魔報士の戦場

ぽんたろう

第2話『はじめての冒険』(脚本)

魔報士の戦場

ぽんたろう

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〇大樹の下
レセ「すでに探索候補のダンジョンは 決めてるんだよな?」
グレン「ああ、シュプネーの近辺に 新しいダンジョンを見つけたんだ」
レセ「そんなところ、まだ残ってたのか」
レセ「シュプネー周辺は 探索尽くされたかと思ってた」
グレン「まあ、徒歩で1日は掛かるけどな」
ルオン「新しいダンジョンは増え続けるから 運良く見つけられたんだよ」
レセ「そうか、確かにな」
ナナリー「一応、ルオンの査定だと C級のダンジョンだから安心よ」
ナナリー「ルオンは鑑定士の成績は優秀なの」
レセ「おお、ルオンは鑑定士専攻か」
ルオン「うん」
レセ「凄いな」
ルオン「そんなことないよ」
レセ(やっぱり押しに弱そうだな)
レセ(今度頼んでみよう)
グレン「というわけで決行は明日にしようと思う」
レセ「問題ない」
レセ「早いに越したことはない」

〇城門沿い
リユ(この人があのビルデさんか)
ビルデ「君がリユさん?」
リユ「は、はい!」
リユ「よろしくお願いします!」
リユ「若手冒険者ナンバーワンの ビルデさんにお会い出来て光栄です!」
リユ「いつも動画見てます」
ビルデ「そりゃ、どうも」
ビルデ「君のお父様は シュプネーの官僚だと聞いているよ」
リユ「はい、そうです」
ビルデ「今日のために 多大なご厚意もいただいている」
ビルデ「だから、安心して同行してくれたまえ」
リユ「は、はい」
ビルデ「君は魔報士になることが 約束されたようなもんだ」
ビルデ「実に運が良い」
リユ(何か思っていた話と違う)
ビルデ「さあ行こうか」

〇草原の道
レセ「演習以来だ、外に出るなんて」
ナナリー「演習は教官付き添いだからね」
グレン「演習は教官がいた分 安全が保障されていたが 今回はいない」
レセ「だから、死も隣り合わせの実戦と同じ」
レセ「死んでも誰のせいにもできない」
ナナリー「きっと大丈夫だよ」
ナナリー「最近のシュプネー近郊は 強力なモンスターが出ないぐらい安全だしね」
レセ「そうだな」
レセ「少し行ったら危険度が増すけどな」
グレン「僕もこの辺のモンスターについては 調べ尽くしている」
グレン「安心していいよ」
グレン「そのダンジョンまでの旅路には せいぜいCからD級程度の モンスターしかいない」
グレン「訓練していない一般人ならともかく 僕たちみたいな学園の学生なら問題ない」
グレン「だから、レセは魔報士の仕事に専念してくれ」
グレン「戦闘は冒険者の務めだ」
レセ「ああ、ありがとう」
レセ「俺も一応戦闘には心得があるから いざというときは自分でなんとかする」
グレン「頼りになる魔報士で助かる」

〇荷馬車の中
リユ「あの」
ビルデ「どうかしたかい?」
リユ「いつも馬車を使って 移動してるんですか?」
ビルデ「ああ」
ビルデ「この方が効率的だろ?」
リユ「それはそうですけど」
リユ「あとそちらの女性は? ただの一般の人にしか見えませんけど」
ビルデ「この子ね、俺の彼女さ」
ビルデ「女っ気がないと寂しいだろ?」
カタリナ「この人寂しがりやなの」
リユ「は、はあ」
リユ(公私混同がすごい)
リユ「以前に、インタビュー見ましたけど 初心を忘れないために徒歩で 旅を続けているはずでは?」
ビルデ「あんなの印象操作に決まってるだろ?」
リユ「そんなぁ」
ビルデ「公ではパーティーメンバーは4人」
ビルデ「俺と冒険者の2人、魔報士1人」
リユ「でも、違いますよね?」
リユ「他の馬車には たくさんの人が乗ってました」
ビルデ「その通り」
ビルデ「冒険者10人、魔報士3人」
リユ「どうして、こんなことを?」
ビルデ「俺が提供しているのは娯楽だからね」
リユ(人気の冒険者が まさかこんな人だったなんて)

〇薄暗い谷底
ルオン「ここが目的の場所だよ」
レセ「ようやく着いたな」
グレン「あっ!」
レセ「どうかしたか?」
グレン「誰かが焚き火した後あるな」
レセ「ダンジョンは大丈夫か?」
ルオン「大丈夫 まだ誰にも手をつけられてない」
ルオン「一応、”ファーストタッチ(FT)”しといて 良かった」
レセ「未開のダンジョンを 発見者が最初に探索できる権利だっけか」
ルオン「そうそう」
ルオン「1パーティーにつき3つまでだけどね」
グレン「その権利を侵害した者には ペナルティが与えられる」
グレン「まあ、FTしとけばダンジョンには そう簡単には入れないけどな」
グレン「だけど、今日は暗くなるから ここで一旦休むとしよう」
グレン「そして、明日本番だ」
レセ「了解」

〇荒地
お供A「でやー!!」
お供B「いけえええ!」
お供B「くう!」
お供A「ちくしょう!」
お供B「次頼む!」
お供C「承知した!」
家来D「いくぞ!」
お供C「よし!あと少し!」

〇荷馬車の中
お供A「ビルデ様!出番です!」
ビルデ「ようやくか」
ビルデ「リユさん、ここからだ 存分に撮影をしてくれたまえ」
リユ「はい」

〇荒地
ビルデ「少しばかり目を離したばかりに!」
ビルデ「よくも仲間を!」
ビルデ「さあ、いくぞ!」
ビルデ「この宝刀”グレガラダス”で 最後の一撃をしとめてやる!」
A級モンスター「ウギャアアア」
ビルデ「終わったな」

〇荒地
ビルデ「今回はいいシナリオだったろ?」
お供A「さすがです」
お供B「仲間のピンチに颯爽と現れるビルデ様」
お供B「きっとまた人気も鰻登りでしょう」
ビルデ「いや、ありがとう」
ビルデ「君らも今回のボーナスは上乗せしとくよ」
「ありがとうございます!」

〇荷馬車の中
ビルデ「どうだった?」
ビルデ「これがシナリオだ」
リユ「毎回、こんなことを?」
ビルデ「もちろんだ」
ビルデ「毎回、モンスターを さっさと倒すだけではつまらないだろ?」
ビルデ「俺は強くなり過ぎたんだ」
ビルデ「これのおかげでね」
ビルデ「だから、あれぐらいのモンスターなら わずか数撃で倒すことができてしまう」
ビルデ「だけど、それでは ファンたちは飽きてしまう」
ビルデ「これはファンのためでもあるんだ」
リユ「だから、パーティーの人たちは みんな似た背格好と同じ格好してるんですね」
ビルデ「そこに気づくとはさすがだね」
ビルデ「ああやって、戦ってる感じを演出してる」
リユ「いつかばれるんじゃないでしょうか?」
ビルデ「仲間にはこれ以上ないぐらいの 報酬は渡している」
ビルデ「そう簡単には口割らないさ」
ビルデ「あと弱みも握ってるからね」
ビルデ「それに、俺の実力は本物だから 周囲は何も言えない」
リユ「でも、いつか誰かが ばらすんじゃないですか?」
ビルデ「こんなこと、どこのマスコミも 知ってることさ」
リユ「えっ!?」
リユ「嘘ですよね?」
ビルデ「お互いの利害の一致ってやつさ」
ビルデ「マスコミは俺の冒険で視聴者を稼げる だから知っていても黙認」
ビルデ「俺はそのおかげで地位と金には困らない」
ビルデ「誰も困らないだろ?」
リユ「こんなことって、、、」

〇けもの道
レセ「まさか、この俺が試験を受けられるなんてな」
レセ「このまま上手くいけば 本当に魔報士になれる」
レセ「もう諦めかけてたのにな」
レセ「縁って不思議なもんだな」
レセ「魔報士になれるとしたら エロ動画撮る必要ないな!」
レセ「あの2人に頼むも必要ない」
レセ「失敗した時に頼むとしよう」
レセ「いや、むしろ、両方やるか」
ルオン「あ、あの」
レセ「ルオンじゃん、どうした? 起きてたのか?」
ルオン「う、うん 緊張しちゃってね」
レセ「俺もだ」
ルオン「明日はきっと上手くいくよね?」
レセ「ああ」
レセ「そういえば、グレンから聞いてたけど ルオンが人見知りなのか?」
ルオン「うん」
ルオン「でもね、初めてね 人見知り出なかったんだよ」
レセ「よかった」
ルオン「いつもだったらお話も全くできなくて それに呆れて魔報士の人いなくなっちゃうの」
レセ「全然そんなことないのにな」
ルオン「あのね、お願いがあるの」
レセ「何だ?」
ルオン「もしね、このダンジョン攻略が上手くいって お互いに冒険者と魔報士になれたら」
ルオン「またパーティー組んで冒険しよう!」
レセ「ああ、そうしよう」
レセ「俺もこのパーティーが気に入った」
ルオン「本当!?嬉しい!!」
レセ「ああ」
ルオン「これでエロ動画作らなくて済むね」
レセ「知ってたのか」
ルオン「すごい独り言大きかったから」
レセ「聞かれてたか」
ルオン「いやでも、耳に入ってきてた」
レセ「確かにもうエロ動画家になる、、、」
レセ「必要は、、、」
レセ「ないな」
ルオン「すごい悲しそうな顔」
ルオン「そうだ!」
レセ「ん?」
ルオン「もしも、私たちがナンバーワン冒険者に なれたら私がエロ動画に出てあげる」
レセ「二言はないな!?」
ルオン「ごめん、冗談」
レセ「普通そうだよな」
ルオン「本気で悲しい顔しないで」
ルオン「でも、2人で路頭に迷ったときは 考えてあげる」
レセ「おお、ありがとな」
レセ「ルオンは優しいな」
ルオン「嬉しい」
レセ「とにかく、みんなで試験合格して 冒険の旅に出よう!」
ルオン「約束だよ」

次のエピソード:第3話『ダンジョンの罠』

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