第4話:踏み出す勇気(脚本)
〇学校の屋上
岡田大地「・・・」
岡田大地「──ん?」
伏見晃「よう、大地」
岡田大地「晃じゃないか」
伏見晃「また眞鍋たちにいじめられているんだろう?」
伏見晃「あまり力になれなくてすまん。あいつら見えないところで悪さするから・・・」
伏見晃「横入りしたくてもいつもうまくいかん・・・」
岡田大地「そう言ってくれるだけでもうれしいよ」
岡田大地「前は苦しいだけだったけど、最近力になってくれた人がいてさ」
僕は晃に橋の上から飛び降りかけた出来事を話した。
伏見晃「ばかっ!! そんなことしたらだめだろうが!!」
伏見晃「でも、柳原が介入してくれてよかったよ」
伏見晃「お前がいなくなるなんてごめんだからさ・・・」
岡田大地「いきなりこんなこと言ってごめんよ・・・」
岡田大地「でも、変わったんだ。いつまでも、眞鍋たちに従うのは違うよなって・・・」
岡田大地「眞鍋に反抗するのはとても怖いんだけど、でも許せないところがあるから・・・」
伏見晃「大地・・・」
岡田大地「だから、今度はちゃんといやだってことを言えるようにしようと思うよ」
伏見晃「強くなったな、大地」
伏見晃「大地の口からその言葉を聞けて、俺は嬉しいぜ」
岡田大地「そんなおおげさな」
伏見晃「いやいや、すごいって。眞鍋のしてきたことを考えると、大地は強くなったと思うよ」
伏見晃「誰もが這い上がるなんてできないんだぞ」
岡田大地「うん、ありがとう」
伏見晃「おっ、そろそろチャイムが鳴るな。またなんかあったら、俺を呼ぶんだぞ」
岡田大地「分かった。いつもありがとう」
僕らは、この後それぞれの教室に戻っていった。
しかし、この後とんでもない事件が起きるとは誰も思わなかった。
〇屋上の入口
事件が起きる2時間前のこと・・・
眞鍋俊「──!!」
伊藤和也「やばいよ、この前から俊が不機嫌そうだよ・・・」
横田邦夫「そうだよな、急に邪魔者が入ったもんな・・・」
伊藤和也「岡田が最近登校し始めてから、あの女が割り込んできたよな」
横田邦夫「おかげで、いつものカツアゲができないし・・・」
眞鍋俊「許さねぇ・・・柳原──!!」
眞鍋俊「お前ら!!柳原をボコすぞ!!」
伊藤和也「えぇ、さすがに女相手はまずくない!?」
横田邦夫「俺たちですら手を出しにくいが・・・」
眞鍋俊「俺にいい考えがある、あいつにも協力してもらうからよ!!」
伊藤和也「あぁ、なるほどねww」
横田邦夫「それなら、いいかもしらないなww」
眞鍋俊「見てろよ、柳原。後悔させてやるぜww」
〇階段の踊り場
事件が起きる15分前のこと・・・
津田薫「・・・」
津田薫「(俊に頼まれたけど、例の子はどこかしら?)」
津田薫「(あっ、いた!!)」
原美咲「香澄ちゃん、知ってる?この間、新しいクレープ屋ができて~」
柳原香澄「聞いたことある!!近くのデパートの中に開店するんだよね!!」
柳原香澄「県外にしかなかったから、近くで食べられるの楽しみだよ~」
原美咲「そうだよね~、あのクレープ屋おいしそうだもんね~」
原美咲「さっそく今日の放課後に食べにいく?」
柳原香澄「ごめん、今日はきついかも・・・」
原美咲「そうなんだ、残念・・・」
原美咲「先週からあまり遊べていなかったけど、何かあったの?」
柳原香澄「実はね・・・」
美咲ちゃんに岡田くんのことを話した。最近岡田くんのことをかばっていたんだ。
眞鍋くんのいじめがあまりにもひどいから、何とか出処を掴めて”あの時”の恩返しを今度こそやらなきゃって始めたんだ。
でも、美咲ちゃんの誘いを断るのも申し訳ないから、言うしかないよね・・・
原美咲「えぇ、橋から飛び降りようとしたの!?」
柳原香澄「声が大きいって!!」
原美咲「ごめん、でもそれはひどいよ・・・」
原美咲「眞鍋くんのせいで自分を追い込むなんて・・・」
柳原香澄「うん、私もそう思ったんだよね・・・」
柳原香澄「どんなに悲しいことがあっても、命は大事だからね・・・」
原美咲「香澄ちゃん・・・」
原美咲「これからいい方向に進むといいね・・・」
原美咲「あっ、そろそろチャイム鳴るね」
原美咲「落ち着いたら、今度こそクレープ屋行こうね~」
柳原香澄「うん、ありがとね~」
柳原香澄「できたら、”例の人”の話も聞きたいしww」
原美咲「いやいや、伏見くんはそんなんじゃないし~!!」
原美咲「からかいすぎだよ~」
柳原香澄「ごめんごめん、またね~」
原美咲「またね~」
柳原香澄「・・・」
柳原香澄「(ん?あれって、岡田くん?)」
岡田大地「・・・」
柳原香澄「(やっぱり!!)」
柳原香澄「(ちょっとだけ挨拶しようかな)」
???「ちょっと待ちなさいよ」
柳原香澄「だれ!?」
津田薫「あんたが柳原香澄ね?」
柳原香澄「な、なに?何の用よ?」
津田薫「あんた、人助けしていい気になってるけど、例の陰キャくんはどうなのかしらね?」
柳原香澄「何が言いたいの?」
津田薫「陰キャくんの岡田があんたに助けられて迷惑か考えたことないの?」
津田薫「クラスの人気者みたいだけど、正義感のためじゃなくて注目浴びたいだけじゃないの?」
柳原香澄「違う、そんなことないよ!!」
津田薫「そんな言い訳ムリでしょww 陰キャくんは柳原に構われて羨ましいねww」
柳原香澄「あなたね──!!」
津田薫「それとも、あんた。あの陰キャくんに惚れちゃったの??」
柳原香澄「──!?」
津田薫「図星だww あいつのどこがいいわけ?」
津田薫「かっこよくないし、おどおどしてるしww」
津田薫「見ていてイライラするだけなのに、何がいいのやらww」
柳原香澄「ふざけないでよ!!」
津田薫「は?」
柳原香澄「岡田くんのこと何も分かってないくせに──!!」
柳原香澄「岡田くんがどんな思いしているのか想像できないわけ!?」
津田薫「別にどうでもいいじゃん!!」
津田薫「想像したところで何になるっていうのよww」
柳原香澄「──!!」
津田薫「昔からあんたの”偽善”が気に入らないんだよ!!」
津田薫「調子乗らないでくれますか~ww」
柳原香澄「黙って聞いていれば──!!」
???「柳原さん!! どうしたの!?」
柳原香澄「岡田くん!?」
津田薫「ちっ!!面倒だわ!!」
柳原香澄「きゃっ!?」
津田薫「邪魔よ!! あんたがどかないから──!!」
津田薫「私は知らないからね!!」
柳原香澄「──!!」
私はこの時何が起きたか一瞬分からなかった・・・
津田さんがいきなりぶつかってくるから、よく状況が分からなかった・・・
でも、最悪なことが起こっていることはすぐに気づいた。
でも間に合わない──!!
体が上手く反応しない──!!
柳原香澄「(もう、だめ・・・)」
???「柳原さん!! 掴まって!!」
柳原香澄「──!?」
〇階段の踊り場
事件が起きる5分前のこと・・・
岡田大地「・・・」
岡田大地「(そろそろ教室行かないと)」
岡田大地「(あれっ?柳原さん?)」
岡田大地「(せっかくだし、ちょっと声かけようかな)」
???「昔からあんたの”偽善”が気に入らないんだよ!!」
???「調子乗らないでくれますか~ww」
???「黙って聞いていれば──!!」
岡田大地「柳原さん!! どうしたの!?」
岡田大地「──!?」
最初は目を疑った・・・
柳原さんが突き飛ばされたなんて、信じたくなかったから・・・
でも、この瞬間だけなぜか”世界”はゆっくりに見えたんだ。
これは助けろって”タイミング”なのか?
だとしたら、これが最後の”チャンス”か?
もう迷わない!!
僕はこれ以上失いたくないんだ!!
岡田大地「(届け!!)」
岡田大地「柳原さん!! 掴まって!!」
???「きゃあ!! 人が落ちた!!」
???「まずくねーか、あれ!?」
???「先生を呼んで!! 早く!!」
がむしゃらに駆け出したのは初めてだ・・・
でも、よかった。間に合った・・・んだよね?
柳原さんが無事ならいいや・・・