最終回 第13話 恋は君を救う(脚本)
〇シックなカフェ
藤田賢雄「ホットコーヒーがおひとつですね」
藤田賢雄「かしこまりました」
藤田賢雄「少々お待ちください」
男「・・・・・・」
男「・・・・・・」
俺は藤田賢雄。
高校生のころは役者の仕事をしていた
とても充実した日々だった
でも、俺はそれを投げ捨てた
大切な人を救うために
だから、後悔はしていない
そして
その大切な人とはもう何年も会っていない
俺は、その人と縁を切りたかった
いや、切らざるをえなかった
俺はそのために
高校を中退した
後悔はしていない
それが最善の選択だと
今でも思っている
そう、俺は
”浮気”したことを後悔なんてしていない
〇シックなカフェ
遠野みゆき「藤田くん、今日もお疲れ」
藤田賢雄「お疲れ様です」
遠野みゆき「・・・・・・」
遠野みゆき「もし、君がよければ、ウチで正社員として働かないか!?」
藤田賢雄「え!?」
藤田賢雄「いいんですか!?」
遠野みゆき「もちろんだ」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「でも俺・・・・・・」
遠野みゆき「いつまで気に病んでるつもりだ!?」
遠野みゆき「君が過去に何をしたのか」
遠野みゆき「私だって知らずに雇ったわけではない」
藤田賢雄「・・・・・・」
遠野みゆき「でもね」
遠野みゆき「それが君の全てではないだろう」
遠野みゆき「君はよく頑張っている」
遠野みゆき「私はそれをかってるんだ」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ありがとう・・・・・・ございます」
”あれ以来”人前に出ることに億劫になった
でも、変わらないといけないと思った
だから、このバイトを始めた
それが、報われた気がした
藤田賢雄「あの・・・・・・」
遠野みゆき「なんだ!?」
藤田賢雄「なんで俺”なんか”のこと」
藤田賢雄「雇ってくれたんですか!?」
遠野みゆき「単純に、今の君ならしっかりと働いてくれると思ったからだよ」
遠野みゆき「他意は無い」
遠野みゆき「じゃあ、気をつけて」
藤田賢雄「・・・・・・ありがとうございます!!」
〇公園のベンチ
藤田賢雄「!?」
男「よぉ」
男「藤田賢雄」
藤田賢雄「!?」
男「探したぜ」
男「よくも、俺の三雲しほに」
男「手を出してくれたな」
藤田賢雄「・・・・・・」
三雲しほ
何年ぶりにその名を聞いただろうか
藤田賢雄「あなた、誰ですか!?」
藤田賢雄「え!?」
藤田賢雄「うぅ・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
〇病室
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ここって」
藤田賢雄「・・・・・・」
記憶が湯水のように湧き上がってくる
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・そうか」
藤田賢雄「俺・・・・・・」
藤田賢雄「襲われて・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
???「藤田さん、失礼します」
看護師「ふ、藤田さん!?」
藤田賢雄「こ、こんにちは」
看護師「お目覚めになられたんですね・・・・・・」
看護師「安心しました」
藤田賢雄「あぁ、ありがとうございます」
看護師「すぐに、先生をお呼びしますね」
藤田賢雄「はい・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄はテレビを確認する
藤田賢雄「俺、二日も寝込んでたのか・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
???「藤田さん、失礼します」
藤田賢雄「はい、どうぞ」
医者が来たようだ
鈴鹿カスミ「こんにちは」
鈴鹿カスミ「目を覚まされたようで」
鈴鹿カスミ「よかったです」
藤田賢雄「か、カスミ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「久しぶりだね。賢雄」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「カスミ、もしかして」
鈴鹿カスミ「はい。どうもお医者さんになりました」
藤田賢雄「そっか・・・・・・」
藤田賢雄「よかった」
藤田賢雄「本当によかった」
藤田賢雄「おめでとう。カスミ」
鈴鹿カスミ「ありがとう」
鈴鹿カスミ「賢雄の方こそ」
鈴鹿カスミ「体、イタいとこ・・・・・・ない??」
藤田賢雄「大丈夫」
鈴鹿カスミ「なら、よかった」
鈴鹿カスミ「これから、また検査とかしてくからね」
藤田賢雄「おう」
鈴鹿カスミ「じゃ、安静にね」
〇病室
目覚めてから数日がたった
???「失礼します」
藤田賢雄「どうぞ」
刑事「どうも、藤田賢雄さんですね」
藤田賢雄「はい」
刑事「お目覚めになられて、よかったです」
刑事「私、こういうものです」
藤田賢雄「警察・・・・・・」
刑事「はい」
刑事「先日の事件について」
刑事「わかったことだけでも、少しお話します」
刑事「動機としては、ファンだった女優が藤田さんとお付き合いしていたということ」
刑事「だそうです」
藤田賢雄「そう・・・・・・ですか」
刑事「大変、でしたね」
刑事「なにより、ご無事でよかったです」
藤田賢雄「ありがとうございます」
刑事「ではまた」
〇学園内のベンチ
病院の中庭
藤田賢雄「リハビリも兼ねて、少し散歩するか」
藤田賢雄「・・・・・・」
患者「こんにちは、鈴鹿先生」
鈴鹿カスミ「あぁ、こんにちは」
患者「あの・・・・・・鈴鹿先生」
鈴鹿カスミ「はい?」
患者「もしよかったら、僕と付き合ってください!!」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「すみません。私”お付き合いしてる方”がいるので」
患者「そうですか・・・・・・し、失礼します」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄(付き合ってる人・・・・・・か)
藤田賢雄「そう・・・・・・だよな」
藤田賢雄「でも、幸せそうで良かった」
〇病院の診察室
鈴鹿カスミ「はい、検査はこれで終わりになります」
鈴鹿カスミ「何か心配なことはありますか?」
藤田賢雄「いえ、特には・・・・・・」
鈴鹿カスミ「わかりました」
鈴鹿カスミ「幸い、腹部の傷も命に別状ありませんでしたので」
鈴鹿カスミ「ご安心ください」
鈴鹿カスミ「では、退院の準備に入りましょうか」
藤田賢雄「もう、退院?」
鈴鹿カスミ「えぇ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「藤田さん。・・・・・・いえ」
鈴鹿カスミ「賢雄」
鈴鹿カスミ「今度、あいてる日とか、ある?」
藤田賢雄「・・・・・・!?」
〇線路沿いの道
本当は、彼女には顔さえ合わせたくない
でも、命を救ってもらったのだから
応対するべきだと思った
藤田賢雄「すみません、お待たせしました」
鈴鹿カスミ「もーー!!」
鈴鹿カスミ「待たせすぎだよ!!」
藤田賢雄「すみません」
鈴鹿カスミ「敬語禁止!!」
藤田賢雄「えぇ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「ほら、いくよ」
藤田賢雄「いくって・・・・・・どこに!?」
鈴鹿カスミ「決まってるでしょ」
藤田賢雄「!?」
〇遊園地の広場
藤田賢雄「ここって・・・・・・」
鈴鹿カスミ「そう、遊園地!!」
鈴鹿カスミ「来るって”約束”してたでしょ!?」
藤田賢雄「え・・・・・・」
〇公園のベンチ
藤田賢雄「遊園地連れてってやるから」
藤田賢雄「機嫌直せよ」
鈴鹿カスミ「ホント!?」
藤田賢雄「あぁ、病気が治ったらな」
鈴鹿カスミ「もーー!!!!」
鈴鹿カスミ「意地悪」
藤田賢雄「アハハハハハハハハ」
〇遊園地の広場
藤田賢雄「・・・・・・よく、覚えてたな」
鈴鹿カスミ「まぁね」
藤田賢雄「でも、いいのか!?」
鈴鹿カスミ「何が!?」
藤田賢雄「付き合ってる人、いるんだろ!?」
鈴鹿カスミ「うん」
藤田賢雄「だったらさ・・・・・・」
鈴鹿カスミ「だったら、問題ないよね」
藤田賢雄「え!?」
鈴鹿カスミ「私の恋人は賢雄だから」
藤田賢雄「はぁ!?」
鈴鹿カスミ「私たち、別れてないよ」
藤田賢雄「いや・・・・・・あんなことがあったんだぞ」
鈴鹿カスミ「でも、別れてはない」
藤田賢雄「・・・・・・マジかよ」
鈴鹿カスミ「もしかして賢雄」
鈴鹿カスミ「また別のオンナと”浮気”してないでしょうね」
藤田賢雄「す、するわけないだろ」
鈴鹿カスミ「・・・・・・なら、よかった」
鈴鹿カスミ「信じるよ」
藤田賢雄「な、なんでだよ」
藤田賢雄「俺は、お前を裏切ったんだぞ」
鈴鹿カスミ「でも」
鈴鹿カスミ「私のために浮気したんでしょ!?」
藤田賢雄「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「ごめんね。辛い思いさせて」
鈴鹿カスミ「もう、全部知ってるよ」
鈴鹿カスミ「賢雄があんなことした理由」
藤田賢雄「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「今回の事件も、きっと原因は私」
鈴鹿カスミ「本当に、ごめんね」
藤田賢雄「謝る必要なんてない」
鈴鹿カスミ「でも」
鈴鹿カスミ「賢雄のおかげで、私は今生きている」
藤田賢雄「・・・・・・」
鈴鹿カスミ「私の命、救ってくれてありがとう」
その言葉で救われたのは、俺のほうだった
〇遊園地の広場
遊園地で一通り遊んだ後
鈴鹿カスミ「楽しかったね!!」
藤田賢雄「あぁ、そうだな」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「カスミ」
藤田賢雄「やっぱり俺たち・・・・・・別れよう」
鈴鹿カスミ「・・・・・・」
藤田賢雄「あんなことがあったからさぁ」
藤田賢雄「俺たちは一緒にいないほうがいい」
藤田賢雄「また同じようなことが・・・・・・」
鈴鹿カスミ「そう・・・・・・かもしれないね」
鈴鹿カスミ「でも」
鈴鹿カスミ「賢雄には私と一緒にいてもらわないと困る」
鈴鹿カスミ「私、賢雄の浮気、まだ怒ってるんだ」
藤田賢雄「えぇ・・・・・・」
藤田賢雄「でもあれは、君のために」
鈴鹿カスミ「だから」
鈴鹿カスミ「私のきげんを治して」
鈴鹿カスミ「一生かけて」
鈴鹿カスミ「別れるっていう選択肢はありません」
鈴鹿カスミ「わかった!?」
藤田賢雄「・・・・・・強引なやつだな。おまえは」
藤田賢雄「そうだよな」
藤田賢雄「わかったよ」
藤田賢雄「・・・・・・」
藤田賢雄「ずっと、いっしょにいてくれ。カスミ」
鈴鹿カスミ「うん!!」
カスミが医者になって登場したときジーンときました。カスミちゃん良かったね…!
時が経って環境も性格もだんだん変わって行く中で、変わらないカスミちゃんの明るさが素敵でした。一般人に戻った賢雄くんに幸せがたくさん訪れますように願います。
とても良い最終回でした。お疲れ様でした!