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あとりポロ

エピソード12『世の中のキレイゴト』(脚本)

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〇村の眺望
  【2034年、イバラキ。『言霊 みれい』】
  ──あの日交わした約束をアナタは覚えているだろうか。
  陽が落ちようとする中、私たちの農場に彼が現れた。
  
  彼は以前の『創』と、どこか違っていたように思う。
  もしかしたら彼も、・・・・・・弄られていたのかもしれない。
グリーン・ブラザー「迎えにきたよ。・・・ボクと一緒に帰ろう」
  落ち行く陽を背に、彼は高い影と腕を伸ばした。
  その隣に『甲冑を着た男』を連れ、ゆっくりと私たちへ歩を詰める。
グリーン・ブラザー「ボクたちが居てイイ場所は、ここじゃないんだ」
グリーン・ブラザー「ボクたちに用意された世界。そこへ一緒に行こうよ」
  『創』の虚ろな眼差しが私たちを観ている。
  
  けれど、私たちの答えは決まっていた。
みれい「私たちは、一緒に行けない」
みれい「私たちが、私たちの手で『奈久留《なくる》』の仇を取らないと! そうでしょ? 『創』!」
グリーン・ブラザー「いいじゃないか? 『奈久留』なんて」
  その手は震えていた。
  薬害の患者のように、ぴりぴりと肌を震わせる。
  
  そして全てを嫌がるように、その口を捲し立てた。
グリーン・ブラザー「いいじゃないか、もう。 いいじゃないか。もういいじゃないか!!」
グリーン・ブラザー「・・・『緋色』、キミか? 『みれいたち』をたぶらかしたのは?」
  『緋色』は否定しなかった。ただ真直ぐに『創』を見ている。
グリーン・ブラザー「その子は?」
  『タタミ』の腕に抱かれた赤子へ『創』が声を掛ける。
  
  『タタミ』が優しい眼差しで自身の『リーダー』へ話した。
タタミ「この子はわたしの子なの。『みれい』に造ってもらった、わたしのクローン」
グリーン・ブラザー「そうか、『みれい』が。 なら、ならもう・・・」
グリーン・ブラザー「・・・・・・ボクなんて要らないじゃないか!」
  『緋色』の襟首をつかみ何度も揺する。
グリーン・ブラザー「『緋色』! お前のせいだな? 全部、全部お前のせいだ! そうだろ? 違うなら否定してみろよ!」
  そして、控えさせていた『甲冑の男』を自身の前へと送り出した。
グリーン・ブラザー「ヤレ! 『人魔《じんま》』」
  一瞬で『緋色』が跳んだ。殴り飛ばされた『緋色』が地面を転がされる。駆け付けようとしたのに、足が、足が全然動いてくれない。
タタミ「先生!」
タタミ「先生! 先生っ! 『緋色さん』!」
グリーン・ブラザー「解るだろ? 『緋色』。この世界では『チカラ』が全てなんだよ。 チカラのない正義なんて、ただの『キレイゴト』でしかない」
グリーン・ブラザー「お前らが何に立ち向かうのか知らないが、お前たちのやってる事なんて、所詮《しょせん》『おままごと』でしかないんだ」
グリーン・ブラザー「こいつは、父『ブラック・ダド』のクローン。 あの『ジョーカー』が二十代の肉体と、無くした右腕を手に入れたも同然なんだ」
グリーン・ブラザー「こいつが最強なのは、『緋色《おまえ》』に負けないのは当然なんだよ!」
  『ブラック・ダド』。それはこの世界の支配者たるモノの名称だった。
  
  地球の大半を自身の家族のモノとしている。
グリーン・ブラザー「あとこいつに『確かな知性』と『豊かな経験』を与えればこいつは本当に父さんを超える! その為にも、」
グリーン・ブラザー「『みれい』! 『タタミ』! お前たちの協力が必要なんだ! ボクの元へ来い! みんな!!」
グリーン・ブラザー「・・・『タマ』?」
タマ「クゥゥ。クゥ」
グリーン・ブラザー「ボクが間違っているって、そう言うのか? キミは?」
グリーン・ブラザー「『タマ』、キミも行こうよ! ボクたちの家へ。とても温かいんだ。美味しい料理と温かな寝床がある! おいでよ『タマ』!」
タマ「・・・・・・」
グリーン・ブラザー「・・・『タマ』が引け、と言うなら、今回だけは帰るさ。ただ一言だけいっておくぞ、『緋色』」
グリーン・ブラザー「『クローン』に勝てないキミが、『オリジナル』に勝てるのかい?」
グリーン・ブラザー「あいつに、『歯車フォーチュン』に、 ・・・キミなんかが勝てるのかい?」
  『創』が緑色の裾をひるがえす。その背に『人魔』という最強の戦士を従えて。
グリーン・ブラザー「さよならだ。・・・・・・親友」
  そう言って『創』は去って行った。跡に残ったのは私たち弱者と、倒れたまま動かない
  
  私たちの『ヒーロー』だった。
  𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

次のエピソード:エピソード13『星の名を数えましょう』

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