第8話『しずかな、ミライ』(脚本)
〇黒
〇祭祀場
〇黒
第8話
『しずかな、ミライ』
〇巨大研究所
垣崎マサル「・・・・・」
〇武骨な扉
〇暗い廊下
垣崎マサル「こ、これは・・」
鷹野ヒトミ「お疲れ」
垣崎マサル「あ・・お疲れ様です」
鷹野ヒトミ「あらあら・・」
鷹野ヒトミ「ミライちゃん、ド派手に暴れたみたいね」
垣崎マサル「・・その様ですね」
垣崎マサル「まさに無敵ですよ」
鷹野ヒトミ「・・・・・・」
鷹野ヒトミ「私なら、もっとスマートにやるけどね」
鷹野ヒトミ「ミライちゃんは、知性に欠けるわ」
鷹野ヒトミ「島崎アイのやり方って、いつも品が無いのよ」
垣崎マサル「・・・・・・」
〇祭祀場
垣崎マサル「・・・・・・」
垣崎マサル「この二人が『カミシモト姉妹』ですか・・」
鷹野ヒトミ「そう・・・可哀想に」
鷹野ヒトミ「まだ罪を犯した訳じゃないのにね」
垣崎マサル「え?」
垣崎マサル「・・・いや」
垣崎マサル「見解の相違ではないでしょうか?」
垣崎マサル「この団体、 かなりの量の武器を隠していました」
垣崎マサル「そして、 捜査官の証言とデータが揃っています」
垣崎マサル「したがって」
垣崎マサル「無実の方が事件に巻き込まれるのを」
垣崎マサル「我々が未然に防いだ という解釈が正しいかと」
鷹野ヒトミ「ふん・・特権意識ね」
鷹野ヒトミ「アナタ、気を付けたほうがいいわよ」
垣崎マサル「・・・・・」
鷹野ヒトミ「ねえ、知ってる?」
鷹野ヒトミ「この子達、大富豪の娘なのよ」
垣崎マサル「はい・・ それは調べました」
鷹野ヒトミ「もったいないよね?」
鷹野ヒトミ「大人しくセレブやってれば こんな事にならなかったのにさ」
垣崎マサル「え?」
鷹野ヒトミ「ほんっと、もったいないわ」
鷹野ヒトミ「そう思うでしょ?」
垣崎マサル「あ、あの・・」
垣崎マサル「ぼ、僕みたいな下っ端が」
垣崎マサル「こんな事言っていいのか、判らないですけど」
鷹野ヒトミ「なによ?」
垣崎マサル「あの・・ もう少し、言葉を謹んだ方が良いかと・・」
鷹野ヒトミ「はぁ? なに言ってんの?」
鷹野ヒトミ「アンタ、誰に向かって口聞いてるのよ!」
垣崎マサル「す、すみません!」
鷹野ヒトミ「公安の連中が来る前に」
鷹野ヒトミ「早く、向こうから片付けてきなさいよ!」
垣崎マサル「は、はい!」
鷹野ヒトミ「・・・まったく、生意気なガキね」
鷹野ヒトミ「・・・でも、これ」
鷹野ヒトミ「どう考えても」
鷹野ヒトミ「ビジネスチャンスじゃない?」
鷹野ヒトミ「でも、羽田ミライが相手となると・・」
〇カラフルな宇宙空間
〇王宮の入口
〇黒
〇立派な洋館
〇時計台の中
上四元祐玄「伝説の男が」
上四元祐玄「本当に訪ねて来てくれるとはな」
シャドー(影沼ノエル)「・・・・・・」
上四元祐玄「超一流を消すのは」
上四元祐玄「同じ超一流にしか出来ねえってよ」
上四元祐玄「俺にコンタクトを取ってきた、あの女」
上四元祐玄「アンタの知り合いか?」
シャドー(影沼ノエル)「ああ・・権力側のな」
上四元祐玄「そうか・・」
上四元祐玄「アンタ、なんで来てくれたんだ?」
シャドー(影沼ノエル)「・・・理由か」
シャドー(影沼ノエル)「罪悪感みたいなもんか」
シャドー(影沼ノエル)「今まで、ほとんど感じた事なかったが」
シャドー(影沼ノエル)「目の前で、娘達が撃たれたのが」
シャドー(影沼ノエル)「何故か、気にかかっているな」
〇祭祀場
〇時計台の中
上四元祐玄「別にアンタの責任じゃないだろ?」
シャドー(影沼ノエル)「・・・まあな」
上四元祐玄「娘達は あの妙なチカラを発揮しだしてから」
上四元祐玄「俺の言う事を聞かなくなった」
上四元祐玄「そして、俺も」
上四元祐玄「他人の様に距離を取ってしまった」
上四元祐玄「・・・だが」
上四元祐玄「疎遠になってたとはいえ」
上四元祐玄「俺にとっては、大切な愛する娘達だ」
シャドー(影沼ノエル)「・・・・・・」
上四元祐玄「娘達の団体はテロを企んでたのか?」
シャドー(影沼ノエル)「いや」
シャドー(影沼ノエル)「よく判らないが」
シャドー(影沼ノエル)「娘さん達はもっと」
シャドー(影沼ノエル)「純粋な気持ちだったんじゃないか?」
上四元祐玄「・・・そうか」
上四元祐玄「なあ?」
上四元祐玄「アンタが来てくれたって事は」
上四元祐玄「この話は受けてくれるんだろ?」
シャドー(影沼ノエル)「・・その前に」
シャドー(影沼ノエル)「ひとつ聞きたい事がある」
上四元祐玄「何だ?」
シャドー(影沼ノエル)「これは、誰に対する復讐なんだ?」
上四元祐玄「・・・ああ」
上四元祐玄「ハッキリ言って、俺は」
上四元祐玄「組織の複雑な事情には興味が無い」
上四元祐玄「俺が復讐したいのは・・」
上四元祐玄「娘達に直接手を下したヤツだ」
〇黒
〇時計台の中
上四元祐玄「同じ痛みを味あわせてやりたい」
シャドー(影沼ノエル)「そうか」
シャドー(影沼ノエル)「でも、ヤツは強いぞ」
上四元祐玄「・・・・・・」
上四元祐玄「まさか、アンタよりもか?」
シャドー(影沼ノエル)「わからん・・」
シャドー(影沼ノエル)「だが間違いなく、最強の相手だな」
上四元祐玄「そんな強い男なのか・・」
シャドー(影沼ノエル)「いや、女だよ」
〇近未来の通路
トム「ミライ?」
羽田ミライ「なに?」
トム「僕、夢を見た気がする」
羽田ミライ「え、ホントに?」
トム「うん、本当」
羽田ミライ「どんな夢?」
トム「うん」
トム「全ての色が混じった様な世界に」
トム「僕がいた気がする」
羽田ミライ「へえ・・・面白いね」
トム「うん」
トム「ねえ、ミライ?」
羽田ミライ「ん?」
トム「僕、前にミライとシャドーの」
トム「違いが答えられなかったでしょう?」
羽田ミライ「うん」
トム「でも、判ったよ」
羽田ミライ「・・・じゃあ」
羽田ミライ「私とあの男は、何が違うの?」
トム「色だよ」
トム「シャドーが纏う色は」
トム「とても暗くて冷たいけど」
トム「ミライが放つ色は」
トム「明るくて、暖かいんだ」
羽田ミライ「・・・そう」
羽田ミライ「嬉しいな」
トム「ねえ?」
トム「僕が見たのって、夢なのかな?」
トム「それとも機械のバグかな?」
羽田ミライ「それは・・」
羽田ミライ「アナタが好きな方だと思う」
トム「そうか・・」
トム「じゃあ、あれが夢なんだね」
〇時計台の中
上四元祐玄「・・・女だと?」
上四元祐玄「冗談か?」
シャドー(影沼ノエル)「いや、本当だ」
シャドー(影沼ノエル)「俺とほぼ互角の戦闘能力を持っている」
上四元祐玄「・・・そんなヤツがいるのか」
シャドー(影沼ノエル)「ああ」
上四元祐玄「生意気な女だな」
上四元祐玄「娘達の為に、そいつを始末してくれるか?」
〇黒
〇車内
垣崎マサル.「また島崎先生とご一緒出来るなんて!」
島崎アイ「私が垣崎くんを指名したのよ」
垣崎マサル.「ええ?」
垣崎マサル.「本当ですか!」
島崎アイ「本当よ」
垣崎マサル.「いやぁ、感激です!」
島崎アイ「大袈裟ね」
垣崎マサル.「あ、あの 今回は僕もしっかり働きますよ!」
垣崎マサル.「ちなみに今日はどんな仕事なんですか?」
島崎アイ「今から、鷹野ヒトミに会いに行くの」
垣崎マサル.「え?」
垣崎マサル.「ぼ、僕、あの方、苦手なんですよぉ」
島崎アイ「・・そうなのね」
島崎アイ「でも大丈夫よ」
垣崎マサル.「そうですか?」
島崎アイ「うん、今日で最後になるはずだから」
垣崎マサル.「え?」
〇王宮の入口
垣崎マサル.「り、立派ですね・・」
島崎アイ「彼女、ここに独りで住んでるのよ」
垣崎マサル.「・・・そうなんですか」
島崎アイ「よくないものに蝕まれてるわ」
垣崎マサル.「・・・・・」
島崎アイ「セキュリティ・・解除」
島崎アイ「お粗末ね」
島崎アイ「危機管理が甘すぎる」
垣崎マサル.「・・・・・」
島崎アイ「垣崎くんは、ここで待ってて」
垣崎マサル.「は、はい」
〇黒
〇魔法陣のある研究室
鷹野ヒトミ.「・・・・・・」
鷹野ヒトミ.「何なの? どうやって入ったのよ」
島崎アイ.「玄関から入ったわ」
鷹野ヒトミ.「あっそ・・」
鷹野ヒトミ.「でも、アンタ」
鷹野ヒトミ.「ノックもしないで、人の部屋に入るんだ」
鷹野ヒトミ.「やっぱ、品がないわ」
島崎アイ.「悪かったわね」
島崎アイ.「ねえ?」
島崎アイ.「何の用か判るよね?」
鷹野ヒトミ.「判るわけないでしょうが!」
鷹野ヒトミ.「訪ねてくるなら連絡くらいしなよ」
島崎アイ.「連絡したら逃げるでしょ?」
島崎アイ.「心当たり、あるわよね?」
鷹野ヒトミ.「チッ!」
鷹野ヒトミ.「・・ホントこの女、嫌いだわ」
鷹野ヒトミ.「じっくりお話ししてやるから」
鷹野ヒトミ.「ちょっとだけ待ってな」
島崎アイ.「いいわ」
島崎アイ.「え?ウソッ!」
鷹野ヒトミ.「うぐっ!」
垣崎マサル.「・・・せ、先生」
垣崎マサル.「あ、あの、今日で終わりって・・・」
垣崎マサル.「こういう意味だったんですか・・」
島崎アイ.「・・・全然、違うわ」
島崎アイ.「キッチリ話し合うつもりだったのに・・」
〇黒
〇車内
垣崎マサル.「・・・・・・」
垣崎マサル.「あ、あの・・」
垣崎マサル.「・・予想外の展開でした」
島崎アイ.「それは、私も同じよ」
島崎アイ.「彼女、不明瞭な通信記録が多かったから」
島崎アイ.「かなり前から内偵が入ってたの」
島崎アイ.「最近、大胆になってきてね」
垣崎マサル.「・・・そうなんですか」
島崎アイ.「垣崎くんも判ってると思うけど」
島崎アイ.「私達って そんな甘い組織じゃないのに」
島崎アイ.「長くいると感覚が麻痺するものね」
垣崎マサル.「それは・・」
垣崎マサル.「人によると思います」
垣崎マサル.「志の問題じゃないでしょうか」
垣崎マサル.「島崎先生は、ずっと立派ですから」
島崎アイ.「・・・ありがと」
島崎アイ.「でも、ショックだわ」
島崎アイ.「彼女が私を」
島崎アイ.「殺したいほど嫌ってたなんてね」
垣崎マサル.「・・・・・・」
〇時計台の中
上四元祐玄「なあ?」
上四元祐玄「それで、引き受けてくれるのか?」
上四元祐玄「このままじゃ」
上四元祐玄「娘達は浮かばれないし」
上四元祐玄「俺の気持ちは収まらねえ」
上四元祐玄「ギャラはアンタの望むだけ払う」
シャドー(影沼ノエル)「・・・・・・」
シャドー(影沼ノエル)「俺が求めてるのは金じゃない」
上四元祐玄「・・・何?」
上四元祐玄「じゃあ、一体何が欲しいんだ?」
シャドー(影沼ノエル)「俺が欲しいのは」
シャドー(影沼ノエル)「・・・スリルだよ」
シャドー(影沼ノエル)「それも」
シャドー(影沼ノエル)「生死をかけた、究極のスリルだよ」
〇見晴らしのいい公園