エピソード3(脚本)
〇入り組んだ路地裏
高木誘作「まずは君が何者か聞こうかな」
平川盗愛「何者も何も、私は自分のことに関しては一つも偽ってないけどね」
平川盗愛「名前だって、ほら」
高木誘作「23歳って書いてあるけど」
平川盗愛「年齢に関しては何も言ってないでしょ。あなたが勝手に勘違いしただけ」
高木誘作「てっきり中高生くらいかとおもってた」
平川盗愛「よく言われる」
高木誘作「ティーンエイジャーかと思ったら、まさかアラサー手前とはね」
平川盗愛「それは言いすぎ」
高木誘作「ところで、どこ向かってるの?」
平川盗愛「落ち着いて話ができる場所よ。ついでに何か食べたいし」
高木誘作「まぁ、それは同感」
平川盗愛「よし、この店にしましょうか」
〇ラーメン屋のカウンター
ラーメン屋店主「いらっしゃいヨ」
平川盗愛「ラーメン二つ」
ラーメン屋店主「あい、わかたヨ。待ってるヨロシ」
平川盗愛「ええ、お願いね」
高木誘作「なんでこの店?」
平川盗愛「ラーメン嫌い?」
高木誘作「いや、そんなことはないけど」
平川盗愛「人目につかないし、外国人がやってる店の方が密談には向いてるのよ」
高木誘作「そう言うもんかね」
ラーメン屋店主「お待ち! ラーメン二丁!」
平川盗愛「ありがとう」
高木誘作「どうも」
「いただきます」
高木誘作「で?」
平川盗愛「でって?」
平川盗愛「ああ、胡椒いる?」
高木誘作「ありがとう」
高木誘作「ついでに、事情も説明してくれると助かる」
平川盗愛「昔は独特の匂いを消すために胡椒をかけたらしいけど、今は必要ないよう作られているみたいね」
高木誘作「いや、そっちの事情じゃなくてさ」
平川盗愛「ああ、そっち」
平川盗愛「どこから説明しようかしらね」
平川盗愛「私、泥棒なのよ」
高木誘作「へぇ」
平川盗愛「あんまり驚かないのね」
高木誘作「まぁね」
高木誘作「それで、なんで俺に接触したの?」
平川盗愛「私の泥棒の片棒を担がせるため」
高木誘作「ゲホッ! ゴホッ!」
平川盗愛「あーあーあー」
平川盗愛「ほら、水飲んで」
高木誘作「ぷはぁ」
高木誘作「・・・始めから俺を巻き込むつもりだったのか」
平川盗愛「そうよ」
高木誘作「そうよって・・・」
高木誘作「少しくらい悪びれたらどう?」
平川盗愛「騙し騙されのこの世界よ。あなただってそれは理解してるでしょう?」
高木誘作「まぁ、そりゃ」
平川盗愛「私がやろうとしてたことなんて、大したことない。日常茶飯事みたいなものよ」
高木誘作「具体的に何やろうとしてたの?」
平川盗愛「あなたに全部、罪を擦り付けるつもりだった」
高木誘作「どうやって」
平川盗愛「誘拐中、乗り込んできた輩と銃撃戦が始まる。私はその最中で死ぬの」
平川盗愛「事情を知らない者から見れば、あなたは私の仲間よ」
平川盗愛「私がいないとなったら、残るあなたは窃盗の主犯になる。そういう寸法よ」
高木誘作「死ぬつもりだったってこと?」
平川盗愛「フリよ。あなたを囮に高飛びするつもりだった」
高木誘作「無茶苦茶だね。成功するとでも?」
平川盗愛「そのためのお膳立ては整ってた。あなたがそれを台無しにしたけど」
高木誘作「俺は間違い電話しただけだよ?」
平川盗愛「それが問題だったのよ」
平川盗愛「本来なら雇った劇団に繋がるはずだった」
高木誘作「劇団?」
平川盗愛「裏稼業相手に一芝居打ってくれる役者連中がいるのよ。通称、劇団」
平川盗愛「本来は、暴力団なんかに目をつけられた一般人を助けるための人たちなんだけど」
平川盗愛「時代なのか、今では金さえ積めば誰でも雇えるわ」
高木誘作「なるほどね」
高木誘作「その人たちと共謀して俺を嵌めようとしたんだ」
平川盗愛「その通り」
平川盗愛「目くるめくカーチェイスに銃撃戦」
平川盗愛「その最中に非業を死を遂げる、哀れな私」
平川盗愛「感動の台本だったのよ?」
高木誘作「だろうね。俺もきっと泣いてたさ、別の意味で」
平川盗愛「ま、何にせよそれは全部ご破算になったわけだけど」
平川盗愛「店長! おかわり!」
ラーメン屋店主「はいヨ!」
高木誘作「あ、俺も」
ラーメン屋店主「かしこまりネ!」
高木誘作「だけど考えてみりゃ、君の言う通りにはなってる。もしかして計画は進行中だったんじゃないか?」
平川盗愛「まさか。シナリオにない点が多すぎる」
平川盗愛「それに乗り込んでくる輩も、あんなにいないはずよ」
高木誘作「でも、俺を囮にってことは初めから誰かに狙われることがわかってたんだろ?」
高木誘作「先を越される可能性は考えなかったのか?」
平川盗愛「あんなに早く居場所がバレるとは思わなかったの」
高木誘作「君の計画ではどうなっていたのさ」
平川盗愛「GPSよ。それで私の居場所が常にわかるようになっていた」
高木誘作「それで、早々に乗り込んで銃撃戦」
平川盗愛「あらかじめ待機していることになっていたのよ」
高木誘作「待機していた人たちはどうなったの?」
平川盗愛「知らないわよ。それどころじゃないし」
高木誘作「何か引っかかるの?」
平川盗愛「なんで、わざわざ父のフリをしたのかしら」
平川盗愛「確かにビビったけど、それ以上に効果ある?」
高木誘作「逆探知で場所を探ったのかも」
平川盗愛「まぁ、可能性はゼロじゃないわね」
ラーメン屋店主「へい、お待ち!」
高木誘作「どうも」
平川盗愛「ありがとう。でもそれじゃあ寿司屋よ」
ラーメン屋店主「ニポン人、みんな言ってると思ったヨ」
平川盗愛「勉強になったわね」
高木誘作「もう一つだけ聞きたい」
高木誘作「君はいったい何を、誰から盗んだの?」
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洒落た感じで、とても面白いです!!
台詞が粋ですね👍
伊坂幸太郎的な二転三転がありますね。
ウェストレイクは小説の方はよく知りませんが、映画だと「ホット・ロック」「ペイバック」好きでした。
誘拐プランナーという設定も斬新です‼
中華のオジサンは私も「アルよ」とか喋らせた事ありますww イメージしちゃいますよね😄