第2話 「抗えない運命」(脚本)
〇教室
クラスメイト達が嘲笑うように
俺の事を話している。
「アイツよく学校来れるよな」
「真由ちゃんもいい迷惑」
「ホントホント。何が運命の出会いだよ」
やめろやめろやめろやめろやめろ!
八王子瑞希「起きろバカ兄!」
〇学生の一人部屋
目が覚めると俺はベッドから落ちていた。
八王子拓馬「いっっって・・・」
背中に痛みを感じながら起き上がると、
妹の瑞希(みずき)が
片足をベッドに乗せて腕組みしていた。
八王子瑞希「昨日は私を置いてったくせに、 今日は寝坊ですか?」
八王子拓馬「もう少し優しく起こして・・・」
八王子瑞希「どうしてアナタに優しくしないと いけないんですか?」
敬語なのが逆に怖い。
俺は身を守るように布団にくるまる。
八王子拓馬「背中が痛いので今日は休みます オヤスミナサイ」
八王子瑞希「アンタを登校させないと、 ウチの小遣い減るんだっての!!」
八王子拓馬「ぐへぇえええええ・・・!!」
本性を現した妹に首根っこを掴まれて、
俺は外へと引き摺られた。
〇学校の廊下
睨みを効かせる瑞希の視線を
背中に受けながら、教室へと向かう。
中学の時もこうして
無理やり登校させられたっけ。
女子「瑞希ーおはー」
八王子瑞希「はよー」
女子「ねね。あの男の子って彼氏?」
八王子瑞希「違うわよ・・・。双子の兄貴」
女子「へぇ、似てなっ」
八王子瑞希「二卵性だもん。てか似てたら最悪だわ」
八王子拓馬「聞こえてるんですが・・・」
愚痴を零しつつ俺は教室へと入った。
〇図書館
昼休み。
俺は昼食を摂る為に図書室へ向かった。
早乙女さんの傍にいると
男子から非難の嵐を受けそうだし、
遠ざかるのに越したことはない。
八王子拓馬「ついでになんか面白いのないかな」
俺は本棚を物色した。
つい脚本集や俳優の自伝などを
手に取ってしまいハッとする。
かつて所属していた演劇部は、
今はもう辞めてしまった。
けれども、まだあの脚光を
忘れられないのかもしれない。
八王子拓馬「あんな思いをしたくせに・・・」
本を仕舞おうとすると
横から手が伸びてきた。
八王子拓馬「え・・・」
早乙女夢姫「あ・・・」
触れそうになる手と手。
しかし、
寸でのところでお互いにピタリと止まる。
早乙女夢姫「本、お好きなんですか?」
八王子拓馬「いや・・・普通です。 あ、もしかしてコレ、読みます?」
早乙女夢姫「あ、いえ! 他に探している物がありますので・・・」
八王子拓馬「そ、そうですか。じゃあ俺はこれで」
そそくさとコーナーを変えた。
八王子拓馬「ふう・・・、これで・・・」
どうして彼女がここにいるのか知らないが、とりあえず距離を取っておこう。
そう思ったのも束の間、
再び彼女と出くわした。
早乙女夢姫「ぜ、全然見つからないなあ」
八王子拓馬「また⁈」
俺は慌ててコーナーを変える。
ふと、
彼女が俺に言った言葉が頭をよぎった。
〇ハート
早乙女夢姫「もしかしたら私たち、運命の赤い糸で 結ばれているのかもしれませんね」
〇図書館
八王子拓馬「まさかこれが、 運命の力とでも言うのか・・・?」
バカバカしい。
そう思いつつ、俺は一冊の本を手に取る。
そこへまた彼女が現れた。
早乙女夢姫「あ・・・、あはは・・・よく会いますね」
八王子拓馬「まだ見つからないんですか?」
早乙女夢姫「ええ・・・まあ・・・」
八王子拓馬「これとか為になりますけど、 良かったら読んでみますか?」
早乙女夢姫「へっ!? ええっと、じゃあ少しだけ」
早乙女夢姫「漫画で分かる保健体育・・・⁈」
彼女の顔がみるみる赤くなっていく。
早乙女夢姫「ご、ごめんなさい!! 失礼します!!」
俺に本を押し付けると
彼女は慌てて立ち去った。
若干の罪悪感を感じつつも、
慌てる早乙女さんは正直可愛いと思った。
〇学校の屋上
昼食を済ませた俺は、屋上へと向かった。
春のそよ風が気持ちいい、
日向ぼっこには絶好の日和だ。
八王子拓馬「平和だ・・・」
下の方から声が聞こえてくる。
男子高校生1「早乙女さん! 好きです。 俺と付き合ってください!」
早乙女夢姫「申し訳ありません! その、心に決めた方がおりますので・・・」
一礼して彼女はその場から去って行く。
だよな、と呟き男子も戻って行った。
八王子拓馬「告白か・・・。あのときの俺も、 これぐらいにしておけば・・・」
一瞬、中学の頃の失敗を思い出しかけて、すぐに考えるのを止めた。
八王子拓馬「にしても、 早乙女さんの心に決めた人って誰だろ?」
『私たち、運命の赤い糸で
結ばれているのかもしれませんね』
また彼女の言葉が頭によぎる。
ひょっとして、
彼女の好きな相手って・・・。
八王子拓馬「いや、自意識過剰だって・・・」
〇白い校舎
〇教室
担任「よーし、席替えするぞー」
今日はクラスの席替え日だった。
自分の机を端へと運ぶ。
そして、その隣に居たのは彼女だった。
早乙女夢姫「あの、よろしくお願い致します」
八王子拓馬「よ、よろしく・・・」
またかよ! 一体どれだけ彼女と
縁があるんだ俺は・・・。
早乙女夢姫「八王子さん、その・・・」
彼女はメガネをいじりながら
顔を赤らめる。
早乙女夢姫「拓馬さんとお呼びしても よろしいでしょうか?」
八王子拓馬「は・・・?」
目が点になるってこういう感じか。
早乙女夢姫「私の事も夢姫(ゆめ)とお呼びいただけると嬉しいのですが・・・」
八王子拓馬「え⁈ いやいやいやいや何で!?」
早乙女夢姫「それは・・・そう! お互いに名前の方が 短くて呼びやすいじゃないですか⁈」
八王子拓馬「無理無理無理無理!」
男子達から負のオーラを感じ、
すかさず首を振る。
早乙女夢姫「そう、ですよね。急に申し訳ありません でした、今のは忘れて下さい!」
俺はほっと胸をなでおろした。
〇家庭科室
だがその後も、俺は彼女に
何度も冷や冷やさせられることになった。
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席替えとかくじ引きでの席決めも懐かしく感じます