4 おそろい(脚本)
〇電車の中
朝の通勤で使っている電車で、みやびと同じ車両になった。
宮田(お・・・みやびだ)
立っている乗客がかなり多いが、満員電車というわけでもない。みやびは乗車口の傍に立って、窓の外をぼんやりと眺めていた。
宮田(高校の制服が眩しいな。 ──いや、これは完全におっさんの発言か・・・)
高校生である時間なんてほんの三年、大人になってしまった僕にとってはあっという間だ。
みやびはその儚い時間を生きている、綺麗な生き物・・・
宮田(JKなんて単語でくくってしまうのは、もしかしたらもったいないくらいの──)
朝からよくわからないことを考えているのは、僕も疲れているのかもしれない。
宮田(最近残業続きだったけど、昨夜帰宅したら・・・嬉しいことがあったんだよな)
みやびがポストにクッキーの差し入れをしてくれていた。そのことに対して一言礼を言うべきだろう。
宮田「おはよう、みやび」
揺れる電車の乗客の隙間を縫うようにして、みやびの立っているところまで行く。
小川みやび「同じ電車に乗るなら、そう言ってよね」
突然声を掛けられて、みやびは少し目を大きくした。
宮田「え、いつ言えば」
宮田(というか、言う必要があったのだろうか・・・)
小川みやび「クッキー、食べた?」
宮田「ああ、旨かったよ。わざわざありがとう」
小川みやび「べ、別にわざわざとかじゃないんだからねっ。ついでよ、ついで」
宮田(何のついでなんだろう?)
宮田「ついでに、手紙も書いてくれた?」
小川みやび「そう、ついでなの。勘違いしないで」
宮田「なんの、勘違い?」
小川みやび「・・・なんでもいいけど」
みやびはツンと僕から顔をそらし、また窓の外の景色を見た。
特に面白くもない景色が流れてゆくだけなのに、なんでそんなに外を見るのだろう。
宮田(僕と一緒にいるのがつまらないのかな・・・)
そこから離れようとしたら・・・
小川みやび「どこ行くのよ。ここにいて」
宮田「えっ」
どきりとした。
甘えるような口調ではないが、僕がいなくなることに対して不満を抱いているのはわかった。
小川みやび「痴漢対策。オジサンでも、傍にいたら少しは役に立つでしょ」
宮田(オジサン・・・か)
みやびがくすりと笑った。その笑顔が小悪魔的で、僕はまたどきりとした。
宮田(わかってたけど、 名前は呼んでもらえない・・・)
宮田「そういやみやびって、僕の名前を知っているの?」
小川みやび「宮田さんでしょ」
宮田「あ、知ってたんだ」
小川みやび「みやびと似てるから、忘れない。 ・・・お揃いね」
みやびはまたツンと顔をそらしたが、何故か耳が少し赤かった。
宮田(・・・可愛いんだけど? どうすれば・・・)
おそろい end