廃墟のゾンビ(脚本)
〇教室
岸本怜奈「ねぇ朔〜」
豊田朔「興味無い」
岸本怜奈「冷たいなー・・・・・・」
豊田朔「また心霊とかでしょ、そういうの嫌いだから」
岸本怜奈「んー、じゃあ大輔くんに相談するかー」
岸本怜奈「大輔く──」
岸本怜奈「いない!?」
岸本怜奈「私1人で行くしかないか・・・・・・」
岸本怜奈「心細いなー」
豊田朔「はいはい分かった分かった」
豊田朔「話だけなら聞いてあげる」
岸本怜奈「ほんと!?」
岸本怜奈「今回はね、朔も興味あるネタだと思うよ!」
岸本怜奈「最近、動画の広告でホラー映像流れることない?」
豊田朔「あー、広告ってたまに変なのあるよね」
岸本怜奈「その広告は無音の映像で、廃墟みたいな場所が映されてるの」
岸本怜奈「そして、動く死体みたいなのが映ってるんだよね!」
豊田朔「うわー・・・・・・悪質な映像」
岸本怜奈「その死体、まるでゾンビみたいなんだよ〜」
豊田朔「そんなの、どこかの倫理観無い人が作ったんでしょ」
豊田朔「それかゾンビ映画の宣伝」
岸本怜奈「でもさ、ゾンビ映画ならテロップとか出るでしょ?」
岸本怜奈「それも無しに広告に出るって不思議!」
岸本怜奈「今回は、この謎を解いて動く死体を撮影するのが目標!」
岸本怜奈「朔も来てくれるよね?」
豊田朔「無理、私グロいの嫌いだから」
岸本怜奈「え〜、一生の──」
豊田朔「無理、それに不謹慎なネタにもつき合えない」
岸本怜奈「分かった・・・・・・」
〇廃列車
岸本怜奈「──と、そんなわけで」
岸本怜奈「よろしくね、大輔くん!」
中川大輔「最悪だ・・・・・・」
中川大輔「俺マジで苦手なんだって・・・・・・」
岸本怜奈「ダメ?」
中川大輔「可愛い感じに言っても無理だ、お前への恋心は消滅した」
岸本怜奈「じゃあ、この夜道を1人で帰る?」
岸本怜奈「この辺、何かの足音が聞こえてくるとか、行方不明になった女の子がいるとか──」
中川大輔「あーもー!!!!わかったよ!!!!」
岸本怜奈「いこー!」
〇廃ビルのフロア
岸本怜奈「んー、この辺りだったと思うんだけどー」
中川大輔「もう帰ろうぜ・・・・・・」
岸本怜奈「カナブン!」
中川大輔「コオロギな」
岸本怜奈「んー・・・・・・ここはハズレかも、やっぱり足音の方を調べてみようかな!」
岸本怜奈「ん?何の音?」
岸本怜奈「大輔くん、何か踏んだ?」
中川大輔「いや・・・・・・」
岸本怜奈「わっ・・・・・・」
中川大輔「な・・・・・・なんだよぅ・・・・・・」
岸本怜奈「大輔くん、大きな声出さないでね」
岸本怜奈「ほら、あの木の後ろ」
ゾンビ「ウゥ・・・・・・」
岸本怜奈「やった・・・・・・!」
中川大輔「お、おい!逃げるぞ!!!」
岸本怜奈「わっ!?」
〇廃列車
ゾンビ「ウゥ・・・・・・!」
岸本怜奈「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
岸本怜奈「追ってくるの・・・・・・!?」
中川大輔「おい!何か逃げる手は無いのか!?」
岸本怜奈「はぁっ・・・この手のは・・・・・・」
岸本怜奈「とりあえず、廃墟を抜ければ・・・・・・」
中川大輔「分かった!!うぉぉぉ!!!」
岸本怜奈「あっ・・・・・・待って・・・・・・」
岸本怜奈「あっ・・・・・・!」
〇廃列車
岸本怜奈「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
中川大輔「おい!逃げるぞ!!」
岸本怜奈「もう無理・・・・・・」
中川大輔「お、おい!」
岸本怜奈「ちょっと・・・・・・怪我しちゃった」
岸本怜奈「私のことはいいから・・・・・・」
中川大輔「クソっ・・・・・・!!」
大輔は怜奈を抱きかかえる。
岸本怜奈「だ、大輔くん!?」
中川大輔「これでも見捨てて逃げられるほど、お前のこと嫌いになってねぇんだよ!!」
〇街中の道路
中川大輔「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
中川大輔「とりあえず、ここまでくれば平気なんだな?」
岸本怜奈「・・・・・・・・・・・・」
中川大輔「おい!平気なんだな!?」
岸本怜奈「あっ・・・・・・うん、多分平気」
中川大輔「ホラーとかだと、逃げ切ったと思ったらってのがあるよな?」
岸本怜奈「そういうのはめちゃくちゃヤバい奴、私は見たことない」
中川大輔「とりあえず・・・・・・めちゃくちゃヤバい奴では無さそうか」
岸本怜奈「あの手のは土地に憑いてたりするんだよ」
岸本怜奈「よくお墓に幽霊出るとか言うじゃん?あれと一緒!」
岸本怜奈「それにしても、今日の大輔くんカッコ良かったよ!」
岸本怜奈「また一緒に心霊スポット行こうね!」
中川大輔「もう二度といかねぇ!!」
大輔くん、何てイイ子……お人好しなところも、窮地で漢気を見せるところも、彼の魅力ですね!
そして、途中で出てくるゾンビよりも怜奈さんに恐ろしさを感じてしまう不思議ww
深夜の学校探索で「もう二度と関わらねえ」って言ってたのに、案の定、大輔はのこのこやってきてて読者も苦笑いでした。これほどまでに心霊に執着する怜奈は、逆にお化け仲間の間で「うちにもとうとう怜奈が出たーっ」「あの子しつこすぎて怖いーっ」ってお化け扱いされてそうですね。