開かずのドア(脚本)
〇殺風景な部屋
???「僕には・・・関係ない・・・関係ない・・・」
鳴り響く騒音を掻き消すように
ひたすら独り言を続けた
???「関係ない関係ない関係ない関係ない・・・」
「助けて・・・!ねぇ・・・!」
???「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」
???「僕には・・・!関係ない・・・!」
騒音を塞ぐように、ヘッドホンで音楽を聴く。
「・・・」
こうするだけで、外の音が一切耳を通さない。便利なものだ。
ここ何年もずっと、
ドアの向こうを見ていない。
今まで何人もの悲鳴や、
助けを求める声が聞こえた。
だが僕は、無視をするしかなかった。
怖かったんだ。
ドアの向こう側がどうなっているのかを
知らないまま生きている。
〇殺風景な部屋
ある時から、やけに外が静かになった。
ほんのちょっとの希望だった。
もしかしたら、外は元の世界に戻っていて
また元の日常に戻れるんじゃないかって
こうして僕は、ドアを開けてしまった。
〇荒廃したセンター街
???「・・・っ!」
何も残っていなかった。
そう、世界中では戦争が起きて
どこもかしこも放射線で焼かれてしまった。
そんな昔話みたいなことが起きるなんて、
思ってもみなかったんだ。
???「うう・・・」
???「母さん!?」
焼け爛れたそれは、もう母さんの形をしていなかった。
母さん「・・・アァ・・・」
???「・・・」
僕は何も見なかったふりをして、
もう一度シェルターへと戻った。
〇殺風景な部屋
現実を見るには、あまりに惨すぎたからだ。
だって、あんな状態なんだ
僕に何ができるっていうんだ!
何もできないだろう!?
戻るのが正解だろ!?
・・・
開けなきゃ良かったんだ、最初から
開けなければ、ドアの向こうは平和なままだったんだ。
〇殺風景な部屋
あれから、どれくらいの月日が経っただろう
シェルターの中の食料も、もう底を尽きた。
僕は・・・何もできないまま死ぬんだ・・・
せめて母さんだけでも、
なんとかできなかったのか・・・
後悔ばかりが、頭の中を駆け巡る。
こんなところで一人で生きて。
母さんは、きっと僕を守るために戦ってくれていて・・・
そんな僕は、生きる価値すらない・・・
餓死か・・・
しょぼい死に方・・・
僕にぴったりだな
僕はヘッドホンをして、
最期の音楽を聴いていた。
自室に引きこもる少年のお話かと思ったら、まさかのシェルターと戦争世界!?
厭世的な空気感漂う中の主人公の苦悩、響きますね!