エピソード1(脚本)
〇仮想空間
死神 サラン「これは、貴方に送る最後の問題。貴方には、これが解けます?」
阿良 陸「俺は。・・・」
〇殺風景な部屋
パッと目を覚ますと、知らない部屋に俺は立っていた。
阿良 陸「ここは何処だろう・・・」
阿良 陸((俺は薄暗い静かな部屋の中に一人いた・・・))
阿良 陸((確か学校帰りに・・・そう考えてその先が思い出せない。 記憶喪失なのか、いくら考えても何も出てはこない))
阿良 陸「まぁいいか!この部屋にある物はなんだろな!!」
阿良 陸((俺の長所は考えない事ってあいつも言ってたし。そんなことより、ほんと何も無いなぁ、ここ。))
周りを見渡し一通り観察しても、ベットがあるくらいで他には何もない
阿良 陸「なんか出て来てくださいよ!机でもいいからさ」
阿良 陸「・・・!?」
阿良 陸「うわっ!?」
(スポットライトに照らされて、テーブルが出て来た。その上には手紙も置いてある)
阿良 陸「早速、手紙を見てみよう! まるで、脱出ゲームみたいじゃ無いか!! なんだか楽しくなって来たー♪」
阿良 陸「(誰もいない部屋の中で大声で言う俺)」
阿良 陸「開けていいよな?俺のものだよな?俺が言ったら出て来たもんな?」
ビリッと勢いよく手紙を開けるとそこには
阿良 陸「私を見つけて・・・なんだこれ?」
阿良 陸((一言だけ如何にも女の子が書いた文字でそう書かれていた。 密室でももう少しなんかあるだろう。例えば・・・))
阿良 陸「天使とかさ〜いないのかなぁ〜いないんだろうなぁ〜寝ちゃおうかな〜!!」
阿良 陸(あえて大きな声でそう叫んでみる俺。さっきから誰かに見られていたらやばい──)
阿良 陸「白い羽根?もしかして・・・マジでいんのか?天使──」
阿良 陸「天使さーん!いるなら出てきてくだーい!困っているんです・・・。お話相手になってくださーい!!」
阿良 陸「またしてもでかい声で言う俺」
虚しいようななんだか分からない感情に苛まれるのであった・・・
〇殺風景な部屋
前回のあらすじ!閉じ込められたので、探偵始めた!白い部屋で手紙と羽を見つけた俺はもう一つあるものを見つけていたのでした!
阿良 陸「コントか何かか。一人漫才だと面白くない」
阿良 陸「しかし、俺はあるものを見逃さなかった──!!」
(手が見えたのだ。如何にも女の子っぽい細くて脆い手。いい加減俺一人で尺を伸ばすのも限界なんだよ!!)
阿良 陸「俺はその手を掴むー!!」
馬鹿みたいな猿芝居をして一気に引き上げるとそこには・・・白い羽が舞う
天使 リスタ「え・・・」
阿良 陸「・・・!?」
そこにいたのは、息を呑むほどに美しい美少女だった・・・
本編スタート!
阿良 陸「天使・・・なのか──」
思わずそんな事を言う俺
天使 リスタ「お兄さん、僕が見えるの?」
阿良 陸「あぁ・・・見える。真っ白い天使が見える」
天使 リスタ「本当に見えるんだね、僕のことが・・・」
驚きを顕にするその子に俺は単刀直入に問いかけた
阿良 陸「お前は誰なんだ?」
天使 リスタ「はぁ、見えてしまったなら説明しないとだよね──」
仕方ないみたいな表情をしたかと思うと
天使 リスタ「僕の名前はリスタ。リスタークデンディスラディーニャが正式名称なんだけど長いからリスタでいいよ」
天使 リスタ「後、天使じゃなくて死神ね」
天使でも死神でもあまり変わらないのではないのか?それよりも
阿良 陸「リスタ・・・俺の名前は陸、阿良 陸だ。 よろしくな!リスタ」
そう言って、いつもの様に手を差し伸べる
天使 リスタ「うん、よろしくね、陸」
天使 リスタ「久しぶりに手を握るから緊張しちゃったや」
阿良 陸「なんか言ったか?」
天使 リスタ「うーん、何も」
何かを言った気がするが、それよりも気になることがあった
阿良 陸「そうか・・・所でここは何処なんだ?」
天使 リスタ「それも言わないとか・・・。ここは異空間。そうだなぁ、簡単に言うと生者と死者が交わる所、その狭間の場所」
阿良 陸「狭間・・・。死んでいるかも知れないって事か!?」
天使 リスタ「ううーん。陸は死んでない。仮死状態、病院のベットで寝てる」
安心するが、頭の中は混乱状態のままでいまいち話についていけない
天使 リスタ「・・・。僕が見える人間なんて聞いた事ないし、仮死状態なのは分かっているんだけど──」
天使 リスタ「試験を受ける資格はありそうなんだよなぁー。これはどう言う事なんだろう・・・」
ぶつぶつと困惑した表情で空中で何かを動かすリスタ
阿良 陸「なぁ、俺は生き返れるのか?と言うか今考えたんだけど・・・」
俺はそこで重大な事件に気づく。学生服を着ていた。それで名前は思い出したんだがいまいち俺自身のことを思い出せていないことに
阿良 陸「俺さぁ、阿良 陸って事は覚えているみたいなんだけど・・・それ以外サッパリみたいなんだよな」
天使 リスタ「え?記憶喪失でもあるの?」
天使 リスタ「うーん、余計にわかんなくなって来た。 でも、って事はつまり・・・」
じっと俺の方に向き直ったリスタは何かを決心したみたいにそして話し出した
天使 リスタ「本当は手順を踏むものっていうか一人で取り組む物なんだけど、ここの本当の目的を教えてあげる!」
天使 リスタ「ここは、走馬灯を空間に追い出した物なんだよ、僕たちの食事場っていう感じ?」
阿良 陸「走馬灯・・・食事場?」
天使 リスタ「うーんと、聞いた事ない?死ぬ直前には走馬灯を見るって話」
阿良 陸「あぁ、あるぞ。死ぬ迄の記憶を一気にそこで見るとかいう、あれだろ?」
天使 リスタ「そう、それ!!」
天使 リスタ「僕達は走馬灯が大好きでね、幸せ、後悔、成功体験、絶望等様々な味がして美味しいんだ」
天使 リスタ「それで僕はここに待機して待っていたんだけど。・・・」
阿良 陸「俺に見つかったと・・・。リスタ、お前俺の記憶食べてないよな?」
天使 リスタ「まだ食べてないよ。というか死んだ後にしか食べちゃいけないんだ、だから食べられない」
天使 リスタ「死んでない走馬灯を食べたらその人がその人でいられなくちゃってしまうからね」
天使 リスタ「記憶を持ってしてその人たらしめる。その人生の記憶の走馬灯は十人十色でどれも味わい深いものなんだ」
阿良 陸「なるほど・・・。俺の記憶はどうすれば解決するんだ?」
天使 リスタ「そこだよね・・・」
リスタは少し震えた様子を見せそして決心した様にこう言った
天使 リスタ「今から、走馬灯の体験に行こう!ずっとこのままって訳にも行かないし、つまらないからね」
天使 リスタ「陸の記憶を辿って陸のことを知りに行こう!」
天使 リスタ「まぁ、きっと大丈夫」
天使 リスタ「君自身が、生きるか死ぬかはゴール地点で分かることだから」
阿良 陸「死ぬかも知れないのか!?」
天使 リスタ「まぁまぁまぁまぁ。これも何かの縁と考えてさ、僕と一緒に走馬灯見に行こうよ」
天使 リスタ「陸の走馬灯が何処にあるのか分かんないから長い旅になるかもだけど、きっと大丈夫さ」
リスタは意を決した様子で話してくる
阿良 陸「すぐに見つかるって訳じゃないんだな・・・ でも、行こうじゃんか!走馬灯探し!!」
天使 リスタ「ほんと!?」
天使 リスタ「見つかったら貴方の走馬灯、食べさせてね〜」
阿良 陸「まだ、死ぬ気はないのでそれは却下!!」
阿良 陸「80歳まで生きたいんだ。その後食っていいぞ」
天使 リスタ「えぇーまだまだ先じゃん」
案外ノリのいいやつなのかも知れない
阿良 陸「・・・何が何だかわからないが、なる様になれだ。記憶を取り戻して現世に帰る!!」
天使 リスタ「最初の頃の元気さ出て来て何よりー」
前言撤回、でも・・・
阿良 陸「見てやがったのか・・・お前も楽しくなって来ている様で良かったよ」
阿良 陸「これから、よろしくな。リスタ」
天使 リスタ「うん!よろしく!陸!!」
何が何だかわからないが、こいつとならどうにかなるのでは無いのか、そんな希望が俺にはあるのだった。
人間の絶望や悲しみを美味しく食べる悪魔の話は聞いたことがありますが、記憶の集大成である走馬灯を食べる天使(死神?)だなんて、ほんとにユニークな発想で驚きました。阿良くんの走馬灯がとんでもないシロモノで、食べたリスタが思わず吐き戻して無事に生き返ることができた、とかもアリだといいなあ。
生死の狭間を三途の川・・と例える世代ですが、こんな可愛い死神が現れる瞬間があるとするなら、そこに立ち向かうことになんだか希望がもててしまいますね。
とてもポジティブな主人公ですね、好感が持てます😊