英雄王ライゼル

えたーなる

英雄王と竜と魔王軍(脚本)

英雄王ライゼル

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英雄王ライゼル
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〇岩山の崖
ライゼル「もはや、一刻の猶予もない」
ライゼル「魔王率いる魔族の軍勢を止める程の力は」
ライゼル「この国にはないだろう‥」
ライゼル「無慈悲なまでの虐殺と、ありとあらゆる全てを蹂躙し飲み込み、そして滅びゆく‥」
ライゼル「古き友よ‥。もう私の声は届かないのか‥」
ライゼル「魔に支配され、人の心も消えてしまったか‥」
グルル「グルルゥゥゥ」
ライゼル「慰めてくれるとは優しいな」
ライゼル「だが、その必要はない。お前ともお別れをする時間だ‥」
ライゼル「・・・今までよく私についてきてくれた、感謝する」
ライゼル「お前までここで、私と最後を共にする必要はない」
グルル「断る」
ライゼル「!?」
ライゼル「お前‥言葉を‥」
グルル「随分前から人語(じんご)は話せた」
ライゼル「まさか初めて聞いた言葉が『断る』、だとは‥」
ライゼル「嬉しさも感動もないな」
グルル「無駄口たたく時間など無いはずだ、友よ」
ライゼル「残念だ。華々しく最後を飾ろうと思ったのだか‥」
グルル「早く乗れ、『英雄王ライゼル』」
ライゼル「その名で呼ぶな、昔の話だ」
グルル「我にはついこの間に感じるが」
ライゼル「長命の竜族と一緒にするな『グルル』よ」
グルル「その名で呼ぶなっ!!威厳の欠片もない」
グルル「我には真の名があるのだ、竜王ルディア‥」
ライゼル「・・・生きていたら‥呼んでやろう」
ライゼル「・・・」
ライゼル「後悔はないか? 友よ‥」
グルル「いこう‥」
ライゼル「──」
ライゼル「我が名はライゼル!!!!!!」
ライゼル「この老いぼれを侮るなかれ魔族共!!」
ライゼル「我が血肉尽き果てるその時まで!!貴様らを道連れにしてくれようぞ!!!!!!」

〇荒地
  ライゼルとグルルは魔族の軍勢の前に降り立ち、壮絶な戦いを繰り広げる。
グルル「ライゼル‥お前は知らない‥」
グルル「我は見ていた‥」
グルル「お前がこの世界に生を受けた日から‥」
グルル「ある者は言う‥人間は胃袋を満たす為の餌だと」
グルル「ある者は蔑む‥人間は世界の害悪だと‥」
グルル「・・・我は‥」
  些細な興味に誘われ、戯れ程度に人間の世界を覗いた‥。
  そんなある日、お前と出会った‥
  この世に生を受けたばかりのお前は、まだ何も知らない弱気存在であった
  だが‥
  ライゼル‥お前は覚えていないだろう‥
  あの日、お前も我を見ていたことを‥
  ふと、瞳を開き、真っ直ぐ、遥か遠くの我を見つめ‥
  そして、笑った‥
  不可解だった‥わからなかった、理解できなかった‥
  我の内に芽生えた疑問の答えがしりたかった‥
  ・・・だから・・・
  お前に会いにいった‥
グルル「・・・答えは見つかった」
グルル「共に過ごした日々でな‥」
グルル「ただ‥」
グルル「それでもまだ共にいるのは、そういうことなのだろう‥」
ライゼル「ぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
  ライゼルは魔王目掛けて突っ込んでいく
グルル「!?よせっ!!!? ライゼル!!!!!!!!!!!!」

〇荒地
ライゼル「むぅ‥」
ライゼル「我が剣技も、まだまだ錆びついてはいないようだ‥」
ライゼル「次期に感も戻ってくるだろう‥」
ライゼル「グルルは‥」
ライゼル「フハハハ!!変わらんな!あいつは!」
ライゼル「変わったのは私だけか‥」
ライゼル「しかし‥このまま長期戦は分が悪い‥」
ライゼル「なんとかあやつのところまで辿り着かなければ‥」
ライゼル「お前だけは‥私が‥倒す!!」
ライゼル「はぁ‥面倒だ‥」
ライゼル「雑魚は雑魚らしく怒涛を組んでかかってくるがいい!!」
ライゼル「はぁ‥はぁ‥はぁ‥はぁ‥  むっ!?」
ライゼル「やつに繋がる道筋が見えた!! この機を逃す訳にはいかないな‥。!!」
ライゼル「風の精霊よ‥我が身に纏いてその力を示せ!!!!」
ライゼル「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
魔王「・・・」
  魔王は不敵な笑みを浮かべ、左手を空高く掲げた
ライゼル「ごふぉお!!!!」

〇荒野
  魔王の合図で、死角より放たれた一本の大きな槍が、ライゼルの胸を貫いた
ライゼル「がはっ‥はぁ‥はぁ‥」
ライゼル「古き友よ‥お前の勝ちだ‥」
ライゼル「さぁ‥持っていけ‥私の首を‥」
魔王「・・・」
  魔王は身の丈を越す戦斧を振り上げ、ライゼルの首目掛けて振り下ろした。
ライゼル「・・・グルルよ‥すまん‥真の名は言えんかっ(た)‥」
グルル「させん!!」
  ライゼルが首を斬られる刹那、グルルが割って入り魔王を強靭な爪で吹き飛ばした
ライゼル「はぁ‥はぁ‥無粋なことを‥」
グルル「人間の美徳など我は知らん‥ライゼル‥少し安め‥」
ライゼル「ぅ‥戦線離脱とは‥はぁ‥はぁ‥どこまで恥を晒せばいいのだ‥」
グルル「・・・」
ライゼル「・・・頼みがある‥」
グルル「‥手短に言え‥」
ライゼル「この国の民を‥救ってやってくれ‥」
グルル「・・・」
グルル「‥我もお前に頼みがある‥」
ライゼル「はぁ‥はぁ‥ ‥手短に言え‥」
グルル「お前の亡骸‥喰らってもいいか?」
ライゼル「・・・ははっ‥」
ライゼル「私の墓は‥はぁ‥ はぁ‥ お前の腹の中というわけか‥」
ライゼル「‥はは‥好きに‥しろ‥」
グルル「‥そうか‥しばし待て‥直ぐ終わらせる‥」
ライゼル「・・・はぁはぁ・・・はぁ・・・はぁ‥ ‥‥‥」
グルル「!?」
グルル「ライ‥ゼル‥」
グルル「・・・」
グルル「‥我が血肉となり、共にゆこう‥」
  グルルはライゼルの亡骸を大事そうに咥えると、ゆっくりと飲み込んだ
グルル「・・・」
グルル「訊け!!我が名はこれより」
グルル「【竜王ルディアス・ライゼル】!!!!!!」
グルル「そして我が同胞達に命ずる!!」
グルル「我が親愛なる友の手向けに‥ この地の全てを‥喰らい尽くせっ!!」
  空は覆われた‥夥(おびただ)しい数の竜によって‥
  そしてそれらは一つ、また一つと、地上に向かい落ちてくる‥
  魔族の軍勢は魔王を含め、ただただ一方的に喰らい尽くされるのみ‥
  ‥それは‥ただの【餌場】に過ぎなかった‥
  【竜の雨】
  この光景を目にした誰かがそう口にした‥
  竜達は魔族を全て喰らい尽くすと、そのまま彼方へと飛び去っていった
  最後に一匹の竜が大きく長い咆哮を放った。
  その咆哮は、大気を揺るがし、遥か彼方にまで響き渡るほど凄まじいものだった。
  果たして、それは何のために‥何に向けられたものなのだろうか‥
  それを知っているのは、一匹の竜のみ‥
  この出来事は、国を救った伝説として、永遠に語り継がれたのだった‥

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