誘拐プランナー Catcher in the lie

吉永久

エピソード7(脚本)

誘拐プランナー Catcher in the lie

吉永久

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〇線路沿いの道
平川盗愛「ここが待ち合わせ場所?」
高木誘作「ああ。二度確認したから間違いないよ」
平川盗愛「それにしては何もなくない?」
平川盗愛「もう少しないの? わかりやすい目印とか」
高木誘作「さぁ? 俺に言われてもね」
平川盗愛「なるほど。こういうことね」
高木誘作「乗れってことだよね?」
平川盗愛「それ以外ないでしょ」

〇車内
高木誘作「あんたが蛭間さん?」
運転手「・・・・・・」
平川盗愛「寡黙なのね」
高木誘作「電話でも無愛想だったけど、実物は輪を掛けて無愛想だね」
平川盗愛「わざわざ挨拶に出向いてきたのが不思議なくらいね」
運転手「俺は・・・」
平川盗愛「お! 何か喋り始めたわよ」
高木誘作「蛭間さんの第一声だ。傾聴ものだな」
運転手「俺は、蛭間さんじゃない」
平川盗愛「・・・そんなことくらいわかるわよ」
高木誘作「電話であんなに偉そうだったのに、わざわざ本人が送迎に来るわけないじゃん」
運転手「じゃあ、なんで・・・」
平川盗愛「からかってんのよ」
平川盗愛「散々、好き勝手してくれたお礼にね」
運転手「・・・・・・」
高木誘作「ショック受けてないで、さっさと車出せよ」

〇組織のアジト
運転手「ボス、連れてきやした」
蛭間九傑「ご苦労。もう下がっていいぞ」
運転手「へい」
高木誘作「へぇ、ここが蛭間さんのアジトね」
平川盗愛「テーマパークに来たみたいでテンション上がるわ」
蛭間九傑「本気で言ってるのか?」
平川盗愛「そう見えるの?」
蛭間九傑「・・・いや、見えないから聞いたんだ」
平川盗愛「少しは自分の目を信じなさい」
平川盗愛「これは見える?」
蛭間九傑「ああ、よく見えるとも」
蛭間九傑「渡してくれるな?」
平川盗愛「嫌よ」
高木誘作「今の流れでどうしてそうなるんだ」
蛭間九傑「あんたらに選択肢はないと思うがね」
蛭間九傑「ここに来た時点でな」
高木誘作「へぇ、そりゃ怖い」
平川盗愛「せめて何なのか教えてくれない?」
蛭間九傑「呆れた奴だ。知らずに盗ったのか」
平川盗愛「ええ。それが私のやり方なの」
高木誘作「無鉄砲なんだ」
高木誘作「鉄砲はここにあるけどね」
平川盗愛「親父・・・」
高木誘作「話、続けて」
蛭間九傑「ああ・・・」
蛭間九傑「いいぜ。冥途の土産に──」
平川盗愛「そういうのいいから」
蛭間九傑「あ、はい」
蛭間九傑「いいか。そいつは樋口組に代々伝わる拳銃だ」
蛭間九傑「その昔、他国との密貿易の際に相手国のマフィアからもらった名誉の代物らしく」
蛭間九傑「以降、樋口組の当主となった者が受け継ぐ決まりになってるんだそうだ」
高木誘作「それってつまりさ」
平川盗愛「これそのものにはさして価値がないってこと?」
蛭間九傑「樋口組は大事にしてる」
高木誘作「要するに、それ以外の奴にとっては無価値って事じゃん・・・」
平川盗愛「で、でも、こんなに綺麗に作られてるのよ? 少しくらい値がついてもおかしくないわよね?」
蛭間九傑「実用性のない銃だから売っても一銭にもならないだろうな」
蛭間九傑「というか誰も買い取らない」
蛭間九傑「手にしたら最後、樋口組に目をつけられ地の果てまで追いかけられる」
蛭間九傑「そんな代物、誰も関わりを持とうとすら思わないだろ。少なくとも組織が現役のうちは」
高木誘作「でも、蛭間さんはこれが欲しいんだ」
高木誘作「なんでまた」
蛭間九傑「そういう取引をしたんだ」
高木誘作「なるほど。仲介人を買って出たってことか」
高木誘作「通りで樋口の手のものが追ってこないわけだ」
蛭間九傑「さ、そうとわかったら寄こしてくれ」
蛭間九傑「別にいいだろ? 持ってても仕方のないものだってわかったんだから」
平川盗愛「・・・・・・」
蛭間九傑「もちろん、悪いようにはしないさ」
蛭間九傑「その分の手数料は払ってもらうけどね」
高木誘作「俺達からもとるのか」
蛭間九傑「当然だろ。ただで命の保証を貰えると思うな」
高木誘作「金の匂いのする事件には自ら首を突っ込む」
高木誘作「事件屋、か」
蛭間九傑「その通りだよ、誘拐屋」
高木誘作「それでも、よくヤクザを相手に商売気を出せたね」
蛭間九傑「時代の流れかヤクザの世界も世知辛くてね。大きくことを構えたくないってのが、今の奴らの常識なのさ」
蛭間九傑「もういいだろ? 早いとこ渡してくれ。樋口郷也って男はなかなか短気でね」
蛭間九傑「いつまでも待ってくれるような雰囲気じゃないんだよ」
平川盗愛「・・・嘘くさいわね」
高木誘作「同意だ」
高木誘作「ヤクザって生き物は面子が大事だ。盗まれたものをただ返してもらうだけで許すわけがない」
蛭間九傑「・・・はぁ」
蛭間九傑「黙って応じればいいものを」
  その時、複数もの足音がぞろぞろと聞こえる。
運転手「じゃあ、死んでもらいますから」
高木誘作「大仰に現れて、何を言うかと思ったら」
平川盗愛「随分とセンスのないセリフね」
蛭間九傑「余裕ぶってられるのも今の内だ」
蛭間九傑「ま、せいぜい幸運を祈ってるよ」
平川盗愛「とりあえず逃げるわよ!」

〇地下道
「はぁ・・・はぁ・・・」
高木誘作「巻いたか?」
構成員の一人「待てー!」
高木誘作「うわぁ! まだ追って来る!」
平川盗愛「しつこいわね!」
運転手「こっちに来たと思ったんですが・・・」
運転手「手分けしましょうか」
運転手「あなたはあっちを」
構成員「はい」
運転手「あなたは私と一緒に」
構成員「はい」
高木誘作「どうする? 隠れるにしてもいつか限界が来る」
平川盗愛「応戦でもする?」
高木誘作「冗談」
高木誘作「まともに撃てるのは俺の拳銃だけだ。一丁だけであの数には太刀打ちできない」
平川盗愛「・・・ならやることは一つね」
高木誘作「はぁ・・・」
高木誘作「まぁ、そうだよな」
平川盗愛「とにかくひたすら逃げるわよ」
平川盗愛「それしかない」
  走ること数十分・・・
高木誘作「はぁ・・・はぁ・・・」
高木誘作「どこまで続いてるんだ、この通路」
平川盗愛「はぁ・・・はぁ・・・」

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