大怪獣、国際競技場を襲撃す

情無合成獣スフィアマザコンザウルス

本編(脚本)

大怪獣、国際競技場を襲撃す

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〇黒
  ・・・・・・・・・
  新型コロナウイルスが現れず、予定通りに東京オリンピックが始まった世界線・・・

〇国立競技場
リポーター「ついに始まりました、東京オリンピック2020!」
リポーター「世界のスポーツの祭典に、大勢の人がおしかけて・・・あっ!今選手入場が始まります!」

〇レンタルショップの店内
  アニメショップ・アニメイショ
ガモウ「・・・・・・・・・」
ガモウ(・・・ここも変わっちゃったな)
ガモウ(昔は、美少女キャラがそこかしこに居た・・・それが、アニメイショだった)
ガモウ(それが今じゃ・・・・・・)
ガモウ(どこもかしこも・・・イケメン、イケメン 女性向け・・・・・・)
ガモウ(・・・・・・はあ)

〇電車の座席
ガモウ「・・・結局、お土産は何もなしか」
ガモウ「アニメのDVDでもありゃあと思ったんだが・・・・・・ん?」
ガモウ「・・・オリンピック、とうとう始まったか」

〇国立競技場
  ────2020年。
  迫る東京オリンピックに備え、東京を中心に文化の「浄化」が始まった。
  いつものアニメやラノベの狙い撃ちに始まり、ゲーム、アダルト産業、果ては権威を持たない中小の映画会社にまでそれは及んだ。
  一方で、イケメンアイドルやBLといった女性向けコンテンツは全くの無傷というのも”いつもの”である。
  前年からコミックマーケットが開催自粛に追い込まれたのも、選手村にするためという方便だが浄化の一環である事は明らかだった。
  海外の目を意識して海外から見て恥ずかしくない国にするため・・・そんな正義を掲げて施行された浄化は大勢の失業者を産んだ。
  しかしそんな正義に酔った世間からすれば、性犯罪と社会不適合者が地獄に落ちたというだけであり、何の保障もされなかった。
  仕事と生き甲斐を奪われ、社会悪のレッテルを貼られて野に叩き出されたという訳だ。
  ・・・ある女性議員が言った、失職したAV女優に対する発言はその象徴と言えるだろう。
女性議員「AVのお仕事減って困っている方は、福祉に繋がることができますよ」

〇渋谷のスクランブル交差点
ガモウ(・・・・・・・・・そして)
ガモウ(俺もそんな、巨大な正義によって未来を奪われた作り手の一人・・・)
  ガモウ賢一、元エロゲライター
「・・・・・・おや?」
「その顔は、我が友ガモウではないか?」
ガモウ「・・・・・・あっ!!」
ガモウ「オーイシ!!オーイシじゃないか!!」
オーイシ「はははっ、久しぶりですなあガモウ先生!!」
  オーイシ山田、元イラストレーター
  現在コンビニバイト
ガモウ「先生はよしとくれよ、俺がライターだったのってもう昔の話だぜ?」
オーイシ「・・・・・・」
オーイシ「・・・・・・所で」
オーイシ「・・・・・・・・・」
オーイシ「・・・・・ここが本当に、秋葉原なのか?」
ガモウ「・・・2015年から始まった最初の”浄化”、その矛先が向いたのが秋葉原だったな」
ガモウ「東京の有識者から見れば、目に見えてすぐに敵の象徴があるんだ。そりゃ、狙い撃ちにするだろうて」

〇会見場
「・・・覚えてるか?当時のジョセイトウ?だっけか、なんか議員のおばさんが言ってた事」
女性議員「彼らは女性を性的に書くという事に対する責任から目を背けている!!!! その結果犠牲になるのは子ども達なんです!!!!」
女性議員「私は子を持つ親として、このような邪智暴虐の行いを許しません!日本のお母さんの代表として、私は子ども達のために戦います!」

〇渋谷のスクランブル交差点
オーイシ「あー・・・あったあった!」
オーイシ「たしか女子高生が痴漢されたとかの事件に便乗してだっけ?今考えると笑えるよな」
ガモウ「・・・そう、本来なら何も関係がないんだ」
ガモウ「痴漢の犯人は大手会社の部長だったし、俺達がやってたエロゲとも、果てはラノベとも関係ない」
ガモウ「でも・・・」
オーイシ「・・・アホな世間のパンピーどもは、目の前にぶら下げられた”悪”という餌にくいついた」
ガモウ「人間って、子供達を守るため!が大好きだからね それを免罪符にして、過去も同性愛者や外国人を殺してきた」
ガモウ「そして、その正義の結果が・・・」
オーイシ「・・・この、ゴーストタウンと化した秋葉原と」
ガモウ「・・・・・・・・・」
ガモウ「・・・・・行こう、もうすぐ約束の時間だ」

〇センター街
ガモウ「・・・前来た時よりも、すっかり広告は減っちゃったなぁ」
オーイシ「だな、昔はあの辺にアニメやゲームの広告がずらーっと並んでたっけ・・・」
オーイシ「一回、俺達の作ったゲームの広告も載ったっけか」
ガモウ「ははは、あったあった!!」
ガモウ「懐かしいなぁ・・・」
オーイシ「・・・あの頃は、本当に楽しかったな」
ガモウ「・・・・・・・・・」
オーイシ「・・・・・・ついたぜ」

〇雑居ビル
  ────ラジオタワー(俗称)
  かつての秋葉原のランドマーク的存在だった、エロゲ専門店、グッズショップ等がひしめいていた場所。
オーイシ「そして・・・老朽化が進んで取り壊される予定のビル」
ガモウ「・・・ここ、取り壊された後何が建つか知ってる?」
オーイシ「何か建つのか?」
ガモウ「・・・サロンビルだとよ、人権団体の」
オーイシ「うわぁ・・・」
ガモウ「俺達の思い出の場所に、そんな事されるなんてな・・・」
オーイシ「・・・・・・」
オーイシ「・・・開いてる」
ガモウ「開けてくれてるからな・・・行こう」

〇舞台下の奈落
  ラジオタワー内エロゲショップ「moon」
  ────跡地。
ガモウ「・・・覚悟はしていたが」
オーイシ「本当に何もないな・・・」
オーイシ「・・・んっ?」
滝川真理「・・・っと、荷物はこれで全部やね」
Lunana「あざっす!先輩が手伝ってくれたお陰ですぐ終わったっす!」
滝川真理「えへへ、これぐらいお安い御用やって」
オーイシ「・・・・・・あっ!!」
オーイシ「たしか、昔一度売り子してくれたLunanaちゃん!」
Lunana「そうッス!覚えててくれたッスか先輩!」
  Lunana、本名 斎藤富子
  元コスプレイヤー、現会社員
ガモウ「・・・Lunanaちゃんは解るけど」
ガモウ「そちらの貴婦人、is、誰?」
滝川真理「えっ?・・・まあ、顔を合わせるのは初めてやからなぁ」
滝川真理「えー・・・コホン」
滝川真理「『私、お兄ちゃんが笑顔でいてくれるなら、こんな世界いらない!』」
ガモウ「・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」
ガモウ「あーーーーーっ!!!!!!!!滝川真理!!!!!!!!」
滝川真理「そ、このサークル『東洋地帯』の専属声優でございます♪」
  滝川真理、元声優
  現在パート
滝川真理「まあ、サークル解散後は鳴かず飛ばずで、今はパートのおばちゃんやけどな」
ガモウ「・・・・・・なんか、すんません」
滝川真理「ええのええの、ガモウ君が悪いわけとちゃうんやから」
オーイシ「他はわかるけど・・・Lunanaちゃんは居ていいの?」
オーイシ「わかってるの!?今から俺達がしようとしてる事は・・・」
Lunana「もしかして、旦那の心配っすか?」
オーイシ「それは・・・っ」
  Lunana、サークル解散後に一般男性と結婚
Lunana「あいつ、私が病気で子供産めないって知った途端態度変えやがったんスよ!?」
Lunana「あんなヤツ、実家共々阿蘇山の噴火に巻き込まれて死ねばいいんスよ!!!!」
オーイシ「・・・って事は?」
Lunana「当然離婚済みだし実家とも縁を切ったッス、私の家はこのサークルッス」
オーイシ「・・・・・・・・・」
オーイシ「・・・本気で言ってるのか?」
Lunana「・・・本気ッスよ、先輩」
Lunana「先輩はどうなんスか、”アレ”が起きたら先輩のバイト先も実家も潰れるッスよ」
オーイシ「それは・・・っ」
滝川真理「これっ、その辺にしときなルーちゃん オーちゃんかて悪気があったワケとちゃうやろ」
Lunana「・・・っ!! すんませんッス!!滝川先輩!!」
ガモウ「オーイシもあまり言ってやるな、思う所はみんな同じだよ」
オーイシ「・・・・・・ごめん、俺も無神経だった」
???「・・・皆さん、お揃いのようで」
オーイシ「おっ」
ガモウ「噂をすれば・・・」
Lunana「・・・あっ、社長さん!!」
滝川真理「久しぶりやねぇ!!相変わらず美人やな!!」
リーラ「皆様方もお変わりないようで・・・」
  銀河メディア連盟親善大使
  アダマント星系人・リーラ
  サークル「東洋地帯」代表
  ・・・当然ながら人前には出たことがない
リーラ「・・・こちらが最後の物資ですか」
ガモウ「ええ、我々の作った最後のゲーム・・・」
ガモウ「・・・の、在庫です」
リーラ「それでは・・・むううっ!!」
リーラ「宇宙船への転送は完了しました、あなた方の表現力には本当に恐れ入る」
リーラ「表現の自由・・・私の好きな言葉です」
ガモウ「・・・・・・」
ガモウ「褒めてくれるのは嬉しいですが・・・」
オーイシ「・・・この状況で言われても、ね」
リーラ「・・・事態はこちらも把握済みです」
リーラ「しかし今は、サークル東洋地帯の再会を祝いましょう」
ガモウ「・・・それもそうですね」

〇空

〇ビルの屋上
滝川真理「・・・っはぁー!やっぱ秋葉原言うたらおでん缶やなぁ!」
Lunana「先輩も飲むッスよ!折角社長が持ってきてくれたッスからね!」
オーイシ「あんがとよLunanaちゃん!」
リーラ「・・・・・星が綺麗ですね」
リーラ「こんな夜でしたか、私があなた方と会ったのは・・・」
ガモウ「ええ、今でも覚えてます・・・」

〇山の展望台(鍵無し)
  ・・・・あの頃、俺とオーイシは地方の田舎でバイトしながら、パソコンを買う金を貯めていた。
オーイシ「お、おい、これってYO!」
ガモウ「・・・・・・」
ガモウ「UFO、だよな・・・」
ガモウ「そして・・・・・・」
ガモウ「う・・・・・・」
オーイシ「ちゅうじん・・・・・・」
ガモウ「・・・・・・おっぱいが」
オーイシ「・・・・・・でっかい」
リーラ「・・・・・・」
リーラ「・・・よろしいですか?」
ガモウ「はっ、はひっ!」
リーラ「今貴方がたが持っている、それは・・・」
オーイシ「えっ、えと・・・」
ガモウ「・・・同人誌・・・ま、漫画です ・・・我々が書いた・・・」
リーラ「・・・・・・? ドー、ジンシ?マンガ?」

〇ビルの屋上
ガモウ「・・・まさか、俺達の同人誌の最初のお客さんが宇宙人になるなんてね」
リーラ「・・・そこから、地球文化との交流が始まり、様々なアニメや同人サークルが極秘裏に銀河メディア連盟と関わっている」
リーラ「今や、日本のオタク文化は宇宙でも人気の存在です」
リーラ「・・・・・・しかし」
ガモウ「・・・・・・」
ガモウ「・・・・銀河連合は、なんと?」
リーラ「・・・”地上げ”を実行するとの事です。 今まではオタク文化があるが故に見逃していたが────」
リーラ「────それが滅ぶとなれば、この星を放置する義理もないと」
ガモウ「・・・・・・・・・」
ガモウ「・・・・水も空気も作らずともある星 けれど資源は掘り尽くされている上に住人は愚か」
ガモウ「そりゃ、土地としての価値ぐらいしかありませんよねぇこんな星」

〇川沿いの公園

〇水中

〇音楽スタジオ
オーイシ「・・・・・・・・・」
オーイシ「・・・・・・ついに、来たか」
滝川真理「・・・・これでウチらも稀代のテロリストやね」
Lunana「構いませんッスよ、どうせ日本も無くなるッス テロリストもクソもねえッスよ」
リーラ「・・・・・・」
リーラ「・・・・・現在、我々の把握している”オタク”を全て保護し、残りは”地上げ”で滅ぼす」
リーラ「その条件の代償が・・・」
ガモウ「地上げのための兵器・・・ようは宇宙怪獣の起動を、俺達に行わせる事」
リーラ「・・・申し訳ありません 貴方方を売国奴にしてしまう」
ガモウ「構いませんよ、みんなこの国には嫌気が差してましたから・・・」
ガモウ「オーイシは自分を虐待した親の介護のために、苦労して掴んだ大手企業の内定を諦めて地元でバイト・・・」
ガモウ「滝川さんは、増税で家の本屋が潰れて旦那さんが自殺。息子さんも勤め先の市役所でパワハラで精神を壊されて自殺・・・」
ガモウ「Lunanaちゃんは、子供が産めないからと義実家からDVを受けて離婚。実家からも「家に恥をかかせた」と勘当・・・」
ガモウ「そして、大賞を受賞した自創作を”浄化”によって無かった事にされ、受けた仕事も次々と増税で潰れて定職なしの俺、ガモウ」
ガモウ「・・・そんな状況に陥っても、腐らず頑張ってきた。でも・・・」
ガモウ「・・・もう限界なんです。なのに、誰も助けてくれない だから・・・」
ガモウ「・・・こうするしか、こうでもしないと生きるための手段に飛びつけない」
リーラ「・・・・・・」
ガモウ「それに、少子高齢化、止まらない不景気、にも関わらず目先のキラキラに取り憑かれて何もしない政府と国民・・・」
ガモウ「銀河連合が何をしなくとも、近い将来この国は滅びます それが予定より早まった。それだけの話ですよ」
リーラ「・・・・・・」
リーラ「・・・・本当に、申し訳ありません」
ガモウ「・・・・・・」
ガモウ「・・・ありがとうございます、社長」
ガモウ「俺達に救いの手を差し伸べてくれて」
ガモウ「・・・・・・よし」
ガモウ「はじめるぞ皆ァ!!!!」

〇ライブハウスのステージ
  ※映像はイメージです
ガモウ「イカれた底辺どもを紹介するぜェ!!!!!!」
ガモウ「ギター!!この曲の作曲者にて当サークルのイラストレーター!!!毒親への憎悪をメタルに変えるぜ!!!!オーイシ山田ァ!!」
オーイシ「俺の絵を破いたクソジジイィィ!!!!見てるかァァァ!!!!!!この旋律でてめえをブッ殺してやるぜェーーーーッッ!!!!!」
ガモウ「ドラム!!私のビートで阿蘇山沸かして義実家焼くぜッ!!!!サークル最年少の元コスプレイヤー!!!Lunanaァァ!!!!」
Lunana「オーッス!!!!ドラムは学生時代に軽音部やってたからめっちゃ得意ッス!!!!!!ちなみに衣装は当時品ッス!!!!!!!!」
ガモウ「ボーカル!!老いてもなお萌えボイスは健在ッ!!!!亡き夫よ!!息子よ!!母ちゃんはやるぜ!!滝川真理ィィッ!!!!」
滝川真理「せーのっ・・・!!」
滝川真理「『お兄ちゃ〜んっ♡マリのライブ、楽しんでいってね〜〜っ♡♡』」
ガモウ「そして俺はライターのガモウ賢一ィィ!!!!!! 担当はシンセサイザーだァァ!!!!!!」
ガモウ「このクソみてえな社会に押しつぶされたお前ら、そしてこれから滅びる社会へのレクイエムとしてこの曲を送るぜェ!!!!」
ガモウ「我がサークル初となるエロゲー「サイバーサマーバケーション」主題歌!!!! 『電子・エイジ・愛シタリ』!!!!」

〇水中

〇沖合
  惑星制圧用怪獣兵器
  メテオモンス

〇川沿いの公園
「なっ、なんだアレは!!!?」
「で、でかい!!150mはあるぞ!?!?」

〇ライブハウスのステージ
  ※キーボードの素材がありませんでした

〇空

〇ライブハウスのステージ

〇繁華街の大通り
戦車隊「撃てーっ!!国立競技場に近づかせるなァ!!!!」

〇空

〇大きな箪笥のある和室

〇ラジオの収録ブース
  ※当時の滝川
  サークル東洋地帯、声優募集!
  声に自信のある方は・・・

〇国立競技場
リポーター「え、えー・・・ただいま入りました情報によりますと・・・」
リポーター「東京湾から上陸した巨大怪物体は、港区を破壊しつつ進軍」
リポーター「自衛隊の攻撃ももろともせず、東京を火の海にしつつ・・・」
ディレクター「・・・・・・!!」
リポーター「・・・えっ?」
リポーター「たっ、ただいま入りました情報によりますと、巨大怪物体は・・・」
リポーター「ここ、国立競技場を真っ直ぐ目指しているとの事です!!!!」

〇大きい展示場

〇コミケの展示スペース

〇空

〇国立競技場
リポーター「あっ、現れました!あれが巨大怪物体です! なんて大きいの、150mは・・・」
リポーター「あっ・・・ああーっ!!競技場が!!」

〇空

〇荒廃したセンター街

〇雑居ビル

〇音楽スタジオ
  ・・・・・・この日
  日本と世界から、人知れず多くの人間が姿を消した・・・
  これから起きる災厄が、世間が見捨てた彼等によって引き起こされた事・・・
  そして・・・
  ・・・その原因が自分達にある事
  それさえ知らず、この後目覚めた無数のメテオモンスによって
  世界は焼き尽くされた・・・・・・

〇大きい展示場
  おわり

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