〇学校脇の道
中川大輔（もう真っ暗だな、さっさと帰らないと）
中川大輔（ん？前から誰か来るぞ・・・・・・）
口裂け女？「ねぇ」
中川大輔「はい？」
口裂け女？「私、綺麗？」
中川大輔「え？」
中川大輔「あ、ああ、すっげぇ美人だと思うぜ」
口裂け女？「これでも？」
中川大輔「これで・・・・・・？」
中川大輔（マスクに触って・・・・・・まさか!?）
中川大輔「く、口裂け女!?」
中川大輔（よく見たら刃物も持ってやがる・・・・・・!?）
口裂け女？「あなたも私と同じにしてあげる」
中川大輔「う・・・・・・」
中川大輔「うあああぁぁぁっっっ!!!」

〇教室
中川大輔「──それで俺は、命からがら逃げ出したってわけだ」
岸本怜奈「へぇ、そんなことがあったんだ、怖いねぇ」
岸本怜奈「それよりさ、学校前に定食屋さんが出来たじゃん？一緒に食べにいこうよ」
中川大輔「おい！真面目に答えろ！」
岸本怜奈「うんうん、面白かったよ」
中川大輔「俺の通学路に口裂け女がいるんだぞ！」
岸本怜奈「わかったわかった、怖い怖い」
中川大輔「俺は大真面目に話してるんだ！口裂け女がいたんだ！」
岸本怜奈「えっ、今の作り話じゃないの？」
中川大輔「ああ！」
岸本怜奈「そういうのいいから〜」
岸本怜奈「いくら私が心霊とか怪異が好きだからって」
岸本怜奈「そんな嘘くさい話されても嬉しくないよ？」
中川大輔「嘘じゃねぇ！」
中川大輔「見たんだ！口裂け女！」
岸本怜奈「大輔くん、口裂け女なんて怪異はいないんだよ」
中川大輔「今まで他の怪異はいただろ！なんで口裂け女がいねぇんだよ！」
岸本怜奈「調べたから」
岸本怜奈「一説によれば、口裂け女は整形手術に失敗した恨みで人を襲ってる」
岸本怜奈「でも、私の調べた限りはそんな手術は存在しなかった」
中川大輔「隠蔽されたのかもしれないだろ！」
岸本怜奈「じゃあさ、もし仮に口裂け女がいた所で」
岸本怜奈「噂通り100mを６秒台で走るなら、大輔くんは簡単に捕まってたよ」
中川大輔「そんなの噂だろ！俺は見たんだ！」
岸本怜奈「速くもなかったらもう怪異でも何でもないよ」
岸本怜奈「通り魔の口裂き女だよ」
岸本怜奈「とにかく、口裂け女って怪異はいないしいてもそれは人間だから！」
岸本怜奈「私じゃなくて警察にでも頼って！」
中川大輔「警察に相談しても信じてもらえねんだよ・・・・・・」
中川大輔「なあ・・・・・・頼むよ」
中川大輔「口裂け女の対策とか教えてくれよ」
岸本怜奈「ポマードとかべっこう飴とかあるけど・・・・・・」
岸本怜奈（多分相手は人間・・・・・・それも口裂け女の真似をしてる危険人物）
岸本怜奈「分かった、私も一緒に帰るよ」
中川大輔「わりぃな、怪異とかはお前の方が得意だからな」

〇学校脇の道
岸本怜奈（刃物も持ってたって話だから、何か武器を持っておかないと）
中川大輔「お、おい、そんな武器で戦うのか？」
岸本怜奈「リーチはあるから」
中川大輔「そんな──」
中川大輔「お、おい！何か来るぞ・・・・・・！」
口裂け女？「ねぇ、私綺麗？」
中川大輔「ふ、ふつ──」
岸本怜奈「綺麗じゃないですか？」
口裂け女？「ならお前も私と同じように──」
岸本怜奈「逃げるよ！」
中川大輔「は!?」

〇住宅街の公園
岸本怜奈「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
中川大輔「な、いたろ!?口裂け女！」
岸本怜奈「あの人・・・・・・マスク取らなかったね」
岸本怜奈「それに・・・・・・足も遅い」
岸本怜奈「いや、上手く走れてない」
岸本怜奈「・・・・・・・・・・・・」
岸本怜奈「正体は分かったよ」
口裂け女？「っ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
口裂け女？「っ・・・・・・逃げるな！」
岸本怜奈「ねぇ、あなたは口裂け女？」
口裂け女？「そう、・・・・・・私綺麗？」
岸本怜奈「綺麗だけど・・・・・・服見てみて」
口裂け女？「服・・・・・・？」
口裂け女？「っ・・・・・・!!!」
口裂け女？「砂で・・・・・・汚れて・・・・・・」
口裂け女？「き、汚い・・・・・・」
口裂け女？「く、口裂け女様の美しさが・・・・・・」
岸本怜奈「あなた、口裂け女じゃないよね？」
岸本怜奈「ただ口裂け女の真似をしてただけ」
口裂け女？「違う・・・・・・！私こそが口裂け女！」
岸本怜奈「じゃあマスクを取ってみせて」
口裂け女？「っ・・・・・・!!!」
岸本怜奈「その服装、見た目、随分口裂け女に憧れてたんだね」
岸本怜奈「でも、どんなに憧れていても、口を裂くなんて普通は出来ない」
口裂け女？「うるさいっ！私は口裂け女の美しさと恐ろしさを世に知らしめる！」
口裂け女？「そのクソ生意気な口を裂いて──」
口裂け女？「こ、この音・・・・・・!!」
中川大輔「ヤバい奴だったな・・・・・・」
岸本怜奈「憧れる気持ちは分かるけど、危害を加えちゃダメだよね」
岸本怜奈「初めて見たよ、口裂き女」