エピソード4(脚本)
〇高級マンションのエントランス
平川盗愛「ここが父の偽物がいたっていうマンション?」
高木誘作「そうなんだけど・・・」
高木誘作「何? その恰好?」
平川盗愛「脂の乗ったオヤジは大概若い女に弱いのよ」
平川盗愛「危なっかしい雰囲気を出していれば尚更ね」
平川盗愛「似合うでしょ」
高木誘作「じゃあ呼び出すよ?」
平川盗愛「なんとか言いなさいよ」
高木誘作「・・・・・・」
平川盗愛「・・・・・・」
平川盗愛「・・・出ないわね」
高木誘作「おかしいな。部屋番号はあってるはずなんだけど」
高木誘作「不在なのかな?」
平川盗愛「ちょっと聞いてくるわ」
高木誘作「え、聞くって誰に?」
平川盗愛「管理人さん、ちょっといい?」
管理人「なにかな、お嬢ちゃん」
平川盗愛「21階の平川って人知らない?」
平川盗愛「2104号室らしいんだけど」
管理人「お嬢ちゃん、ごめんよ。住人の個人的なことは教えられないんだ」
平川盗愛「どうしても駄目?」
管理人「まぁ、そうだねぇ・・・」
管理人「ちなみにどういう用件?」
平川盗愛「呼ばれて仕事しに来たの」
管理人「し、仕事って・・・?」
平川盗愛「女が呼ばれて男の家を訪ねる仕事なんて、ただ一つでしょ?」
管理人「随分と若く見えるけど・・・」
平川盗愛「それが売りなのよ」
管理人「う、後ろの彼は?」
平川盗愛「ただの運転手よ。気にしないで」
管理人「でも、おいそれと入れるわけには・・・」
平川盗愛「ねぇ、おじさん。おねが~い」
管理人「う、うーん。でも・・・」
平川盗愛「入れてくれたら、お礼しちゃおうかなぁ」
管理人「お、お礼?」
平川盗愛「そ。おじさんにも」
平川盗愛「い・い・こ・と」
平川盗愛「してあげちゃう」
管理人「いいこと・・・」
管理人「いや、いやいやいや」
管理人「それでも駄目なんだ。おじさんにそんな権限ないんだよ」
平川盗愛(粘るわね・・・)
管理人「悪いけど連絡とってくれる?」
管理人「それで、おじさんに代わって確認が取れたら入れてあげるよ」
平川盗愛「・・・わかった」
盗愛は管理人から背を向ける。
そして、スマホを取り出して電話をかけるふりをした。
平川盗愛「あ、もしもし平川さん?」
平川盗愛「しーっ」
高木誘作「あ、ああ・・・」
平川盗愛「うん、なんか管理人さんが電話で確認したいって」
平川盗愛「うん。うん、わかった。じゃあ代わるね」
管理人「悪いね」
平川盗愛「ううん、こっちこそ」
管理人「え?」
盗愛は管理人が反応するよりも早く、窓から身を乗り出している彼の首元にスタンガンを当てた。
管理人「あがっ!」
平川盗愛「おやすみなさい」
高木誘作「そんなもの持ち歩いてるんだ」
平川盗愛「世の中物騒な人だらけだから」
高木誘作「間違いなく君もそのうちの一人だよ」
平川盗愛「女が一人で生きて行くには必需品なの。要は淑女の嗜みよ」
高木誘作「とんだ淑女がいたもんだ」
高木誘作「で、倒しちゃっていいわけ? 何も聞き出せてないじゃない」
平川盗愛「管理人室からマスターキーを借りましょ。そうすれば解決」
高木誘作「生憎、入口はオートロックの中だよ」
平川盗愛「なら窓口から入りましょうか。私なら通れる」
平川盗愛「管理人さんどかすの手伝って」
高木誘作「あ、ああ・・・」
誘作は窓口からはみ出るように気絶してる管理人を、部屋の中へと押し込んだ。
平川盗愛「ありがとう。じゃあ、行ってくるわ」
盗愛は自らの体を詰め込むようにして、窓口から中に入ろうとする。
平川盗愛「あ、あれ?」
しかし、中ほどで身動きが取れなくなった。
平川盗愛「ちょ、ちょっと手伝って!」
高木誘作「パンツ見えてるけど」
平川盗愛「そんなのいくらでも見ていいから、早く助けてよ!」
高木誘作「お似合いだよ」
平川盗愛「パンツの感想はいいって!」
高木誘作「いや、その無様な恰好がだよ」
平川盗愛「覚えておきなさい!」
誘作は盗愛を押し込んだ。
〇高層階の部屋(段ボール無し)
高木誘作「嘘だろ・・・」
平川盗愛「本当にこの部屋だったの?」
高木誘作「間違いない。そこにソファがあって、向かいにはテレビ」
高木誘作「俺はそのテレビを背にして話をしたんだ」
平川盗愛「でも今やもぬけの殻」
高木誘作「ええ? なんで?」
平川盗愛「あなたを騙すためだけにこの部屋を借りた。でももう用済みになったから引き上げた」
平川盗愛「そういうことでしょ」
高木誘作「始めから俺を貶めるために?」
平川盗愛「でしょうね。ひいては私をってことなんでしょうけど」
高木誘作「随分と手が込んでる・・・」
平川盗愛「だから言ったでしょ? おかしいって」
高木誘作「俺らの知らない誰かの仕業?」
平川盗愛「きっとそうね。樋口郷也でもない第三者」
平川盗愛「そいつが暗躍してる」
平川盗愛「ねぇ、あなたは誰からここに父の偽物がいるって聞いたの?」
高木誘作「懇意にしてる情報屋からだ」
平川盗愛「なるほど」
高木誘作「今後の予定は?」
平川盗愛「今できた」
平川盗愛「その情報屋に会いに行きましょう」
〇ビルの裏
情報屋「俺が誘作に嘘をついてるだって?」
情報屋「馬鹿言っちゃいけねぇよ。俺は誘作がおしめをつけてる時からの仲なんだぜ?」
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