョージを睨み付けると、
ジョージは固まって震え始める。
ジョージ「・・・がっ」
気を失うジョージ。
ヒロシが走って来る。
ヒロシ「アニキ、タイガは半年前に他所から来たジョージって奴にやられて、 もうこの町にはいないそうです」
リュウ「・・・そうか」
ヒロシ「ん? この倒れてるヤツは?」
リュウ「最初からここで寝てた」
ヒロシ「・・・そうですか」
リュウ「ヒロシ、行くぞ」
ヒロシ「はい!」
歩いていく2人。
犬の世界に限らず、人間の世界でも、力で奪い取ったものは必ず力で奪い取られる。長老さん、今の世界の国々に教えて欲しいものです。
言葉を持たない動物達は、正当な戦い方をして秩序を守っているのでしょうね。人間が醜い争いで社会を世界を混乱させることの無意味さを教えてくれますね。
なんだか犬だけど迫力ありました。
結局力でねじ伏せると、同じく力で…みたいなことになっちゃうんですよね。
それでは争いは終わらないと、長老は言いたかったのかな?と思いました。