コレクトコール

makihide00

後編(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
リコ「おはよう」
リコ「朝ごはんできてるよ」
  オレたちが結婚して四年が経った
ヒロト「おはよう」
ヒロト「いい匂いがすると思ったら味噌汁か・・・」
リコ「たまには朝から和食もいいかなって・・・ 休日で時間もあったし」
  リコは家庭に入り、
  本当によくオレを支えてくれている
リコ「そういえば、おとうさんの一周忌、 段取りはじめないとね」
ヒロト「そうか、もうそんなになるか・・・」
  一年前、突然オヤジが亡くなった
  そして、一人息子のオレには
  それなりの額の遺産が入った
ヒロト「このマンションが買えたのも、 ある意味オヤジのおかげだもんな」
リコ「そうね・・・」
リコ「私、ちょっとジム行ってくる」
ヒロト「朝から?」
リコ「朝早く行かないと、昼間は混むのよ」
リコ「ヒロくんは朝ごはん食べて・・・ ゆっくり休んでて」
ヒロト「うん、わかった」
ヒロト「いってらっしゃい」
リコ「うん、いってきます」
リコ「・・・ねぇ」
リコ「味噌汁、おいしい?」
ヒロト「うん、おいしいよ」
リコ「そう・・・よかった!」
リコ「じゃあ・・・行くね」
ヒロト「休みの日の朝ぐらい ゆっくりすればいいのに」
ヒロト「・・・ん!味噌汁うまい!」
ヒロト「電話?」
ヒロト「でも・・・オレのスマホじゃない」
ヒロト「・・・リコ、スマホ忘れてんじゃん」
ヒロト「で、誰からの電話?」
ヒロト「・・・おかしいな」
ヒロト「電話はかかってるのに、 相手の名前も番号も出てない」
ヒロト「どういうことだ?」
ヒロト「・・・出てみるか」

〇黒
「・・・もしもし?」
「そろそろかなと思って、 電話したんだけど・・・」
「うまくやれた?」

〇おしゃれなリビングダイニング
ヒロト「・・・リコ?」
ヒロト「なに言ってんの?」
「え!ヒロくん!?」
「いや、あの・・・あ!そうだ!」
「・・・味噌汁、おいしい?」
ヒロト「え?」
ヒロト「すごくおいしいよ」
「そう!よかった・・・」
ヒロト「・・・なんなの? それ、さっきも聞いたじゃん」
「あれ?そうだったっけ?」
「もう忘れちゃったよ」
「・・・一年も前のことなんて」
ヒロト「は?リコ、なに言って・・・?」
「味噌汁を飲んだなら 大丈夫そうだから教えてあげるね」
「私、一年後のリコよ」
ヒロト「・・・え」
「ずっと過去の私と こうやってやり取りしてたの」
「自分の番号10回タップ・・・知ってる?」
ヒロト「・・・知ってる」
「え!知ってるの!」
ヒロト「ずっと前に一回試してダメだったけど」
ヒロト「ガセネタじゃなかったのか・・・」
「そう、知ってるんだ・・・」
「でも、神様も粋なはからいするわね」
「まさか一年後に時間差で 最期の会話ができるなんて」
ヒロト「・・・どういうことだ?」
「きっと、すぐにわかるわ」
「じゃあ、今から一周忌の法事だから」
ヒロト「いや、法事は今度だろ? オヤジの──」

〇おしゃれなリビングダイニング
  その言葉と一緒に、
  オレの胃の中のものはすべて吐き出された

〇黒
「・・・なにを入れた?」
「味噌汁にいったいなにを入れたんだ!?」
  かすむ視界の中で放った叫びに
  応える者は誰もいない
  そういうことだったのか
  最初からオヤジの
  遺産が入ることがわかってて・・・
  あの日、ヨリを戻したのも
  未来のリコが過去に電話して・・・
  過去に電話──

〇黒
「ハァ・・・ハァ・・・」
  助かるには、もうこれしかない
  過去を変えれば、未来は──
「1,2・・・3・・・」
「4,5,6・・・うっ・・・7,8,9・・・」
「10!!」
「か、かかっ・・・」
「出ろ!いつのオレでもいいから出ろ!」

〇黒
「・・・もしもし?」
「・・・」

〇ホテルの部屋
ヒロト「・・・あれ? なんでオレのスマホ持ってんの?」
リコ「うん・・・ずっと電話鳴ってたから」
ヒロト「誰からの電話?」
リコ「・・・間違い電話」
リコ「荒い息づかいでワケわかんないこと言って そのうち黙っちゃって・・・」
リコ「酔っ払いじゃない? ・・・今のヒロくんみたいに!」
ヒロト「しょうがないじゃ〜ん みんな飲ませるんだも〜ん」
ヒロト「・・・なぁ」
ヒロト「いい結婚式だったな」
リコ「・・・そうだね」
ヒロト「あ〜、でも疲れた」
ヒロト「・・・そろそろ、寝ようか」
リコ「・・・うん」

〇ホテルの部屋
「ねぇ、ヒロくん、私ね・・・」
「あなたとなら絶対に幸せになれると思う」

〇黒
「さっきの電話で、確信したわ──」
  完

コメント

  • うおお! なんかあやしいなーと思っていたら、まさかこうくるとは!
    いやー、悪い人ですねー( ;∀;)

  • 過去の自分に電話が繋がる……コレを試したのは主人公だけでなかった……何と巧みな物語展開、読み進めて何度も背筋がゾワゾワとしました…

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