エピソード18『3つの宝』(脚本)
〇古民家の蔵
【2034年、イバラキ。『ヒト腹 創』】
その日、『タタミ』がその正体をボクへ明かした。
移民『ノア』の最重要人物が自身の本当の父だと云う。そしてボクに託したモノが在った。父から継いだ宝物だと『タタミ』は言う。
タタミ「赤い宝、青い宝、黒い宝、計3つの石。 宝と云うけど、本当は恐ろしい『パンドラの箱』のようなものなのかもしれない」
タタミ「これを、わたしはリーダーに託したいの!」
〇小さな小屋
『ホーム』のアラスカ機密研究所から持ち帰った機材で調べ分かったことは、驚愕の事実だった。
この3つの石は硬度の高い金属でありながら、
・・・・・・生きていたのだ。呼吸を行っている。
ツクル「生きた金属? 生命核を持った金属だっていうのかい? そんなバカげたものがここに在るというのか?」
けれどこれを使えば、──可能になるかもしれなかった。
ツクル「『緋色』、ボクに『奈久留』の体を預けてくれないか?」
白い棺桶で冷凍保存されている、親友『奈久留』の体は未だ『壊死』していない。
彼女は『ペスティス』と同化し生かされていた。
寧ろ『奈久留』の五体全てが『ペスティス』だった。
この生きた金属は『奈久留』の体をきっと『活かす』ことが出来る。
──先日の『緋色』の言葉を思い出す。
〇村の眺望
緋色「弄る器ってのは、肉体じゃなきゃ、生き物じゃなきゃダメなのか? もっと、こー、ないのか?」
〇小さな小屋
もし、理屈が現実にまかり通るなら、ボクは『緋色』の言葉を実践できるかもしれない。
ボクは創りたい! 人を器とした武器の理想形、――『神器』を。ボクを信じてくれた友の為に。
『黒い宝』の中に、もう人間に戻れない『死体の意志』を、『奈久留』という名の『ペスティスの記憶』を移すんだ。
硬度の高い『ペスティス』の腕、それは最強の武器になり得る!
ボクは、出来る限り解りやすく『緋色』へ説明した。
『奈久留』の『意志と腕』を、『緋色』の武器として使おう、と。
『フォーチュン』に、そして世の不条理に打ち勝つためには、『ペスティス』とこの『黒い宝』が必要だという事を。
それは、
『ブラック・ダド』、『ホーム・ホルダー』の長《トップ》を超える為にも『必要』だと。
そして、『奈久留の腕』を移植したら最後。キミは、
【誰にも触れる事は許されない】
と。
成功する確率もいちじるしく低い。『緋色』にペストが感染る可能性も、当然『緋色』が死ぬ可能性もある。
それでもキミは、
ツクル「──チカラが欲しいかい?」
〇村の眺望
【2034年、イバラキ。『飼葉 タタミ』】
先生の手術が決まった。リーダーの執刀で明日の朝一番に行われる。
『奈久留さんの腕』と『黒い宝』・『緋色先生』3つの『結合手術』だと云う。
これが成功すれば、先生にも『右手』が出来る、らしい。
難しい手術だろうけど、きっとみんな心配はしていない。リーダーと先生なら乗り越えられる事を疑わない。
それなのに、・・・『みれい』が声を押し殺して
・・・・・・泣いていた。
学校の隅の納屋でいつまでも。リーダーから何かを聞かされてから、ずっとだった。
〇村の眺望
その日、畑から帰ってきた先生は、しばし逡巡した後、わたしに視線を合わせ、その言葉を発した。
緋色「『タタミ』!」
夕日を背負ってその表情がはっきり見えない。
ただ、陽の光が強すぎて、その逞しい片腕がまるで傷んだ土気色のように見えた。
緋色「・・・俺でよかったら今日、えと、今夜デートしようか?」
表情は解らないけど、その頭を盛んにかいている。
タタミ「え? あ、その・・・」
心臓がバクバク鳴って何も考えられない。こんな事、今まで許してもらえなかったし、実るものだと思っていなかった。
だから、膝から下もガクガクで立っているのがやっとの状態だった。
おそらく照れているであろう先生の姿も、今のわたしには直視する事が出来なかったの。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭