エピソード6(脚本)
〇田舎の病院の病室
朝倉 霞「ねぇ、陸くん・・・。目、覚ましてくれませんか?陸くんの大好きなカレーも作っているんです・・・」
朝倉 霞「ごめん・・・なさい・・・。あの時あの場所に私がいなかったらこんな事には・・・うぅ・・・」
気がつくと、見知らぬ病院にいた。俺はベッドに寝かされており、何処か見覚えのある女の子が泣きながら俺の手を握っていた
阿良 陸「これはどういうことなんだ?俺が二人?」
阿良 陸「あの子は・・・確か・・・」
ぼやけた記憶の中であの子の名前を思い出そうとするがあと少しの所で出てこない
阿良 陸「ねぇ、君は一体誰なんだ?」
女の子に話しかけたいのだが、空を切ったように通り抜けてしまって触れられない
朝倉 霞「陸くん、今日はですね。家庭科の授業でカレーを作ったんです!先生にも褒められるほどに美味しいカレーが出来たんです!」
寝ている俺に必死に話しかけており、真横に立っている俺には気づいてくれない
阿良 陸「なぁ・・・お前は誰なんだよ・・・気づいてくれよ・・・」
必死になって別々の人物に話しかけ続ける、そんな事が10分ほど続いた
朝倉 霞「・・・。また明日来ますね。あと一ヶ月で体育祭があるんです」
阿良 陸「・・・体育祭、行きたいな」
朝倉 霞「陸くんのリレー観たいです。起きてくれると嬉しいと思います。最終ランカー未だに決まって居ないんですよ」
阿良 陸「リレー・・・ランカー・・・走りたいな」
阿良 陸「なんか最近走ってないや」
体育祭、その言葉を聞いて自然と言葉が漏れ出てくる
朝倉 霞「・・・また明日、おやすみなさい」
女の子はそういうと握っていた手を離し病室から出ていくのだった
阿良 陸「あ・・・行ってしまった。俺と仲の良い子なのかな・・・」
阿良 陸「一体何があったんだろうか・・・」
周りを探してみようと見渡すと様々な物が置いてあった。花に果物に色紙に折り鶴。そしてカレー
阿良 陸「美味しそうなカレーだな、あれ?」
食べようとスプーンに手を伸ばす、しかしながら取ることは出来ず、すり抜けた
阿良 陸「触れない・・・まるで幽霊になってしまったみたい」
そんな事はないと其処らじゅうを手当たり次第に触る
手触りを感じれるものがあった。
阿良 陸「これは・・・あの時の」
一番最初にあの部屋で見た物と全く同じ物に見え手を伸ばすと取ることが出来た
阿良 陸「これだけは触れられるのか!開いてみよう!!」
阿良 陸「”見つけれたみたいで良かった。これで一つ目クリアだね。私の力が足りなくてこんな形でしか話すことが出来なくてごめんなさい”」
阿良 陸「”私は阿良くんを現世に戻したい。その為なら・・・朝倉霞より”」
阿良 陸「朝倉先輩?!」
手紙に書いてあった文章の最後の文、掠れていて読めなかった所があったが俺はそれどころではなかった
朝倉先輩。何で先程迄忘れていたのだろうか!先程まで泣いていた人物、朝倉霞さん。その人は!!
現在生徒会長をしている学年の人気者!ファンクラブがある程の人気で総勢五十人は超えている。因みに俺は002番である
小柄な体型とツンデレ、それに加えて聡明さ、運動神経抜群な最高に可愛い人なのである
阿良 陸「やばい!!あの朝倉先輩が俺のお見舞いに!?」
阿良 陸「泣かせていた人が俺で、それも朝倉先輩を忘れていただなんて・・・」
阿良 陸「飛んだ失態を侵してしまっている・・・もんだろ!!」
阿良 陸「それにしても、嬉しいなぁ〜朝倉先輩がおれのお見舞い!!起きろよー俺ー!!」
阿良 陸「あの先輩が俺のお見舞いに来てたんだぞ!起きるっきゃないだろうよー!!」
触れられない自分(寝てる方)に喜怒哀楽ぐちゃぐちゃになりながら話続ける俺が其処にはいた
阿良 陸「────ふぅー、漸く落ち着いた」
何分はしゃいでいただろうか。テンションあがりまくった俺は体力疲れで物事を考え始めた
阿良 陸「にしても、手紙の主が朝倉先輩だったなんてなぁ〜」
阿良 陸「現世に戻したいって・・・肝心な所がどうやっても読めないんだけど他に何かあるかな」
手紙をひっくり返してみたりしながら探していると小さなカケラのようなものが出て来た
阿良 陸「ん?これは何だ?」
阿良 陸「凄く綺麗なものだけど何でだろう・・・あんまり近寄りたくない代物だな」
阿良 陸「宝石か何かか?」
調べる為には隅々まで観察するしかない。宝石を手に取り目元まで寄せた時、何かが見えた気がした
阿良 陸「あれは・・・朝倉先輩?」
さっきまで忘れていたが、俺は朝倉先輩を見間違える事なんてそうは無い。よくよく見ようと宝石に顔を近づけたその時だった
目の前を光の花が覆い尽くしたかと思えば、視界がブラックアウトしたのだった
〇殺風景な部屋
一方その頃、陸の記憶部屋では──
天使 リスタ「陸・・・」
ヌイ「あの・・・リスタ」
天使 リスタ「何?ヌイ」
ヌイ「当初の問題教えてもらってもいいかしら」
ヌイ「何で死神の真似事を天使である所のリスタがしてるの?」
天使 リスタ「・・・。それが、気づいたら身体が勝手に動いていて絶対に渡したく無いって思ったんだよ・・・」
天使 リスタ「こんな所に居るはずのない人が来てるって・・・」
ヌイ「それでサランさんの担当だった阿良さんを衝動的に奪い取ったとそういうことかしら」
天使 リスタ「そうみたい・・・でも最初は陸のこと覚えていなかったんだ・・・」
天使 リスタ「ただ陸の家に行った時、私、この家知ってた」
天使 リスタ「それで・・・調べたんだ」
天使 リスタ「合間を盗んだりして、問い詰めたりしてね」
天使 リスタ「そしたら衝撃の事実が分かったんだよ」
ヌイ「何かしら?」
天使 リスタ「私この人、阿良陸の・・・”義理の妹”なんだって事が」
ヌイ「妹!?それも義理の!?」
天使 リスタ「そうみたい・・・小学校、何年生だったけな。この家に母親と来たみたい。再婚でね」
天使 リスタ「小さい頃から身体が弱かった私は中学1年生の時に死んじゃったみたいだけども」
天使 リスタ「陸、いつも病院来てくれたみたいで」
ヌイ「優しかったのね、良かったわね」
天使 リスタ「うん、だから」
天使 リスタ「こんなに早く再開するなんて思わないじゃん。だからこそ・・・僕は死神から奪ってやったんじゃないかなって僕はそう思ってる」
ヌイ「・・・。運命付けられたのいつかしら」
天使 リスタ「え・・・!?」
ヌイ「死神サランと契約したのいつか分かったら変えられるかも知れない・・・そうは思わないかしら?」
天使 リスタ「そっか!!契約内容はまだ分からないけど、戻れる可能性は十分あるんだ」
天使 リスタ「陸・・・今何やっているんだろ」
ヌイ「長いわね・・・」