〇警察署の医務室
岡田大地「・・・」
岡田大地「（あれ？ここは？）」
岡田大地「（僕は何してたんだっけ？）」
？？？「・・・だ・・・ん・・・」
岡田大地「??」
？？？「・・・かだ・・・ん・・・」
？？？「岡田くん──!!」
岡田大地「!?」
岡田大地「柳原・・・さん？」
柳原香澄「よかった、もう目を覚まさないかと・・・」
柳原香澄「でも、危ないよ!!なんて無茶するの!!」
岡田大地「ごめん、でも・・・」
柳原香澄「でも??」
岡田大地「やっと”救えた”と感じたんだ」
柳原香澄「それでも無茶だったよ・・・」
柳原香澄「でもありがとう、また助けられたね」
岡田大地「うん、もう失いたくないと思ってさ」
岡田大地「それに、今度はいけそうな気がしてて」
岡田大地「これで後悔することはなさそうだよ」
柳原香澄「岡田くん・・・」
岡田大地「そういえば僕に用があったみたいだけど、何かあったの？」
岡田大地「ちょうど僕も声かけようと思ってたし」
柳原香澄「あぁ、えっと・・・その・・・」
柳原香澄「（さっきまで忘れてたけど、津田さんに言われたことを思い出しちゃった──!!）」
柳原香澄「えっと、いやぁ、なんていうか・・・」
柳原香澄「特になんでもなかったの!! まぎらわしいこと言ってごめん!!」
岡田大地「あっ、ちょっと!!」
岡田大地「何だったんだ、一体??」

〇郊外の道路
柳原香澄「──!!」
柳原香澄「（思い出しただけでも、恥ずかしい──!!）」
柳原香澄「（やっぱり、岡田くんのこと・・・）」
柳原香澄「（・・・好きなのかな？）」
柳原香澄「（でも急に飛び出したのやっぱり失礼だったよね？）」
柳原香澄「（はぁ、悪いことしたな・・・）」
柳原香澄「（とりあえず、明日謝ろう!!）」
柳原香澄「（ちゃんと話せば、分かってくれるよね？）」
柳原香澄「（暗くなってきたから、近道して帰ろう）」

〇ビルの裏通り
柳原香澄「通る道間違えちゃった・・・」
柳原香澄「早めに抜けなきゃ」
？？？「待てよ──!!」
柳原香澄「──!?」
柳原香澄「誰!?」
眞鍋俊「最近はよくも邪魔してくれたな──!!」
眞鍋俊「しかも怪我せずにのこのこ出てくるとか、腹立つわ!!」
柳原香澄「まさか、津田さんの狙いはあなたのせいね!?」
眞鍋俊「津田の突き落としは偶然らしいが、まあ俺の指示よ」
眞鍋俊「でもなあ!!あのまま階段から落ちてくれれば清々したのによ!!」
眞鍋俊「おめぇが岡田のことをかばうからよ、俺たちが動きにくいじゃねぇかよ──!!」
伊藤和也「ちょ、俊!!さすがに柳原に手を出すのはやめようぜ!!」
横田邦夫「そうだよ、最近先公の警戒が厳しいし・・・」
眞鍋俊「るせぇ!! こいつを潰さないと気がすまねぇんだよ!!!!」
伊藤和也「（おいおいまじかよ!?）」
横田邦夫「（もう終わりだ・・・）」
眞鍋俊「覚悟しろよ──!!」
柳原香澄「うそっ、そんな──!?」
柳原香澄「（誰か、助けて──!!）」
眞鍋俊「おるぁあ!!!!」
柳原香澄「（もう・・・だめ・・・）」
？？？「やめろよ──!!」
柳原香澄「えっ!?」
眞鍋俊「はぁ!?おめぇは──!!」
岡田大地「──!!」

〇学校の裏門
　　僕が柳原さんと会う１時間前の出来事だ。
岡田大地「──!!」
岡田大地「まだ・・・体が痛いけど・・・探さなくちゃ・・・」
？？？「大地??」
岡田大地「晃!!」
伏見晃「お前、怪我して保健室にいたろ？ もういいのか??」
岡田大地「まあ、なんとか、ぐっ──!!」
伏見晃「無茶すんなよ──!!どうしたんだよ!?」
岡田大地「実は、柳原さんを探しているんだ・・・」
岡田大地「どこかへ行っちゃったみたいで・・・」
伏見晃「探すって言ったって、まだ怪我治ってないんだろ？」
伏見晃「その体じゃ無理だ・・・」
岡田大地「それでも・・・柳原さんを追いかけないと・・・」
岡田大地「今追いかけないと、ダメなような気がしていて・・・」
伏見晃「しょうがないな・・・」
伏見晃「うろ覚えだけど、向こうに走っていったのを見たぞ」
岡田大地「本当に??」
伏見晃「ああ、たぶんな」
伏見晃「ただ、無茶だけすんなよ」
伏見晃「何かあれば、連絡いれるんだぞ」
岡田大地「うん、分かった」
岡田大地「ありがとう、晃」
伏見晃「気をつけろよ、大地」
　　こうして、僕は急いで柳原さんのところへ向かったんだ。
　　何とか間に合ってくれ・・・
　　今度も助けるからさ──!!

〇ビルの裏通り
岡田大地「──!!」
　　よかった、何とか間に合った──!!
岡田大地「柳原さんから、離れてよ!!」
眞鍋俊「てめぇ、俺に歯向かう気か──!!」
眞鍋俊「お前も気に入らなかったからよ、消えろよ──!!」
伊藤和也「あっ!!」
横田邦夫「ちょっ!!」
　　眞鍋の拳が僕の顔に向かってきている・・・
　　以前の僕なら、やられて終わりだった・・・
　　でも・・・
　　”今”はちがう──!!
眞鍋俊「なっ!?俺の拳を抑えてる!?」
岡田大地「いい加減にしなよ!!」
眞鍋俊「るせぇ──!!」
　　また殴ってきた。
　　でも、大丈夫。パターンは掴んできたから。
眞鍋俊「がぁっ!?」
眞鍋俊「なんだと!?」
岡田大地「もう暴れないなら手離すけど」
眞鍋俊「てめぇの言う通りになんか・・・」
岡田大地「やめてよね!!」
岡田大地「僕が傷つくだけならよかったけど、他人を巻き込まないでよ!!」
岡田大地「もうこれ以上傷つく人を増やしたくないんだ!!」
眞鍋俊「なんだと・・・いででででで!!!!!!」
岡田大地「もういいだろ──!!」
眞鍋俊「分かった、分かったよ!!許してくれよ!!」
岡田大地「──!!」
眞鍋俊「うぅ、いでぇえ──!!」
伊藤和也「おい、大丈夫かよ・・・??」
横田邦夫「これ以上はやめようぜ・・・な??」
眞鍋俊「・・・」
眞鍋俊「くそがぁぁあ!!!!!!」
伊藤和也「おい、俊!!」
横田邦夫「だめだ、俊!!」
眞鍋俊「覚悟しろよ──!!」
岡田大地「──!?」
　　ナイフを持ってる!?
　　まずい、このままだと柳原さんも巻き添えになる・・・
　　ここは彼女だけでも守ろう!!
眞鍋俊「うわっ!?」
岡田大地「──!?」
？？？「大丈夫だったか??」
岡田大地「晃!!」
伏見晃「間に合ってよかった」
岡田大地「さっきの野球ボールで当てたのか!?」
岡田大地「でも、助かったよ・・・」
伏見晃「ちょうど警察も呼んでるから、後は任せな」
伏見晃「柳原さんのとこに行ってやりな」
岡田大地「うん、ありがとう!!」
伏見晃「さてと、お前らは覚悟できてるんだろうな──!!」
眞鍋俊「──!!」
伊藤和也「そ、そんな・・・」
横田邦夫「僕らは見てただけなのに・・・」

〇公園のベンチ
岡田大地「大丈夫だった？いてて・・・」
柳原香澄「また、無茶して──!!」
柳原香澄「もう心配したんだから──!!」
岡田大地「また、ごめん・・・」
岡田大地「無茶してばっかりだな、僕は・・・」
柳原香澄「どうしてそこまで、私に気をかけてくれるの??」
岡田大地「う～ん、そうだな・・・」
岡田大地「最初は、眞鍋のアプローチに困っている柳原さんがほっとけなくて善意で助けたけど・・・」
柳原香澄「うん??」
岡田大地「でも、途中から変わったんだ」
柳原香澄「変わったって何が??」
岡田大地「あの日、柳原さんに助けられた日から好きになったんだ」
柳原香澄「──!?」
岡田大地「その時は気付かなかったんだけど、最近柳原さんと関わりが増えてから楽しいと思ったんだ」
岡田大地「毎日がつまらないものから、楽しいものに変わったのは、柳原さんのおかげだよ？」
柳原香澄「そんな、私はただ・・・」
岡田大地「それに、柳原さんが好きだって気持ちは、”嘘”じゃないんだよ」
柳原香澄「（そっか、じゃあ私が抱いていた”気持ち”もやっぱり・・・）」
柳原香澄「岡田くん!!私も・・・」
岡田大地「うん??」
柳原香澄「私も、岡田くんのこと好き!!」
柳原香澄「岡田くんを助けたからじゃない!!岡田くんの内面に惹かれたんだよ？」
柳原香澄「他人への思いやりがとても強い子だなって、前から感じていたの」
柳原香澄「だから、直接話してみて、より想像以上の人で安心したの!!」
岡田大地「いいの？何の取り柄もない僕で？」
柳原香澄「いいの、私は岡田くんのありのままの姿に惚れたんだもの!!」
岡田大地「ありがとう、柳原さん・・・」
柳原香澄「岡田くん・・・」
　　僕の人生はただ他人に搾取される人生だけじゃなかった。
　　それに、自分だけ損する人生でもなかった。
　　僕の今までの”がんばり”は、このためにあったと思うと誇らしい。
　　もう２度と、大事なものを手放しちゃいけないんだ。
　　今まではだめだったけど、これからは守るものが一つ増えた。
　　そう、彼女（香澄）という存在が・・・

〇雑踏
　　あれから、数日の時が経った・・・
　　眞鍋たち３人組は、実は僕以外にもカツアゲしてたみたいで、学校側の調査で色々と明らかになった。
　　おかげで段々登校しなくなり、昨日自主退学したことがクラスのホームルームで分かった。
　　ちなみに津田っていう人も自主退学したみたい。
　　一方俺の友達にも変化ができたみたいだ。
　　気まづかった晃とは昔のようにつるむ機会が増え、関係は良好になったと思う。
　　そんで、新しい友達も増えた。そう原美咲さんだ。
　　柳原さん、いや香澄の友達で、あの晃が好きみたいなんだ。
　　僕と香澄さんはお互いの友達のためにくっつけたいんだけど、晃が鈍感でなかなかうまくいかないんだww
　　晃いい人だし、原さんもいい子って聞いてたから、僕としてはくっついてほしいな。
　　そんで、香澄とどうしているかっていうと・・・
柳原香澄「さっきの映画面白かったね～!!」
柳原香澄「特に最後の告白シーンがベタだけど、キュンとくるよね～!!」
岡田大地「そうだね、僕もあのシーン好きだな」
柳原香澄「あっ、でもあの映画の中で写ってたいじめのシーン、なんだか大地の言ってたのと似てたような・・・」
柳原香澄「あっ、ごめん、なんか白けるようなこと言って・・・」
岡田大地「大丈夫だよ、そこまで気にしてないよ」
岡田大地「前も言ったじゃない、香澄のおかげで人生が楽しいって」
柳原香澄「なら、いいんだけど～」
柳原香澄「そしたら、今日も大地の家に行っていい？まだ、帰りたくないな～」
岡田大地「──!!」
岡田大地「うん、行こうか!!」
岡田大地「帰りにスーパーに寄る??」
柳原香澄「ううん、いこいこ～」
岡田大地「（相変わらず、天然だな～）」
岡田大地「（でもやっぱり、僕は、）」
岡田大地「（香澄が好きなことに間違いないね）」
柳原香澄「（私も大好きだよ、大地）」