世界樹世界の魔女と龍

小潟 健 (こがた けん)

5 テルトラット砦にて(脚本)

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〇城壁
  表5層外縁──フラール島 テルトラット砦
  侵食者(ドーカ)の襲撃を受けて4日目の夕暮れを迎えたこの砦では、いまだ激しい攻防が繰り広げられていた
イスランド兵3「はやくぅ!」
イスランド兵3「死ねよぉっ!!」
イスランド兵3「ビチ○ソどもがああっ!!!!」
イスランド兵3「オラアアアアアアアアッ!!!!」
シャーキン将軍「よし、矢を撃ちきったなら下がれ、殴るのは弓兵の仕事じゃないぞ!」
イスランド兵3「了解しましたああぁぁぁっ!!」
イスランド兵3「すぐに戻るぞ、死んで待っていろビ○グソどもがッ!!」
シャーキン将軍「・・・・・・」
シャーキン将軍「たのもしいったらありゃしないぜ・・・」
シャーキン将軍「よし、魔法隊、印2に『巻風』だ! 詠唱合わせろ! ・・・3、2、1、始めッ!!」
  砦の指揮官、シャーキン将軍の号令に合わせて魔法使い部隊が魔法の詠唱を始める
  集合魔法の為に合わせた詠唱は、ともすれば朗々とした合唱の様で美しくすらある
シャーキン将軍「・・・放てえッ!!」
  ギャギャギャギャギャッッ!!!!
  美しき合唱はその終わりとともに戦場で殺戮の絶叫と化す
  巻風は小さな竜巻をおこす魔法であり、集合魔法として放たれたそれらは砦の前にズラリと隙間無く並ぶ
  その魔法の風で形作られた竜巻は、無闇に進もうとする愚か者を切り刻む殺戮の壁となっていた
  長くは20分も機能する頼もしき風の壁ではあるが、砦の壁に損害を与えない位置に展開するにあたり──
  ──討ち漏らしたいくらかのドーカがその内側に居る

〇海岸の岩場
  ドーカ(侵食者)──
  世界の何処からか産まれ出る、不浄なる粘体が在る
  その多くは清らかな日の光に当てられると、自然と浄化され誰にも知られず消えてゆくのだが──
  まれに、腐り落ちた果実や死した獣の腐肉等の栄養に触れるモノがあると──
  大きく増え、陽光を意に介さなくなり──
  やがては、まるで意思を持つ様に動き回り──
  生命を持つ者を飲み込む
  そして肥大化した彼からは、いつしか子が分かたれ増え、それを幾度も、飽く事無く繰り返し、おぞましき軍勢となる
  生命と、世界そのものを飲み込まんと、あらゆる者に襲いかかるのだ

〇城壁
シャーキン将軍「城門開放用意!」
シャーキン将軍「巻風の内側、ドーカ34体!」
シャーキン将軍「魔法使い部隊は下がり回復につとめろ!」
シャーキン将軍「弓隊、前へ!」
イスランド兵3「おっしゃあっ!!」
イスランド兵3「さぁ、ビチグ○ども、ちゃんと死んで待ってたかぁ?」
イスランド兵3「・・・ナニ元気に歩いているんだよ・・・」
シャーキン将軍「弓隊構えろ!」
シャーキン将軍「射撃開始30秒後に城門より近接攻撃部隊を出撃させる、味方を撃つなよ!」
シャーキン将軍「・・・・・・よし! 30秒撃ちまくれ!!」
イスランド兵3「こんのおぉっ!!」
イスランド兵3「○チグソ!」
イスランド兵3「ビ○グソ!!」
イスランド兵3「ビッ○グソお!!!」
イスランド兵3「ビチグ○どもが死ねよやああぁぁぁぁっ!!!!!!」
シャーキン将軍「撃ち方止めーいっ!!」
シャーキン将軍「開門ーーっ!!」
シャーキン将軍「歩兵隊前進ッ!!!」
シャーキン将軍「一対一にはなるなよ! 槍の間合いを目一杯使え!!」
シャーキン将軍「弓隊、万一は援護射撃だ! 気を切らすなよ!」
イスランド兵3「おおおおうッ!!」

〇海岸の岩場
幼体ドーカ「プシッ!?」
幼体ドーカ「キプッ!?」
イスランド兵4「とおぉ!」
イスランド兵4「つうぅ!!」
イスランド兵4「げえぇ!!!」
イスランド兵4「きいいいいぃぃっ!!!!」
「おおおおおおおおぉっっ!!!!!!」
  開け放たれた門から飛び出たイスランド兵達は弓隊の射撃にドーカ達が怯んだと見るやいなや──
  矢を追い越さんばかりの勢いでドーカへと突進する
  矢の到達にほんの僅かだけ遅れて、歩兵達の構える槍がドーカ達に深々と突き刺さった

〇城壁
シャーキン将軍「巻風内のドーカは・・・これで片付いた様だな」
シャーキン将軍「巻風はあと何分保つ?」
魔法使い1「外側からの圧力が大きく、5分が限界ですな」
シャーキン将軍「短いが仕方無いか・・・」
シャーキン将軍「歩兵隊はこれより3分間、巻風内で矢の回収にあたれ!」
シャーキン将軍「・・・城内の矢の残りはどれくらいだ?」
イスランド兵3「・・・開戦時の1割程度です」
シャーキン将軍「・・・そうか」
シャーキン将軍「・・・腐るほどあると、皮肉っていたもんなんだがな」
シャーキン将軍「魔力回復薬の残りは?」
魔法使い1「伝書の魔法1回を回復する分だけですな」
魔法使い1「そして巻風程度の魔力を自然回復するには、まぁ、2〜3時間はかかりますな」
魔法使い1「なのであとは巻風より効果の薄い魔法を小出しに使う他無いですな」
イスランド兵3「それではまた、あの薄汚い○チグソどもに城壁に取り付かれてしまいますね」
シャーキン将軍「その1回までが城壁の限界だろうな」
シャーキン将軍「何か、何か手を打たねばならんのだがな・・・」
魔法使い1「・・・そろそろ3分になりますぞ」
シャーキン将軍「早いなぁ・・・」
シャーキン将軍「歩兵隊、3分だ! 撤退せよ!!」

〇海岸の岩場
  シャーキン将軍の号令により、矢を回収していた歩兵隊が門の中へ戻る
  全ての歩兵達が撤退し門が閉じられた直後、巻風の魔法が勢いを失い消えてゆく
  そして巻き上げられた砂塵も落ちぬ間に、ドーカが前進してくる
  よくよく見てみれば、先頭のドーカはズタズタの傷だらけに切り刻まれている
  おそらくは巻風の中へ侵入しようと、無謀な前進を試みたのだろう
  その報いを彼は十分に受けた様だ

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コメント

  • イスランド兵3さんに名前が欲しいくらい印象的でした😂ファンタジーの世界観、やはり作り込んでいますね

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