エピソード11『ネーム・ポーカー』(脚本)
〇古民家の蔵
【2034年、イバラキ。『楽々』】
楽々「『楽々ちゃん』! すっごいおもしろいゲーム拾ってきたよん♪」
『みれい』のPCから印刷した記事を皆の所へ持っていく。『みれい』と『コージ』が、すかさずこの腕の中を覗き込んだ。
タタミ「・・・あ~、それうちが開発したゲーム・・・」
私が発見したゲームを事も無く自分のゲームと言い放ったのは、藁の枕を抱え、よたよたとやって来た『タタミ』。
タタミ「何処かの社長の発案で作った『トークゲーム』。今の日本にはこういうのがステキじゃないか? って考えだされたゲーム、らしい」
ほぉ。と、寝巻き用シャツ・ズボンのまま顎を撫でる『緋色隊長』。ちなみに今は昼の12時を過ぎて陽は空高くにある。
朝早くから畑の水撒きをしていた『緋色隊長&タタミ』は仲良くおネムだったのだ。
そして悔しいがネットの情報を元にするなら『タタミ』の言うそれは本当らしい。悔しいがプリントアウトしたものを皆へ差し出す。
「おぉ」「ミャー!」と、幾つかの声が上がった。『楽々ちゃん』ちょっと、ちょっとだけ鼻が高い。
【『ネーム・ポーカー』ルール】
プレイヤーはそれぞれ『密接に関わった生き物』の名を『5つ書き』その名が意味する『数字』と『スート』を参照して勝負する
『剣』・スペード
『心』『命』・ハート
『宝石』・ダイヤ
『壱』・A
『銃』・10、など。
連想できない名はカスとする。
『同一個体の生き物の名』があった場合、それらを『どちらかの持つ数字と同じ数字、スート』として用いることが出来る。
また、『名の札』とは別に『密接に関わった生き物』の名を提示し、そこから連想されるワードと、
『ペア』『カード』『ストレート』『フラッシュ』の名称を組み合わせ『役名』とする。
ただし『対戦者の名前』は使用できない。
緋色「・・・・・・なるほど、面白そうだな」
楽々「そいでね。うちのメンバーで作ったらどんな手が最強かな? って、あたし考えちゃってさ!」
緋色「まぁ普通に考えて、 『市原 創』【A】 『市原 祈』【A】 を使うんじゃないか?」
楽々「『楽々ちゃん』も考えたの! 『言霊 みれい』の【3】 『みぃちゃん』の【3】 そして我らが切り札『ジョーカー』ってのは!」
楽々「これで総隊長姉弟と合わせて『フルハウス』の手が見えたさ!」
だがしかし『みれい副隊長』が首を傾げる。ぽりぽり、その長い髪をくるくると指で巻いていく。悪しき『タタミ』も開眼なすった。
タタミ「その『み』はグレーゾーン。わたしが対戦者なら認めない。『みぃちゃん』なら、かろうじて認めていいけど・・・」
タタミ「・・・・・・ただね。『タタミ&真衣』と『ジョーカー』なら、本当に『フルハウス』の役が見えるかも」
緋色「いや、待て。 『フルハウス』の名称、何処から引っ張るんだ?」
「あっ!」
兎にも角にも、考えさせられるゲームだった。
『楽々ちゃん』はこのゲームを作った人を心から尊敬しようと思ったのさ。
〇豪華な部屋
【2034年、アラスカ『ホーム』。『グリーン・ブラザー』】
ブラック・ダド「いやー、なかなか上手くいかないものだね。ゲームというものは、」
父『ブラック・ダド』が、新聞を片手に悩んでいる。時折手に取るコーヒーははた目にも分かるくらいその中身を目減りさせていた。
レッド・ボーイ「おい『ブラザー』!」
リビングで寛いでいたボクへ『ブラック・ダド』の子、『レッド・ボーイ』が声をかけた。
レッド・ボーイ「俺の『PZPエターナル』やらないか? 最近のFPSは全部突っ込んであるんだ。最高にいいぜ、こいつは♪」
ピンク・ガール「えぇ~、そんなの何処がいいの~? 『ガール』ゲームはよく分かんないんだよね~」
優雅に、とは言い難い姿で『ブラック・ダド』の子、『ピンク・ガール』がソファに横たわっている。
レッド・ボーイ「こいつ最新のVR積んでるから、こうPZPを振り回すと、まぁ『ガール』もやってみろよ!」
ピンク・ガール「うわ、ぞ、ゾンビがこっちから! 後ろからも! ちょ、ちょっと! これむっちゃ怖いやつ!」
お茶を啜っていたボクの肩に腕を回して『レッド・ボーイ』が歯の白を晒した。
レッド・ボーイ「安心してくれ。これからは違う。大丈夫なんだよ『ブラザー』!」
レッド・ボーイ「これからはオマエの『ダド《父さん》』が何でも買ってくれるさ! な! 『ダド』!」
大はしゃぎでゲームを手にソファを、果ては床までも転がる『ガール』を『ダド』が納得のいかない顔で見ている。
ブラック・ダド「私は、そういう酔うようなモノはあまり好かないのだが、・・・今の子供たちはこういうものが好きなのかね?」
「理解しがたいね」と、ため息を吐いて先ほどの新聞を手にしている。
グリーン・ブラザー「父さんはさっきから何を悩んでるの?」
ブラック・ダド「『ブラザー』キミは良い子だ! よくぞ聞いてくれた!」
捨てた新聞を拾い直しその記事の一部を指の背で叩いてみせる。
ブラック・ダド「先日私が考えてみたゲームなんだが、あまりにも、なんだ、評判が良くなくてな」
グリーン・ブラザー「えっと、・・・・・・『ネーム・ポーカー』?」
ブラック・ダド「そうだ。 今の子供たちは裕福でモノに溢れている。 そんなんじゃダメだ。もっとこう、紙やペンで頭を使うゲームがいい」
グリーン・ブラザー「知育ゲームってとこ?」
ブラック・ダド「そうだ。話が分かってくれて嬉しい。 それよりこのVRなんてものの何処がいいんだい? 私にはよく分からないね」
レッド・ボーイ「『ブラザー』、おっさんは放っておいてこのゲームやろうぜ! 全視点に銃を乱射しまくれて、もう最高なんだよ!」
ピンク・ガール「『ボーイ』! ちょっとあたしにもやらせなさいよっ!」
この空間、その全てがボクにとって最高だった。ボクが望んだ『家族の姿』が、ここには在った。
グリーン・ブラザー「父さん、父さんがさっき話してたゲーム、ボクなりに最強の役を考えてみたよ」
まぁ、どんな札を使っても『66億の家族』を持つボクらに勝るモノは無いだろうけど、ぱっと思いつく最良の役を提示する。
ブラック・ダド「・・・・・・ほぉ。で、どんな札だい」
グリーン・ブラザー「まずは、 先日殺った『ソード・ワン』こいつはそのまま使えるだろ?」
ブラック・ダド「『スペードのA』だね。私たちが直々に仕留めたのだから、『密接な関係』となるね」
グリーン・ブラザー「そして当然『ジョーカー』、父さんも手に加える」
ブラック・ダド「もちろん、そうなるな」
『ダド』の子、『パープル・マム』がスイムから帰ってきた。歩み手に取ったタオルで、その長い髪を乾かしている。
どうにも気になった。いつも仲の良い『ホーム・ホルダー』において、彼女だけはその一線を越えようとしない、ように見えたから。
ボクを視ている父の目に気づき、先ほどの続きを話す。
グリーン・ブラザー「そしてこのゲームにも、当然彼が『使える』わけだよ」
ブラック・ダド「完成したのかい? 彼が」
グリーン・ブラザー「まぁね」
『ホーム・ホルダー』の本拠地たるこのアラスカの施設の奥へ、顎をしゃくって示してみせる。
グリーン・ブラザー「最強の生命体にして最強のヒューマン 『化喰《ばくら》 人魔《じんま》』が、さっき出来上がったんだ」
グリーン・ブラザー「まさに最強、そう謳われて当然の生命体、・・・がね」
そう、それこそが支配者の為の最高傑作、ボクが作った最強の・・・
『化け物』だったんだ。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
このゲーム欲しい(ㆁωㆁ)🌿そう思っていたら他の登場人物に波及して行く展開!お見事です(≧▽≦)☘️