ひまわりホテル やなばしてん

ねねぅん

エピソード1(脚本)

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〇荒廃した教会
「・・・・・・起きなさい・・・」
「     」「・・・ ・・・ ?」
  目を擦り、辺りを見渡す。薄暗くてよく見えないが、所々にガラスの破片やコンクリートの欠片が散らばっている。
「     」「汚い・・・」
  ジメジメしていて、ろくに整備もされていないであろう建物は、どこかのビルのようだった。何も音がしない。私ただ1人のようだ。
「     」「・・・なにこれ」
  私の手の中に紙の切れ端があった。
「     」「・・・『さきに、すす、みなさい?』」
  くしゃくしゃになってしまっていた紙には急いで書いたような殴り書きで『先に進みなさい。』と書いてある。
「     」「なんで?」
「     」「それに、ここはどこ・・・?」
  自分の置かれている状況を上手く理解できない。
  (とりあえずここがどこなのか知ろう。)
  そう思い、立ち上がる。
  後ろを振り返ると入口らしき自動ドアがある。とりあえずそこへ足を進めた。
  ここにどうして自分がいるのか、ここに来る前は何をしていたのか。パニックになっているのか全く思い出せない。
  自動ドアの前に立つ。
「     」「さすがに開かない・・・よね」
  自動ドアは稼働しておらず、外は蔦で塞がれてしまっている。
  自動ドアの隣にあった埃まみれの看板を見る。
「     」「ひま、わりホテル、やなぎ、ば、してん?」
  おそらくここの名前だろう。
「     」「(ひまわりホテル・・・柳橋・・・)」
「     」「・・・ ・・・」
「     」「お父さん・・・?」
  ひまわりホテル柳橋店はお父さんが勤めていたホテルだった。
  勤めていたのはもう10年以上前のこと。
  
  すぐには思い出せなかった。
  そして勤めていたここのホテルを辞めた5年後にお父さんは亡くなった。
  正直お父さんの顔はほとんど覚えてない。お父さんとの記憶も曖昧だ。
  お医者さん曰くショックで記憶が1部なくなってしまっている、らしい。未だに思い出せることは少ない。
  お母さんも病弱で私が産まれた後すぐに亡くなった。
  だから私は施設で育った。ここに来る前には施設にいたのは確実だろう。施設しか私の居場所は無いのだから。
  だけどやっぱり詳しく思い出せない。直前に何があったのか、どこにいたのかは想像するしかない。
  ここがどこかは分かったが、なぜここにいるのかはやっぱり分からない。どうやってきたのかも。
「     」「進むしかない、か・・・」
  そう思い、入口に背を向け目をあげる。

〇荒廃した教会
「     」「・・・・・・灯りだ」
  さっきまではなかった。向こうの方に豆電球くらいの灯りがあった。
  人がいるかもしれない。
  安堵と少しの不安が混ざった微妙な気分。きっとあそこへ行かないと何も始まらない。直感でそう思った。

〇荒廃した教会
  灯りのある所へ向かいながら周りをゆっくり見渡す。だんだん落ち着いてきた。
  さっきの入口。その上の大きな窓。そこから月明かりがカーテンのように垂れていた。
  薄暗くてよくは見えないが、真っ暗よりなはいい。
  ここはホテルのロビーのようなところで椅子と机、ソファなどが置かれていた。どれも汚いしボロボロだけど。
  自分ひとりの足音が響き渡る。
  灯りが付いていたのは受付だった。
「     」「(人が、いるんだよね・・・?)」
「     」「・・・、こんばんは」
  反応はない。
「     」「(そ、そうだよね・・・。)」
  自分の呼吸の音がやけに大きい。
  灯りが付いていたのは元からで自分が気づかなかっただけ。
  自分にそう言い聞かせ怖い気持ちを押し込めた。
「     」「あ」
「     」「呼び鈴・・・」
  こんなことをしてもどうせまた反応がない。分かっているが興味本位で押してみた。
  リリンッ
  掠れた呼び鈴の音が想像以上に大きい。
  しかし、また反応は、

〇荒廃した教会
「『はーい』」
  返事が返ってきた。
「『ちょっと待ってくださいねぇ』」
  おっとりとした男性の声が聞こえてくる。
  受付の向こう側のカーテンの裏。そこにいるようだった。
  驚きながら、理解できていないことを聞いてみる。
「     」「すみませんここって・・・、」
  そう言いかけた時、、
「『はいはい。』」
  男性が出てきた。
  頭がない。
  正確には、シャツの襟の部分より上、首から上が無い。
  黒いキッチリしたベストを着ている。ホテルマン。
  そして体の所々に花が咲いている。暗くてなんの花かは分からないがおそらく体から生えている。
  やけに冷静に考えた。
「     」「ぁ、、え」
  止まっていたような時間が終わり、自分の口から情けない声が漏れる。
「『お客様おひとり様ですか?何泊いたしましょう。』」
  平然と話す頭のない男性を前に私は固まる
  その男性は手元の本に集中していて私の方を見ていない。
「『どうしましたか?』」
「     」「え、あ、頭」
  そういうと男性が下に向けていた体を私の方に向けた。
「『・・・ ・・・お客様。もしかして、」
「迷い込んでしまいましたか?』」
  優しく私に問いかける男性は相変わらず頭がない。
「『・・・この花、見てください。』」
  そういって男性は自分の体から生えている花に手を添えた。
「『この花はアングレカムというんです。綺麗でしょう。』」
  突然の話題に戸惑ってしまう。
「     」「あぁ、、そう、ですね」
「『・・・・・・たまにいるんですよ。迷い込んでしまう人間様が。』」
「     」「え?」
「『いつもはそのような人間はここの生物に処理をさせますが・・・」
「・・・貴方は特別です」
「私が元の世界に返してあげますよ。』」
「     」「???」
  ここが別の世界?
  迷い込んでしまった。?
  状況が理解できないが、目の前でそれを話している男性が頭がなくて体から花を生やしているのを見ると信じざるおえない。

〇荒廃した教会
「     」「ほ、ほんとうにかえしてくれるんですか?」
「『はい。本当ですよ。けれど帰るには貴方にも頑張ってもらわないといけません。』」
「     」「・・・何をすればいいんですか」
「『私が貴方を元の世界に返す方法を探している間、私の仕事を代わりにしてもらいます。』」
「     」「しごと?」
「『はい。ここはホテルで、私はホテルマンです。今宿泊されているお客様も沢山います。』」
「『まぁ。お客様と言ってもあなたのような人間様ではありませんが。』」
「     」「・・・ホテルマンなんてやったことないですよ・・・?しかも人間以外を相手になんて・・・」
「『大丈夫。私が全て指示します。』」
「     」「でも・・・・・・」
「『元の世界に、かえりたくないですか?』」
「     」「・・・ ・・・ ・・・」
「     」「(もし、元の世界に帰ったとして」
「     」「私は幸せに生きれるのだろうか。?)」
「『・・・・・・どうされ、ますか。』」

コメント

  • こんにちは!
    面白かったです
    不思議なホテルという世界観と、主人公のグレーで統一したデザインが好きでした

  • 読者も少女と一緒に迷路を彷徨っているような感覚に陥る不思議な味わいのストーリーですね。首のないホテルマンも、恐怖というより異世界の摩訶不思議な魅力を感じさせます。アングレカムの花言葉は「いつまでもあなたと一緒」ですが、主人公の運命と関係あるのかないのか…気になります。

  • 不思議な世界に迷い込んでしまいましたね。
    主人公の少女は、まだ名前もないのですね。
    続きも頑張ってください😊

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