エピソード2(脚本)
〇廃ビルのフロア
高木誘作「じゃあ、早速始めよう」
高木誘作「携帯、借りるよ」
平川盗愛「うん。お願い」
平川組与「盗愛か? 何の用だ」
平川組与「仕事中はあまり電話してくるなと──」
高木誘作「もしもし」
平川組与「・・・誰だ」
高木誘作「始めまして誘拐犯です」
高木誘作「おたくの娘さんは預かった」
平川組与「・・・・・・」
高木誘作「返してほしければ、身代金を用意してほしい。金額は二千万」
平川組与「・・・そうか」
高木誘作「随分と落ち着いてるね。大抵のやつはまず金額にビビるんだけど」
高木誘作「それとも、自分のガキに興味ないとか?」
平川組与「・・・いや、唐突に言われても実感がわかないだけだ」
平川組与「本当に娘はそこにいるのか?」
高木誘作「ご尤も」
高木誘作「じゃあ、声を聞かせてあげよう。それで信じる気になる?」
平川組与「ああ」
高木誘作「盗愛ちゃん、電話だよ」
平川盗愛「うん」
平川盗愛「もしもし、パパ?」
平川組与「盗愛か?」
平川盗愛(誰? こいつ)
平川盗愛「う、うん。パパ、なんだね」
平川組与「そうだ。無事なんだな?」
平川盗愛「うん、大丈夫。今のところは」
平川組与「今、どういう状態なんだ? 教えてくれ」
平川盗愛「え?」
平川盗愛「・・・・・・」
平川盗愛「椅子に縛り付けられている。スマホは誘拐犯が持ってるの」
平川組与「身動きが取れないんだな?」
平川組与「場所は?」
平川盗愛「場所は、その・・・」
高木誘作「おっと、そこまでだ」
高木誘作「返してほしくば、指定の場所に金を置く」
高木誘作「そうしたら娘さんは無事に家に帰ってくる。そういう段取りだ」
高木誘作「約束を破れば娘は死ぬ。もちろん、警察に通報しても娘は死ぬ」
高木誘作「いいな?」
平川組与「ああ。わかった」
高木誘作「一時間後にまた電話する。その時に進捗を聞かせてくれ」
高木誘作「あんたに少しでも親としての心があることに期待してるよ」
高木誘作「じゃあ」
高木誘作「これで、しばらくは待ちだね」
平川盗愛「・・・ねぇ、誘拐屋さん」
高木誘作「ん?」
平川盗愛「あなたいったい誰に電話したの?」
高木誘作「誰って、君のお父さんだよ。それ以外にある?」
平川盗愛「でも、全然違う声だった」
高木誘作「・・・え?」
平川盗愛「電話番号も私の教えたやつじゃなかったよね?」
高木誘作「う、うん。本人にこっちにかけてくれって」
平川盗愛「・・・本人?」
高木誘作「あ、あー・・・」
高木誘作「実は直接君のお父さんに会ってるんだ。それで今回のことを伝えていて──」
平川盗愛「・・・そんなはずないよ」
高木誘作「な、なんで?」
平川盗愛「私のお父さんもう亡くなってるから」
高木誘作「ええ!」
平川盗愛「誰かが私のお父さんのフリをしている」
平川盗愛「ねぇ? 本当に誰に電話したの?」
高木誘作「・・・嘘じゃないんだね?」
平川盗愛「・・・うん」
高木誘作「あー、どちら様?」
高木誘作「盗愛ちゃんのご家族?」
平川盗愛「そう見える?」
高木誘作「少なくとも円満な家庭には見えないな」
高木誘作「夕飯の席で死体とか出来上がりそう」
平川盗愛「実際、食えない奴らね」
高木誘作「そういう君も食わせ者だけどね」
高木誘作「うわぁ! 遠慮ない!」
平川盗愛「ちょ、ちょっとまってよ。置いてかないで!」
高木誘作「ああ、くそっ!」
誘作は盗愛を縛っている椅子ごと抱えて走り出す。
近くの物陰へと飛び込んだ。
その間にも、間断なく銃撃は続く。
高木誘作「何がどうなってるんだ・・・」
高木誘作「ひぃ!」
平川盗愛「このままじゃやられるだけね」
平川盗愛「誘拐屋、私を解いて」
高木誘作「あ、ああ。そうだな、そうだよな」
誘作は言われるがまま、盗愛を縛っていた紐を解いた。
平川盗愛「ありがとう。それじゃあ早速、反撃開始しましょう」
高木誘作「は、反撃?」
高木誘作「・・・ええ? なにそれ?」
平川盗愛「行くわよ!」
盗愛の放った弾丸は明後日の方向へ飛んでいった。
平川盗愛「結構、難しいわね」
高木誘作「そんなものどこで・・・」
「えっ!」
高木誘作「くっそ! なんでこうなった!」
平川盗愛「それは後にしましょ」
平川盗愛「はいこれ」
高木誘作「なにこれ?」
平川盗愛「あなたの分。こんなこともあろうかと」
高木誘作「どういう想定?」
高木誘作「っていうか本物?」
平川盗愛「イエスかノー。答えはどちらがお好み」
高木誘作「えっと、じゃあノーで」
平川盗愛「なら、安全だから人に向けて撃って」
高木誘作(その行動が安全とは言えないんじゃあ・・・)
高木誘作「じゃあ、イエスだったら?」
平川盗愛「安全のために人に向けて撃って」
高木誘作「んな無茶苦茶な」
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