『浮気』しないと恋人が死んでしまいます

鉄火キノコ

第12話 最終章 後編 恋が冷めるとき(脚本)

『浮気』しないと恋人が死んでしまいます

鉄火キノコ

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〇病室
鈴鹿カスミ「!?」
鈴鹿カスミ「神崎くん・・・・・・」
神崎太希「もしもし、カスミちゃん!?」
神崎太希「こんな夜遅くにすまねーな」
鈴鹿カスミ「どうしたの!?」
神崎太希「まだ言ってなかったことがあってな」
鈴鹿カスミ「言ってなかったこと・・・・・・!?」
神崎太希「あぁ」
神崎太希「けんゆーが浮気した理由についてだ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「聞きたくない」
神崎太希「あいつが浮気したのは、カスミちゃんのためなんだぜ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「意味わかんない」
神崎太希「とにかく、会って話がしたい」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」

〇公園のベンチ
神崎太希「まさか、こんなとこまで来てくれるとは思わなかったぜ」
神崎太希「よく病院から抜け出せたな」
鈴鹿カスミ「前にも抜け出したことあったからね」
鈴鹿カスミ「警戒はされてたけど楽勝だったよ」
鈴鹿カスミ「また先生に迷惑かけちゃったけどね」
鈴鹿カスミ「帰ったら怒られちゃうよ」
鈴鹿カスミ「で、」
鈴鹿カスミ「電話で言ってたこと、聞かせて」
神崎太希「あぁ」
神崎太希「カスミちゃんの病気」
鈴鹿カスミ「!?」
神崎太希「君の”本当”の病気についてだ」

〇黒
医者「恋(レン)病は、恋愛感情から生じる」
医者「恋愛感情には、本人が自覚すれば、より強まるという性質がある」
医者「そのため、恋(レン)病も、恋愛感情と同じように」
医者「”患者本人が自覚すれば悪化する”」
医者「場合によっては、命に関わるものにもなる」
医者「だからカスミくんには、彼女自身が”恋病”に罹患しているとは”絶対に伝えてはならない”」

〇公園のベンチ
神崎太希(これで、けんゆーへの復讐が完了する)
神崎太希「カスミちゃん、君の本当の病気は」
神崎太希「”恋病”なんだ」
鈴鹿カスミ「!?」

〇総合病院
藤田賢雄「しほさん、来てくれたのか」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「ずっと騙してたのよね」
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「私より先に、あの子と付き合ってたのね」
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「絶対に浮気しないとか」
三雲しほ「約束するとか」
三雲しほ「最初っから、デタラメだったんだよね」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「本当に申し訳なかったと思ってるよ」
三雲しほ「ふざけないで!!」
三雲しほ「なんで今更謝るのよ!!」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「君を、巻き込んで悪かったと思っているからだよ」
三雲しほ「巻き込む!?」
藤田賢雄「彼女の・・・・・・」
藤田賢雄「カスミの病気について話したいことがある」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「彼女は、”恋病”という病気に罹患している」

〇空

〇総合病院
三雲しほ「なによ・・・・・・それ」
三雲しほ「だから、私と浮気したの・・・・・・!?」
三雲しほ「カスミさんのために・・・・・・」
三雲しほ「私を・・・・・・利用したのね」
藤田賢雄「あぁ」
藤田賢雄「俺は、君の好意が欲しかった」
藤田賢雄「カスミを救いたかったから・・・・・・」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「でも、まだ足りないんだ」
三雲しほ「え!?」
藤田賢雄「しほさんの好意が足りなかった」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「だからまだ、カスミの恋病は完治していない」
藤田賢雄「このままじゃ、彼女の命はもたない」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「あいつさぁ、医者になりたいんだ」
藤田賢雄「俺はちょっと前に知ったんだけど」
藤田賢雄「医者になるために」
藤田賢雄「きっと、すごく勉強してきたんだよ」
藤田賢雄「それでさぁ、まだ高校二年生なのに、医学部のA判定取ったんだ」
藤田賢雄「でもこのままじゃ、彼女の夢は叶わない」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「すごく努力したのに」
藤田賢雄「その挑戦すらさせてもらえないなんて」
藤田賢雄「そんなのは、絶対にダメだ。間違ってる」
藤田賢雄「俺は、彼女に夢を叶えてもらいたい」
藤田賢雄「俺は、カスミを諦められない」
藤田賢雄「だから、君を諦めるわけにはいかない」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「最低のクズセリフね・・・・・・」
藤田賢雄「わかってるよ。それくらい」
藤田賢雄「でもさぁ」
藤田賢雄「最低な人間にでも成り下がらないと」
藤田賢雄「救えない人がいるから・・・・・・」
三雲しほ「本当に、カスミさんのこと好きなんだね」
藤田賢雄「あぁ、好きだ」
三雲しほ「・・・・・・そっか」
三雲しほ「私は最初から、あの子に負けてたんだね」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「しほ、君に協力してほしいんだ」
藤田賢雄「俺の浮気相手として・・・・・・」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「恋愛感情のドーピングってやつさ」
藤田賢雄「これが正真正銘」
藤田賢雄「俺の・・・・・・」
藤田賢雄「俳優としての・・・・・・最後の仕事だ!!」
三雲しほ「・・・・・・!?」
  藤田賢雄は、三雲しほの両肩を掴む
  藤田賢雄は三雲しほを離さない
  必ず、ここで彼女をオトすと
  そう覚悟して
  必ず、ここで彼女を惚れさせると
  そう決意して
  たった一度の
  ”くちづけ”を
三雲しほ「・・・・・・!?」
  藤田賢雄は
  ”恋人”のために”恋人”とキスをする
  鈴鹿カスミのために
  三雲しほと
  キスをする
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「ンッ・・・・・・」
  藤田賢雄と三雲しほ
  恋人”役”として最初で最後のキスシーン
  そして二人の偽りの恋は
  クランクアップを迎える
三雲しほ「ハァハァ・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
  これは、一人の男の物語
  恋人のために
  地位も
  名誉も
  将来も
  全てを捨てて
  世間を敵に回し
  世界を敵に回し
  人生をBETする
  一人の男の物語だ

〇総合病院
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「!?」
藤田賢雄「太希・・・・・・」
神崎太希「けんゆー」
神崎太希「カスミちゃん死んじゃうぜ」
藤田賢雄「!?」
藤田賢雄「カスミと一緒なのか!?」
藤田賢雄「今、病院か!?」
神崎太希「いいや、病院の近くの公園だ」
藤田賢雄「・・・・・・なんでそんなとこに」
藤田賢雄「わかった。すぐにそっちに行く」
藤田賢雄「もしかして、あいつ・・・・・・」
三雲しほ「賢雄!?」
藤田賢雄「しほ、協力してほしいことがある」
三雲しほ「・・・・・・」
藤田賢雄「カスミの恋を冷ますために」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「わかった、協力する」
三雲しほ「けれど、条件がある」
藤田賢雄「条件!?」

〇公園のベンチ
???「よぉ、けんゆー」
神崎太希「のんきに水なんて飲んでるヒマあんのか!?」
鈴鹿カスミ「ハァハァ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「けん・・・・・・ゆ」
藤田賢雄「カスミ!!!!」
藤田賢雄「おまえ、まさか・・・・・・」
神崎太希「カスミちゃんに恋病の件言ってやったよ」
藤田賢雄「太希・・・・・・」
神崎太希「まさか、こんなにも効果がでるとはな」
神崎太希「へんな病気だぜ」
神崎太希「さ、けんゆー、恋人との最後の時間」
神崎太希「たっぷり楽しめよ」
鈴鹿カスミ「ハァハァ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「ぅぅぅぅぅぅぅ」
藤田賢雄「クソッ・・・・・・」
藤田賢雄(これじゃ、救急車も間に合わない)
藤田賢雄(きっと、”彼女”も間に合わない)
藤田賢雄「今ここで、なんとかしないと」
鈴鹿カスミ「ハァハァ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「ごめん・・・・・・ね、けんゆ」
鈴鹿カスミ「ぜん・・・・・・ぶ」
鈴鹿カスミ「私のせい・・・・・・だったんだよね」
藤田賢雄「違う・・・・・・」
藤田賢雄「そうじゃない・・・・・・」
藤田賢雄「カスミは、何も悪くない」
藤田賢雄「謝る必要なんてない」
藤田賢雄「君はただ・・・・・・」
藤田賢雄「俺のことを好きでいてくれただけだ」
藤田賢雄「ただ、俺を好きでいてくれただけなんだ」
藤田賢雄「だから」

〇黒
医者「恋(レン)病は、恋愛感情から生じる」
医者「恋愛感情には、本人が自覚すれば、より強まるという性質がある」
医者「そのため、恋(レン)病も、恋愛感情と同じように」
医者「”患者本人が自覚すれば悪化する”」
医者「場合によっては、命に関わるものにもなる」
三雲しほ「わかった、協力する」
三雲しほ「けれど、条件がある」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「最低最悪な人間を演じきりなさい」
三雲しほ「カスミさんの恋を冷ますために」

〇公園のベンチ
藤田賢雄「わかったよ、しほ」
藤田賢雄「その条件飲んでやる」
  恋病は”自覚”によって進行する
  なら、その”自覚”を取り除くことできたら
  少しは時間を稼げるかもしれない
  だったら
  演じきってやるよ
  君を救うためなら
  君の嫌いな人間にだって成り下がる
藤田賢雄「なぁ、カスミ」
藤田賢雄「おまえ、本気で恋病なんて信じてるのか!?」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「ど・・・・・・いう、こと・・・・・・!?」
藤田賢雄「そんなのは、嘘っぱちだ」
藤田賢雄「恋愛感情が病気になるなんて」
藤田賢雄「本気で信じるなんてバカだぜ」
鈴鹿カスミ「え・・・・・・!?」
藤田賢雄「俺はなぁ」
藤田賢雄「ただ、ただ、女優と付き合いたかった」
藤田賢雄「お前を捨ててな」
鈴鹿カスミ「・・・・・・え!?」
藤田賢雄「いい加減目を覚ませよ」
藤田賢雄「俺はお前じゃなく、しほが好きだったんだ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「なんで、そんなヒドいこと」
藤田賢雄「はっきり言ってやるぜ」
藤田賢雄「俺は、お前が”嫌い”だ」
鈴鹿カスミ「そんな」
鈴鹿カスミ「なんでそんなこと言えるの・・・・・・」
藤田賢雄「フフフフフ」
藤田賢雄「アハハハハハハハハ」
鈴鹿カスミ「ヒドい・・・・・・」
鈴鹿カスミ「最低!!!!」
藤田賢雄「いくらでも言えよ」
藤田賢雄「お前に価値なんてない!!」
藤田賢雄「粋がるなよ」
鈴鹿カスミ「ずっと好きだったのに!!!!」
藤田賢雄「俺はお前を好きになったことなんて」
藤田賢雄「一度もなかったよ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・グスン」
三雲しほ「賢雄!!!!」
藤田賢雄「しほ・・・・・・」
三雲しほ「言われたとおり」
三雲しほ「さっき、私の血で作ってもらった薬」
藤田賢雄「あぁ、ありがとう」
藤田賢雄「間に合って良かった」
藤田賢雄「なぁ、カスミ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
藤田賢雄「いい加減、恋から冷めろ」
  藤田賢雄は鈴鹿カスミに肉薄した
鈴鹿カスミ「ン・・・・・・」
藤田賢雄「もう、寝ちまったのか・・・・・・」
藤田賢雄「薬、効いてるといいんだがな」
三雲しほ「効いてるよ」
三雲しほ「絶対に効いてる」
三雲しほ「私が保証する」
藤田賢雄「そっか・・・・・・」
三雲しほ「ねえ、賢雄。あなたは最低な人間なんかじゃないわ」
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ「あなたが恋人のために自分を犠牲にしたこと」
三雲しほ「私は知ってるから」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ありがとう」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「ねぇ、賢雄」
三雲しほ「もし良かったら本気で私と付き合わない!?」
藤田賢雄「!?」
藤田賢雄「なんでそんなこと言えるんだよ」
藤田賢雄「俺は君を騙してたのに」
三雲しほ「騙されてたのはショックだった」
三雲しほ「けどね」
三雲しほ「事情を知れたからこそ」
三雲しほ「あなたのこと、本気で好きになれたの」
三雲しほ「どう!?そのオンナを捨てて」
三雲しほ「私と付き合わない!?」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ごめん」
藤田賢雄「俺はカスミが好きだから」
三雲しほ「・・・・・・」
三雲しほ「はぁ、フラれちゃった」
三雲しほ「まぁでも、分かりきってたことだけどさ」
三雲しほ「じゃ、私帰るね」
藤田賢雄「えぇ」
三雲しほ「その子、ちゃんと病院まで連れていくのよ」
三雲しほ「わかった!?」
藤田賢雄「お、おう」
三雲しほ「あなたとの恋人役、楽しかったわ」
三雲しほ「バイバイ、”藤田”くん」
藤田賢雄「あぁ・・・・・・さようなら、”三雲”さん」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ほんと、また病院から抜け出してさぁ」
藤田賢雄「心配かけさせやがって・・・・・・」
藤田賢雄「さぁ、帰るぞ」

〇線路沿いの道
神崎太希「よぉ、しほ」
三雲しほ「・・・・・・太希」
神崎太希「けんゆーのこと、災難だったな」
三雲しほ「・・・・・・」
神崎太希「なぁ、俺たちやり直せないか?」
三雲しほ「はぁ!?」
三雲しほ「うっせーよ、カス」
三雲しほ「誰があんたなんかと付き合うか」
神崎太希「は!?」
神崎太希「てめー・・・・・・」
  神崎太希は三雲しほに肉薄する
三雲しほ「うっ・・・・・・」
三雲悠生「おい!!」
神崎太希「ッ・・・・・・」
神崎太希「誰だよあんた」
三雲悠生「よくも僕のカワイイ妹を傷つけてくれたな」
神崎太希「チッ・・・・・・」
三雲しほ「太希、あんたとは今度こそ縁を切る」
三雲しほ「もう顔を見せないで」
神崎太希「・・・・・・」
神崎太希「クソ・・・・・・」
三雲悠生「ケガはないか!?」
三雲しほ「うん!!ありがとう、おにーちゃん」
三雲悠生「なぁ、しほ」
三雲悠生「あのさぁ・・・・・・」
三雲悠生「タバコ・・・・・・」
三雲しほ「!?」
三雲しほ「知ってたんだね、おにーちゃん」
三雲悠生「・・・・・・」
三雲しほ「私、これから再スタートするよ」
三雲悠生「しほ・・・・・・」
三雲しほ「許されることじゃないのは分かってるけど」
三雲しほ「もう一回頑張りたい」
三雲悠生「そっか・・・・・・」
三雲しほ「うん!!」

〇病室
藤田賢雄「さっきはあんなこと言っちゃって」
藤田賢雄「傷つけて、ごめんな」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「俺が好きなのは、お前だけだからな」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「カスミ、絶対医者になれよ」
藤田賢雄「そんで、たくさんの人を救うんだ」
藤田賢雄「そうやって、たくさんの人の夢とか希望を守ってやってくれ」
藤田賢雄「君なら、絶対にできる」
藤田賢雄「俺は信じてるから」
藤田賢雄「・・・・・・あとは、そうだな」
藤田賢雄「新しい彼氏、見つけろよ」
藤田賢雄「もしかしたら」
藤田賢雄「恋病の件で、もう恋愛なんてやりたくないかもしれないけど」
藤田賢雄「それじゃ、ダメだ」
藤田賢雄「きっと・・・・・・」
藤田賢雄「俺なんかより素敵な男性が見つかるよ」
藤田賢雄「君は、幸せになってくれ」
藤田賢雄「さようなら、カスミ」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「大好きだよ、カスミ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」

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