ありとあらゆる説を解く

くーるす

夢の跡(脚本)

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〇走る列車
セイ「・・・・・・」

〇走る列車
セイ「ふぅ・・・・・・」

〇走る列車
セイ「(今俺は田舎の実家に帰っている所だ)」

〇走る列車
セイ「(田舎にはばあちゃんが一人暮らし、父親が転勤するまで俺はずっと実家で暮らしていた。)」

〇走る列車
セイ「(夏休みの中頃になり急にばあちゃんに会いたくなったからこうして足を運んでいる所だ)」

〇走る列車
セイ「・・・・元気にしてるかな。ばあちゃん」

〇走る列車

〇走る列車
「まもなく○○駅に到着します」
セイ「おっ、着いたな」
セイ「よし、行くか」

〇農村
セイ「(駅を出て、歩いて20分の所にある小さな村に実家はある)」
セイ「誰かと来ていたらあっという間なんだが一人でこの距離はなかなかきついな」
セイ「(ようやく見えてきた見慣れた家、台所の窓から明かりが点いている。元気にしているようで少し安心した)」

〇平屋の一戸建て
セイ「・・・・都会の騒がしさに慣れていると妙に寂しく感じるんだよな」
「──ピンポーン インターホンを鳴らした」
「はいは〜い」
「ガラガラガラ── 人影が見えてドアが開く」
チヒロ「おぉ、セイやっときたのかい」
セイ「ばあちゃん家が遠いんだよ」
チヒロ「ん・・・また引っ越したのかい?」
セイ「そうじゃなくて、年々遠く感じるようになったっていうか・・・俺も歳取ったのかね」
チヒロ「あたしを相手に何を言ってるんだい」
セイ「いや、ごめん。とりあえず上がっていい?」

〇狭い畳部屋
セイ「はぁ〜、疲れた〜」
チヒロ「いやぁ、ほんとごくろうさん」
セイ「(俺が家に上がりシャワーを浴びてきてリビングに行くとすでに料理が並べられていた)」
セイ「(すごくいい匂いがする) いただきます」
セイ「久々に食べるとやっぱり美味しいな」
チヒロ「あたしも久しぶりにこんなに腕を振るったよ」
チヒロ「お父さんが亡くなって以来かね」
セイ「そっか・・・」
チヒロ「こうやって帰ってきてくれて溜まってた食材も一気に使うことができて助かるよ」
セイ「ほんとすごい量だね。長旅だったからちょうどいいかも」
チヒロ「無理せず食べるんだよ」
セイ「うん」

〇古風な和室
セイ「──布団も用意されていた。 ここはおじいちゃんの居た部屋だ」
セイ「亡くなってから2年か・・・ 俺はおじいちゃんの仏壇に手を合わせて眠りにつく事にした」
セイ「──」
セイ「────その夜、不思議な夢を見た」
セイ「緑一色の景色、それになんだか懐かしくてとても心地良かった」

〇林道
セイ「──この先に行くと神社がある」
セイ「──そこは何もないこんな田舎には立派すぎる建物だった。その隣にある遊び場で俺はいつも誰かに会っていたっけ」
セイ「──毎回会えるのが楽しみでワクワクしながら走って行っていた」

〇神社の石段

〇大樹の下
セイ「──あった。きれいな花の咲いた大木 そこにいつも彼女はいた」
???「──!!」
セイ「よっ、元気か?」
???「・・・」
セイ「今日も1人か?」
???「・・・コクリ」
セイ「そっか」
「彼女は無口だった。けど遊び相手がお互いにいなかったのでそれが嬉しかったのか俺はここに足を運ぶようになった」
「しりとり、あやとり、鬼ごっこ、かくれんぼ、縄跳び、紙飛行機、その時小学校で流行っていた遊びをしていた」
「何気ない会話を沢山したけれどその中に彼女の名前だけはなかった。彼女は無口だから相槌は頷くか首を振るのがほとんどだったから」
「気になってはいたけど結局最後まで聞かずに俺はここを離れたんだっけ・・・よく覚えていない」

〇古風な和室
セイ「──目が覚めたら朝だった なにか大事な事を思い出した気がする」
セイ「ん〜〜〜、そうか夢か。大事な・・・・・・人」
セイ「彼女は・・・・・・懐かしいな」
セイ「名前なんだったっけ・・・えっと」
セイ「──思い出せない」
チヒロ「セイ、起きてるかい?」
セイ「あ・・・」
セイ「おばあちゃん、おはよう」
チヒロ「はい、おはようございます」
チヒロ「朝ご飯出来てるよ。リビングに来な」
セイ「布団畳んだら行くよ」
セイ「・・・・・・」
セイ「思い出せない・・・ ──俺はこの日は朝から彼女の事が頭から離れなかった」

〇狭い畳部屋
セイ「・・・・・・」
セイ「──ご飯を食べた後しばらくぼーっとしていた」
セイ「おばあちゃーん」
チヒロ「どうしたんだい?」
セイ「今日ちょっと出かけてくる」
チヒロ「そうかい、何もない所だけど大丈夫かい?」
セイ「えっと、確か神社がなかったっけ?」
チヒロ「あぁ、○○○神宮だね。お祈りかい?」
セイ「まあ、そんなとこ」
チヒロ「気をつけて行くんだよ」
セイ「わかった」
「──俺は記憶を頼りに神社へ向かった、あの頃何回も通った道だから体が覚えていたようだ」

〇神社の石段

〇屋敷の門
セイ「──あれ?こんな家あったっけ・・・」
セイ「──ナビの役目をしていた記憶はそこで途切れていた」
セイ「大樹のある広場なはずなんだけど・・・ あったのは立派なお屋敷だった」
セイ「さすがに勝手に入るわけにはいかないか・・・」
セイ「しかし神社の横にこんなにでかい家が出来たんだな」
セイ「一体どんな人が住んでるんだろう・・・」
セイ「──しばらく周りを散策したが塀の周りには何も無くただぐるっと一周しただけだった」
セイ「なんだかもどかしいな・・・俺は何かに期待していてここに来たはずなのに実際来てみたら何もなかった」
セイ「・・・ふぅ、参拝して帰るか」

〇神社の石段

〇神社の本殿
セイ「──神社に着いて俺は驚いた」
セイ「めちゃくちゃ立派だな」
セイ「──昔より大きくなっているような気がした」
セイ「──パンパンッ 俺は本殿に向けて手を叩いてお祈りをした 何を願ったかはわからない」
セイ「今のもどかしい心のおかげで上手く願いを出せなかった。 あるいはそれを願ったのかもしれない」

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コメント

  • 正夢だったみたいですね。もしかしたらセイ君の理想の女性に近い彼女なのかもと想像しました。幼い頃すごした田舎に帰り、心洗われたみたいな良い雰囲気に浸れました。

  • 何だか不思議な読後感に包まれるお話でした。記憶の隙間に埋れている事柄や人物は誰の人生にもあるような気がします。人生はそれ自体が長い夢のようなものだから、無理に思い出したり答えを見つけたりしなくてもいいんじゃないか。セイの行動を見ていて、そんな気持ちになりました。

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