フェアリーテイル・デスゲーム

Mume-

第一話 すべてのおわり、すべてのはじまり(脚本)

フェアリーテイル・デスゲーム

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〇牢獄
  金属が床にこすれて、耳ざわりな音が部屋に響く。
  辺りに飛び散ったヒトの血が、今この状況の異常さと凄惨さを語る。
  聞くだけで痛みが伝わってきそうなうめき声が耳に届く。
?「う、ああ・・・」
?「嫌だ・・・・・・死にたくない」
?「死にたくな──」
ルシファー「死んだ・・・いや、消えたな。 この世界から存在ごと」
ルシファー「おめでとう、ゲームクリアだ。 次のステージに進むといい」
浦島太郎「・・・」
浦島太郎(どうしてこうなった?)
浦島太郎(何でだよ・・・)
浦島太郎(何なんだよ”これ”は!!!!)

〇大きな木のある校舎
  夕暮れ時、学校の裏庭にて。
浦島太郎「・・・」
クラスメイト「あっ!太郎くん!!」
浦島太郎「手紙の通りに来たけど、話って?」
クラスメイト「えっとね・・・」
クラスメイト「ずっと前から好きでした! 私と付き合ってください!!」
クラスメイト「ダメ、かな・・・?」
浦島太郎「その気持ちは受け止めるし、もちろん嬉しいんだけど──」
浦島太郎「俺にはかわいい妹がいるから!! ごめん!!」
クラスメイト「えっ、えぇ?妹!?」
浦島太郎「そう妹。 俺、妹の方が好きなんだよ」
浦島太郎「だから申し訳ないんだけど、ごめん!!」
浦島太郎「じゃ、俺は妹の迎えに行くからまた明日!」
クラスメイト「・・・」
クラスメイトの友達「あちゃー断られちゃったか・・・」
クラスメイトの友達「まぁ、あんたが悪かったんじゃなくて相手が悪かっただけだから仕方ない仕方ない」
クラスメイト「慰めになってないよ・・・」
クラスメイトの友達「ま、次はシスコンじゃない奴を好きになればいいっしょ!」
クラスメイトの友達「高校生活の”恋”は”濃い”んだから!・・・ってね!!」
クラスメイト「ふふっ、ありがとう」
クラスメイトの友達「しっかし、あんな美貌の兄に好かれてる妹ってどんな人なんだろね〜」

〇通学路
浦島太郎「やばいやばい!妹のバスの時刻に間に合わないって!!」
  突然、ポケットの中に入れたスマホから着信音が鳴った。
浦島太郎「誰だよこんな忙しいときに!!」
浦島太郎「非通知?こんなイタズラ一体誰が・・・」
  焦りでイラついた態度のまま、乱暴に電話を取る。
浦島太郎「忙しいときに電話してくんな!!」
  電話の主に対して文句を言い、電話を切ろうとしたそのとき。
電話の主「浦島太郎だな?」
浦島太郎「っ!?」
  俺はすぐさま地面を駆けている足を止めた。
電話の主「お前の妹の命が惜しければ夜のちょうど0時、お前が通っている学校の前に来い」
電話の主「この通話については他言禁止だ。 もしバラしたりしたら・・・言わなくても分かるだろう?」
浦島太郎「妹は無事か!?」
電話の主「ああ、まだ無事だ」
浦島太郎「分かった。それならいい」
浦島太郎「俺はお前の要求に応える! だから妹に何もすんな!」
電話の主「分かった。これで話は終わり。 もう一度忠告しておくが、他言禁止だ。 ではまた0時に会おう」
浦島太郎「クソッ!!!!」
浦島太郎(俺は妹を守るためにいるんじゃないのか?)
浦島太郎(それなのにこんな失態を犯してしまうとか一生の不覚だ!!)
???「お兄ちゃ〜ん?」
浦島太郎「!?」
乙姫「どうしたの?こんな所に突っ立って。 いつもなら迎えに来てくれるのに」
浦島太郎「乙姫?俺の妹?本物・・・?」
乙姫「本物だよ~?まさかお兄ちゃんなのに私のこと間違っちゃうの?」
浦島太郎「いや!俺に限ってそんなことは絶対にない!!間違いなく本物の乙姫だ!!」
浦島太郎(確かにさっきの電話は妹を人質に取ったような話し方だった)
浦島太郎(なのに、ちゃんと本物の妹がなんでここに?)
乙姫「どうしたのお兄ちゃん。 顔が真っ青だよ?」
浦島太郎「あ、ああ平気。何でもない」
乙姫「そう?ならいいけど・・・」
浦島太郎(あれはただのイタズラ電話? にしてはリアルすぎるような・・・)
  俺はどうも電話の一件が頭の片隅から離れられず、妙な緊張感を持っていた。
  そしてそのまま俺たちは特に何事もなく、いつも通りに自宅へと帰ることができた。

〇明るいリビング
  0時前、太郎の家にて。
  そこには立ち尽くす1人の青年と、ベッドに寝ている1人の少女がいた。
浦島太郎(あの電話がもし本当なら妹が危ない。 でも、こんな危険なときに妹を1人にさせるのは・・・)
乙姫「お兄ちゃん・・・?」
浦島太郎「悪い、起こしちゃったな。 ほら早く寝ろ寝ろ」
乙姫「・・・」
乙姫「お兄ちゃん、無理してる」
乙姫「何があったのかは分からないけど・・・私なら大丈夫だよ?」
浦島太郎「でも!」
乙姫「へ〜きへ〜き。 私には修学旅行で買った木刀があるから〜!ほら、これ〜!!」
浦島太郎「乙姫・・・剣道とかやったことないだろ?」
乙姫「私は剣豪の生まれ変わりだから大丈夫なの〜」
浦島太郎「なんか吹っ切れたよ。ありがとう」
乙姫「それなら・・・」
乙姫「よかっ──」
浦島太郎「寝ちゃってるし・・・」
浦島太郎「よし」
浦島太郎「こんなかわいい妹を死なせてやるもんか」
  青年は少女の頭を優しくなで、家を後にした。

〇大きな木のある校舎
  0時頃、深夜の学校にて。
浦島太郎「おい!!約束通りに来たぞ!!」
浦島太郎「誰もいない・・・」
浦島太郎「来いって言ったのはそっちじゃねぇか!!」
浦島太郎「ったく・・・遅刻か?」
浦島太郎(もしも電話の主が遅刻して来たのにこじつけで妹が殺されるのは勘弁だし、もうちょい待ってみるか・・・)
  数分後・・・
浦島太郎「ぜんっぜん来ねぇじゃんか・・・」
浦島太郎「やっぱアレ、イタズラ電話だったのか?」
浦島太郎「はぁ。帰ろ」
浦島太郎「こんな夜中に? 大人って大変だなぁ」
  だが、その消防車は明らかに俺の家の方に向かっていた。
浦島太郎「は?」
  風に乗って伝わってくる熱気。
  思わずむせてしまう嫌な匂い。
  深い闇の中で立ち上がる黒煙。
  それらは全て自分の家から出ていた。
  その状況を理解するまでもなく、身体が先走り、思い切り地面を駆けた。
浦島太郎「乙姫ッ!!!!」

〇一戸建て
浦島太郎「おと、ひめ・・・?」
消防士「危ないから下がって!!」
浦島太郎「いや・・・だ」
浦島太郎「あの中には!!俺の妹が!!まだ妹がいるんだよ!!」
消防士「・・・」
消防士「この猛火だ。 残念だが君の妹さんの命は・・・」
浦島太郎「あいつは!!乙姫は無事だって言ったんだよ!!だから生きてる!!まだ生きてんだ!!」
消防士「ちょっと君!!危ない!!」
消防士「あんなの救出じゃない。 もはや心中だ・・・」
消防士「あのとき、あの青年を抑えておけばッ!!」
先輩消防士「後悔するのはまだ早い!! 早く消火するんだ!!被害を最小限に!!」
消防士「──!! は、はい!!」

〇明るいリビング
浦島太郎「・・・・・・」
浦島太郎「・・・ッ!!!!」
浦島太郎「ごめん・・・もっと、もっとお兄ちゃんがちゃんとしてれば!!」
浦島太郎「それもこれも全部──」
浦島太郎「力のある人は避け、力のない人にだけ危害加える・・・」
浦島太郎「それでもお前は人間か!!!!」
浦島太郎「・・・・・・クソッ!!クソぉッ!!!!」
浦島太郎「・・・乙姫。最期までお兄ちゃんが付いてるからな」
浦島太郎(ああ。もっと力が欲しい)
浦島太郎(強い者も弱い者も守れる力が──)

〇魔王城の部屋
浦島太郎「欲しい・・・」
孫悟空「おぉ!起きた起きた!!」
孫悟空「最後の1人だよ? ラストワン賞おめでとーう!!」
浦島太郎「・・・」
浦島太郎「ごめん、今は1人にさせてくれ」
孫悟空「大丈夫大丈夫、みんな戸惑ってるからそういうのは君だけじゃないよ?」
浦島太郎「いや、そうじゃなくて・・・」
  ふと周りを見渡すと、この女性以外にもあと3人がこの部屋にいた。
孫悟空「もしかして、死んだのになんで生きてるか〜ってこと?」
浦島太郎「死んだ・・・? 俺、死んだのか・・・」
金太郎「なんだぁ?お前、生きたままここに来たのかぁ?」
浦島太郎「いや、ただ死んだって実感が持てないだけ。あんたはこの場所のこと何か知ってんの?」
金太郎「ハッ!知ってたらんなこと聞かねーしこんなイラついてもねぇんだよ!!」
桃太郎「そんなにイラついていたら高血圧で死んじゃうよ?」
金太郎「うるせぇガキ!!空っぽ頭に無駄な知識詰め込むんじゃねぇよ!!」
桃太郎「ほら、高血圧。 思考回路が短絡的。単細胞」
金太郎「二度と口開けなくしてやろうかぁ?あ"?」
浦島太郎「やめろ!!そんな子供に何するってんだよ!!」
金太郎「んだと?オレに立ち向かう気かぁ?」
金太郎「そんな修羅場くぐってねぇような体でよぉ?」
浦島太郎「ああ。弱い者いじめは良くない」
浦島太郎「ただ、言葉の面ではそっちの君も悪いからここは話し合いで解決すべきだ」
金太郎「2人揃って生意気言いやがって」
金太郎「そんなにしつけて欲しいんだったら俺がやってやるよ!!」
ルシファー「静まれ」
  突然の声によ、て部屋に一時の静寂が訪れた。
  その後、壁にプロジェクターで写したような映像が流れ始める。
全員「!?」
  俺たちはそこに何が映し出されるのかを期待し、目を釘付けていた。
ルシファー「全く。死者の癖に騒がしいな」
ルシファー「失礼。私の名はルシファーと言うのだが・・・」
ルシファー「噛み砕き、分かりやすく言うとお前らを生き返らせてここに集めたのが私だ」
浦島太郎「あんたが・・・」
孫悟空「私達を生き返らせてくれたんだね!!」
ルシファー「御託はいい。 とにかく私は上からの連絡のみを伝える」
  ルシファーと名乗る彼女は、手紙を開いて黙読を始めた。
  数秒後、手紙を閉じて元の封筒に戻した。どうやら読み終えたようだ。
ルシファー「ふむ。私は無駄が嫌いゆえ、一言で命令する」
ルシファー「『願いのために生き残れ』」
ルシファー「では私からの話は以上だ。 そこの扉の先にある部屋に進むといい」
孫悟空「わぁ・・・驚くほどに説明が雑だったねぇ。早かったけども」
浦島太郎「「願いのために生き残れ」ってどういうことなんだよ、ルシファー!」
孫悟空「まあまあ、先行けば分かるよ!! ここで待ってても何も始まらない訳だし」
浦島太郎「仕方ないな。行ってみる他無いか・・・」
孫悟空「よーし! 3人はどうする?」
桃太郎「あてがないから僕は行く」
かぐや姫「・・・・・・・・・(コクリ)」
金太郎「ハイハイ、わーったよ。行ってやんよ」
孫悟空「それじゃあレッツゴー!!」

〇牢獄
浦島太郎「ここ・・・か」
孫悟空「うっわ〜広いね、こりゃ」
  僕たちが部屋に入った途端、出入り口がバタンと言う音を立てて閉じてしまった。
  そして先程と同じような画面が映し出される。
ルシファー「ングッゲホッゲホッ・・・」
ルシファー「ン"ン"ッ、また会ったな諸君。 ここは埃っぽくてとても参るな」
ルシファー「諸君らには、『フェアリーテイル・デスゲーム』第一回戦を行ってもらう」
ルシファー「ルールは単純だ。 そこにいる処刑人から1人殺されれば終わり。どうだ?簡単だろう?」
浦島太郎「『フェアリーテイル・デスゲーム』・・・? 1人死ぬって一体何なんだよ!!」

コメント

  • 童話の主人公たちによる殺し合いとは、なんとも悪趣味で素晴らしいアイデアですね。どんな結末を迎えても「めでたし、めでたし」とはなりそうもないけれど…。次回も楽しみです。

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