世界樹世界の魔女と龍

小潟 健 (こがた けん)

3 着発(脚本)

世界樹世界の魔女と龍

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〇基地の広場
イスランド兵1「ほ、本当に、来た!?」
イスランド兵2「デカイぞ、もしもあんなのが館にぶつかってしまったら・・・!」
ドミニク将軍「弓も杖も向けるなよ! 敵では無い!」
ドミニク将軍「それに、あのドラゴンをよく見るんだ」
イスランド兵1「・・・あっ! 腹に、鎖が巻いてある」
イスランド兵2「首に人が居るぞ!?」
ドミニク将軍「そういう事だ、野生の獣では無い ほら、君も槍を向けるな、落ち着け」
  演習場の中心部にミスリルの巨体がふわりと降り立ち、その首からアデライーデもスルリと降りた
アデライーデ「ドミニクさん、お久し振りだねぇ」
イスランド兵2「な、なんと可憐な・・・」
ミスリル「グルッ、グルウルウ(ククッ、姉貴が可憐だとよ)」
イスランド兵2「ヒッ!? こっち見た!!」
ドミニク将軍「むぅ? 何かミスリルの気に障ったか?」
アデライーデ「・・・アタシを可憐だって言ったのを笑っただけさね」
アデライーデ「どこに笑う所があるかは皆目見当がつかないけどねぇ・・・」
ドミニク将軍「そうだぞミスリル、アデライーデの嬢ちゃんはべっぴんさんだぞ 2年でずいぶん見違えた」
ミスリル「グルゥグル、グルゥ?(見目の良し悪しだけで可憐と言うのは、浅はかだと思わんか?)」
ドミニク将軍「・・・何と言っているんだ?」
アデライーデ「麗しき我が姉君は可憐で優しくお淑やか、って褒め称えているねぇ」
ミスリル「グルグルゥ(そういう所だぞ)」
アデライーデ「・・・・・・まぁ、いいさ」
アデライーデ「それで、ドミニクさん・・・将軍の方が良かったかい?」
ドミニク将軍「どちらでも構わんさ、 それよりも確認したい」
ドミニク将軍「この本島に堂々とミスリルを連れてきたという事は、お前さんらはどちらもデュナの認めるほどの強さに達したという事だな?」
アデライーデ「それなら1年以上前には」
ドミニク将軍「よし、もう1つ聞きたい もしも今からミスリルがお前さんだけを乗っけてデュナの島まで飛べば、どの位の速さで飛べる?」
ミスリル「?」
ミスリル「ル、グルグロゥ(まぁ、荷物が無いなら2時間以内だ)」
アデライーデ「2時間だって」
ドミニク将軍「!? 速いな!」
ドミニク将軍「頼みが有る。 外層門を守るフラール島の砦が表6層からのドーカの軍勢に襲撃を受けた」
アデライーデ「門が、6層のドーカどもに破られたって言うのかい?」
ドミニク将軍「どうやらそうらしい。 伝書の魔法で連絡を受けてから援軍を手配しているが、俺が船一隻で駆け付けるだけでもあと最低2日かかる」
ドミニク将軍「お前さん達に協力を要請する フラールの砦『テルトラット』に援軍として行ってくれないか?」
アデライーデ「いいよ、承けた」
アデライーデ「ミスリル、荷物を下ろすよ」
ドミニク将軍「ありがたい・・・おい、君! 紙と筆、あと旗を持ってきてくれ!」
アデライーデ「ドミニクさん、この荷物はここに預けて行っても構わないかい?」
ドミニク将軍「それは?」
アデライーデ「ババアからもらった刀剣さね」
ドミニク将軍「まさかその箱いっぱいか? とんでもないな・・・」
ドミニク将軍「兵達が悪い気を起こさんとも限らんし、よければ俺の家で預かっておこう カミサンなら信頼できる」
アデライーデ「うかつに箱を開いたら全身を切り裂かれる魔剣とかも入っているから、気を付けておくれよ」
ドミニク将軍「何て物を持ち歩いているのさ・・・」
ドミニク将軍「代わりと言っちゃ何だが、コレを持って行ってくれ」
アデライーデ「手紙?」
ドミニク将軍「向こうで戦闘中なら、空から砦にコレを落とせば話が早くなるだろう」
ミスリル「グルルグルグル(味方に攻撃されるのも鬱陶しいからな)」
ドミニク将軍「あと、コレもだ」
アデライーデ「これは、イスランド領の旗かい?」
ドミニク将軍「ミスリルの胸や腹にでも着けて行けば、末端の兵でも味方と分かる・・・と期待したい」
ミスリル「グルルゥ(ダサいが耐えよう)」
ドミニク将軍「フラーテの場所は分かるか?」

〇沖合
  ドミニクに聞かれたアデライーデは顔を上げ、遠くを見据える
アデライーデ「一回ミスリルと近くまで行ったから分かるよ それに・・・」
アデライーデ「分かりやすい目印も有るんだ──」
  視線の先には、世界の果て──
  ここからはまだ遠く、鷹よりも遠くを見通すミスリルの目でも、ほんの、ほんの薄らとしか見えないが──
  世界樹と同じ、幻影の樹の壁は層界を一周し──

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