人には、生きていく言い訳が必要なときもあります(脚本)
〇霊園の駐車場
〇霊園の入口
・・・・・・。
〇墓石
妻が、二十一歳で事故死した娘のお墓のまえで、手をあわせていた。
私は妻のとなりにすわり、妻と娘の聞こえない会話に、耳をそばだてていた。
妻はバックから結婚式の招待状と、同封されていた手紙をだして、お墓のまえでそれを広げた。
香奈子「まいちゃんが天使になってからもう五年だよ。そしてまだ五年なんだよ」
香奈子「中学の頃からのまいちゃんの親友のマリちゃんが、私たち夫婦二人を、結婚式に招待してくれたんだよ」
香奈子「まいちゃんが元気だった頃の写真の動画もね、式場で流してくれるんだって」
〇散らばる写真
〇明るいリビング
娘が亡くなってからも、娘の友達や妻の友達が、五年ものあいだ、ずっと家に来て、妻のおなじ話につきあってくれていた。
〇空
〇明るいリビング
〇明るいリビング
娘と妻の人を思いやる心と、深い愛情が、多くの人の心を惹きつけて離さないのだろう。
もし、私が娘の立場で若くしてあの世に逝ったとしても、私の両親に結婚式の招待状をくださるとは思えない。
いや、世間一般でもそこまでしてくれる人はそうはいないだろう。
〇雲の上
〇墓石
私は妻の微笑みを、久しぶりにみつめていた。
香奈子「まいちゃんは、私がもう少し長く生きてほしいと思っているんだね」
香奈子「だって、もう一段落したからそろそろ逝こうかなって思うと、いつもこんな形で、生きていくための言い訳をつくってくれるんだもの」
香奈子「まいちゃんの席もあるんだからね。一緒に出席しようね」
妻は娘に語りかけながら、なんども頷いていた。
いつか、聞こえていない妻の心の声が、私の心に届く日がくればいいなと思った。
〇幻想2
〇幻想空間
〇明るいリビング
fin
優しいお友達の姿も、それを奥さんと娘さんの美徳によるものだと思う旦那さんも、素敵ですね。きっとこれからもそうやって娘さんを中心に、優しさの輪が広がっていくのでしょう。誰かが亡くなると、生きていたらもっとたくさんの人に愛してもらえたかもしれないのにと思うものですが、残したものはもう十分にあるのだと気づかされました。ありがとうございました。
若くして子を亡くした親御さんの気持ちって、本当に計り知れない辛さだと思います。でも、こんな素敵なお友達との縁を残してくれた娘さん、本当に素敵な娘さんだったんだろうなと思います。
生きる理由ってなんでしょうね。
親より先に子が亡くなるって、相当辛いと思います。
そんなとき何かを理由にしないと、何かに頼るってことが大事なのかもしれませんね。