歪んだ親友(脚本)
〇シックなカフェ
映画に行った日──
副島 心夏「ね〜、この『ベリーベリーパンケーキ』絶対映えるっしょ!」
副島 心夏「これ頼もっかな〜」
大崎 玲莉「確かに美味そーね」
副島 心夏「だよね〜!頼もっ!」
大崎 玲莉「・・・ま、食うのは私だけど」
副島 心夏「あははは!まぁ奢るから許してよっ!」
大崎 玲莉「・・・ま、タダで食えんならいっか」
大崎 玲莉「・・・結構混んでんね」
副島 心夏「ここのカフェ、SNSでも人気のカフェなんだ」
副島 心夏「だから混雑するのもしゃーない」
カフェの店員「あの子・・・お客様」
副島 心夏「はい?」
大崎 玲莉「店員さんどうかしました?」
カフェの店員「申し訳ないのですが・・・相席にしても宜しいですか?」
カフェの店員「店内が混雑しておりまして・・・」
副島 心夏「大丈夫ですよ〜」
カフェの店員「ありがとうございます!」
大崎 玲莉「・・・相席OKにしたんだ」
副島 心夏「外に行列出来てるし、店員さん困ってたしさぁ〜」
副島 心夏「・・・もしかして、相席嫌だった?」
大崎 玲莉「そういうんじゃなくて、適当な理由つけて断りそーだと思ったから」
副島 心夏「あー、まぁ中学生の時ならそーしたかも」
カフェの店員「こちらへどうぞ〜」
佐々木 猛志「ゲェッ・・・」
副島 心夏「ゲッてなんだよ」
大崎 玲莉「お前、何しに来たよ?」
佐々木 猛志「友達と映画行ってきて、このまま帰るのもな〜って思って1人でよっただけ」
大崎 玲莉「・・・私らも映画の帰り」
大崎 玲莉「つーかはよ頼もうや、マジで行列出来てっし」
副島 心夏「だね〜、佐々木は何すんの?」
佐々木 猛志「このハワイアンパンケーキってやつ」
副島 心夏「うわ、キモ」
佐々木 猛志「うっせぇ」
佐々木 猛志「店員さーん、注文いっすかー?」
佐々木 猛志「アイスカフェラテとハワイアンパンケーキ1つ〜!」
副島 心夏「ウチ、クリームソーダとベリーベリーパンケーキ1つ〜!」
大崎 玲莉「アイスティー1つ」
副島 心夏「・・・ま、パンケーキ食べんのは玲莉だけどね〜」
佐々木 猛志「は?自分で食えよ」
副島 心夏「こんな大きいの食べれないし!」
佐々木 猛志「小さいヤツ頼めや」
副島 心夏「わかってないなぁ、大きい方が映えるんだよ!」
佐々木 猛志「つーか、玲莉は文句ねぇのか?」
大崎 玲莉「こーゆーのは心夏の奢りだし、タダで美味いもん食えるし」
大崎 玲莉「最新のトレンド抑えられるし、普段行かない店とか行けるからメリットあるし文句なし」
副島 心夏「ね〜、玲莉も文句なしって言ってんだからいいの!」
佐々木 猛志「・・・ま、それでいいならいいけどよ」
〇シックなカフェ
女性A「このカフェ、SNSで人気あったから一回来てみたかったんだよね〜!」
女性B「ここ、店内もオシャレだし雰囲気もあっていいよね〜」
女性A「ね〜」
佐々木 猛志「そだ、お前らインスタ見た?」
副島 心夏「は?インスタなんか面白いのあんの?」
大崎 玲莉「さぁ?知らない」
佐々木 猛志「福原のインスタ!」
大崎 玲莉「・・・真凛って、インスタやってたんだ?」
副島 心夏「へー、あの子インスタやってたんだ?」
佐々木 猛志「めっちゃヤバいから!見てみろよ!」
副島 心夏「・・・ぶっ!」
副島 心夏「あっはは!何これやばぁ〜っ!」
大崎 玲莉「・・・加工しすぎて輪郭だけじゃなく背景まで歪んでるし」
佐々木 猛志「加工詐欺がバレて今プチ炎上してんの」
副島 心夏「他人事みたいに言ってるけど、よく見たら1番最初に指摘したのお前じゃん」
佐々木 猛志「俺って思った事はSNSでもリアルでもすぐ言っちゃうからさー」
佐々木 猛志「我慢できなくて『加工しすぎて色々歪んでてワロタw』ってコメントしたらちょっと炎上した」
副島 心夏「つか、フォローしてたんだ?」
佐々木 猛志「当たり前じゃん!同級生だし?」
佐々木 猛志「あとさ、ストーリーの上の白いヤツあんじゃん?」
佐々木 猛志「更新しすぎて刻んだ白ネギみたいになってっから!」
副島 心夏「刻んだ白ネギはセンスありすぎ!」
副島 心夏「完全に自己顕示欲と承認欲求の塊じゃん?」
副島 心夏「アイツもうおしまいだね〜」
佐々木 猛志「誰のせいでこんなことになったと思ってんだよ」
副島 心夏「はぁ?ウチインスタやれなんて一言も言ってない!」
佐々木 猛志「そうじゃなくて、誰のせいで福原が承認欲求のバケモンになったかってことだよ!」
副島 心夏「お前だって一緒になって笑ってたじゃん?」
大崎 玲莉「・・・真凛、変わったね」
大崎 玲莉「バカな男とデキ婚して惨めに格安ボロアパートで死んでそう」
「あははははははははははははっ!!」
副島 心夏「玲莉ウケる〜!」
佐々木 猛志「玲莉辛辣すぎ〜!!」
女性A「・・・笑い声大きすぎじゃない?」
女性B「もう少し静かにして欲しいよね・・・」
女性B「あのぉ・・・」
副島 心夏「高校デビューにしてもさぁ、痛すぎぃ!」
佐々木 猛志「高校行かずに遊んでるらしいよ?」
佐々木 猛志「言っちゃえば最終学歴中卒!」
副島 心夏「ギャハハ!高校にすら行ってないのかよ〜!」
副島 心夏「マジ玲莉の言う通り、バカとデキ婚ルート確定じゃん!」
女性B「・・・」
女性A「・・・もう、さっさと食べて出よ」
女性B「・・・うん」
〇通学路
副島 心夏「玲莉ってマジ大変だよね〜」
副島 心夏「ウチらがこうやってくだらねー話してる間玲莉は塾で勉強してんだよ」
副島 心夏「偉すぎじゃね?」
佐々木 猛志「俺らも来年は玲莉みたく勉強漬けになってんだろーな」
副島 心夏「受験生って大変だね」
佐々木 猛志「・・・なぁ、心夏」
副島 心夏「あ?」
佐々木 猛志「・・・なんか、4月あたりから妙な違和感を感じるのは俺だけか?」
副島 心夏「妙な違和感・・・?」
佐々木 猛志「なんかさぁ・・・前も高二だった気がするんだよ」
副島 心夏「・・・どういうことよ?」
佐々木 猛志「俺もよくわかんねぇけど・・・去年は1年のはずなのに去年も2年だった気がするんだ」
副島 心夏「・・・あれ」
副島 心夏「言われてみれば・・・ウチも違和感を感じる」
副島 心夏「ウチさぁ・・この時期に彼氏がいた気がするんだよ」
佐々木 猛志「彼氏?お前に?」
副島 心夏「1ヶ月ぐらいで別れた彼氏が」
佐々木 猛志「・・・そんな彼氏、覚えてる必要なくね?」
副島 心夏「うん・・・あとさぁ結衣のことなんだけど」
副島 心夏「結衣とはさぁ・・・前から仲良かった気がするんだよね」
副島 心夏「今年仲良くなったばっかなのに」
佐々木 猛志「そう・・・なのか?」
副島 心夏「七海は今年から友達になりました〜って感じなんだけど、結衣とは去年から仲良しって感じなの」
副島 心夏「変な感じ・・・」
佐々木 猛志「・・・あのさぁ」
佐々木 猛志「・・・俺らの同級生に、死んだやつっていないよな?」
副島 心夏「は?誰も死んでないし?」
副島 心夏「真凛だって、生きてんじゃん」
佐々木 猛志「だよなぁ・・・」
佐々木 猛志「知り合いの誰かが・・・死んだ気がするんだよ」
副島 心夏「物騒なこと言わないでよ」
副島 心夏「死んだことにされた子が不憫すぎるよ」
副島 心夏「その子に謝んなよ」
佐々木 猛志「いや、誰が死んだのかわかんねーから謝りようがねーよ・・・」
佐々木 猛志「・・・ま、誰かが死んだ気分でいるのも胸糞悪いから誰も死んでなくていっか」
〇女の子の二人部屋
副島 心夏(佐々木には『勝手に誰かが死んだことにするなよ』なんて言ったけど・・・)
副島 心夏(言われてみれば、確かに誰かが死んだ気がする)
副島 心夏(・・・でも仮に死んだとして、その死んだ人は誰?)
副島 心夏(もちろん5組のみんなは生きてるし、1年3組のみんなも全員生きてる)
副島 心夏(中学時代の奴らも、今何してるかわかんない人は何人かいるけど・・・)
副島 心夏(その人たちも多分生きてるはず)
副島 心夏(・・・つか、誰かが死んだら大騒ぎになってるはずだし)
副島 春子「心夏、難しい顔してどした?」
副島 心夏「あ、お姉ちゃん」
副島 心夏「ちょっと考え事してただけだよ」
副島 春子「そっか」
副島 春子「つか聞いてくんない?」
副島 春子「インスタで話題になってるカフェに行こうと思ってたんだけどさー」
副島 春子「そのカフェ、Twitterによると大声で騒ぐ迷惑客がいたらしいの!」
副島 春子「だから行く気なくしちゃって・・・はぁ〜イライラする」
副島 心夏「うわ、そいつヤバいね〜」
副島 心夏「人の気持ちがわかんない奴って最悪だよね」
副島 春子「だよね!マジ最悪!」
副島 心夏「お姉ちゃんも災難だったね〜」
副島 心夏「・・・お姉ちゃん、すっごい変なこと聞いていい?」
副島 春子「すごい変なこと?」
副島 心夏「・・・お姉ちゃんの知り合いにさ、死んじゃった人っている?」
副島 春子「ホントにすっごい変なことだね・・・」
副島 心夏「ごめん、やっぱり変だよね」
副島 春子「・・・ウチの知り合いに死んじゃった人なんていないよ」
副島 心夏「だよね〜」
副島 心夏「なんで誰かが死んだ気がするんだろ?」
副島 春子「・・・アンタ、病んでる?」
副島 心夏「・・・病むほどの悩みは無い、と思う」
副島 春子「そう?ならいいけど・・・」
副島 心夏(あぁ言ったけど・・・ウチ、本当は病んでんのかも?)
副島 心夏「・・・裏アカでも開こ」
〇SNSの画面
副島 心夏(・・・やっぱり、ウチに悩みなんてないな)
副島 心夏(ただウチが頭おかしくなっただけだ)
副島 心夏(でもせっかくTwitterの裏アカ開いたし、なんか呟こうかなぁ)
副島 心夏(そだ!駅前で玲莉待ってる時に撮ったバケモンカップルの動画晒しちゃお〜)
副島 心夏(この2人、今見てもガチきしょいわ〜)
副島 心夏(デブス女とハゲ男が公共の場でいちゃついてんじゃねえよ、見せつけられる気持ち考えな?)
副島 心夏(そんなんだからSNSにモザイク無しで晒されちゃうんだよ〜)
🥥🧡「『今日、駅前でバケモンカップル発見🤣』」
「『うわ、何これキッツ(゜∀`;)』」
「『キモこいつら🤮』」
副島 心夏(ヤバ、1分でそこそこいいねついた!)
副島 心夏(やっぱ、あのバケモンカップルに衝撃受るよね〜)
「『この動画みて口からチャーハンでたww』」
🥥🧡「『口からチャーハンww食事中にこんなもん見せてすんません笑笑』」
副島 心夏(口からチャーハンはオモロ)
副島 心夏(つか、ウチ裏アカ開きすぎじゃね?)
副島 心夏(ほぼ毎日なんか投稿してるし、暇かよ)
副島 心夏(本垢ではたまーに友達との写真や食べ物あげるだけなのに・・・って本垢でパンケーキの写真あげてなかった)
副島 心夏(よし、完了・・・ん?)
「『今日noonでお茶してたらうるさい迷惑客いたんだけど!マジ最悪!』」
副島 心夏(これがお姉ちゃんの言ってた呟き?)
副島 心夏(noonって、ウチらが行ったカフェじゃん!)
副島 心夏(そんな迷惑客いたかな・・・?)
副島 心夏(・・・もしかしたら、この人の被害妄想って可能性もあるな)
副島 心夏(にしても裏垢の🥥🧡・・・マジで嫌なことしか言ってない)
🥥🧡「『今年の担任ガチハズレ。男と女で扱い違いすぎ』」
🥥🧡「『クラスで不良ぶって偉そうにしてくる奴マジで死ね』」
🥥🧡「『音楽の時間、真面目ぶって大声で歌ってる女子マジ痛々しかった〜w』」
🥥🧡「『大して上手くもないくせにデケェ声出してんじゃねぇよバーカ』」
🥥🧡「『歌のテスト、同じグループの男子声ちっさすぎ』」
🥥🧡「『そんなんだからテメーはいつまで経っても陰キャなんだよ』」
副島 心夏(うるさいとか声聞こえないとか・・・どっちだよ)
副島 心夏(裏アカの自分、言ってることめちゃくちゃ過ぎん?)
副島 心夏(こんなのバレたら100パー嫌われるわ)
副島 心夏(・・・にしても、高二になってからめっちゃ裏アカで呟く回数増えたな)
副島 心夏(・・・今のクラスでいい子ぶってるせいで抑圧されてんだろな)
副島 心夏(中学みたいに、簡単に誰かをいじめたりできないもんね)
副島 心夏(・・・真面目ちゃんのフリするの、ホント疲れる)
副島 心夏(・・・もしかして、これが鬱の種?)
副島 心夏(爆発する前に、発散しとこ)
🥥🧡「『夏休みマジで終わんないで欲しい、学校でいい子ぶんのマジで疲れる』」
🥥🧡「『クラスのイツメンの黒髪ロング、真面目過ぎてつまんないから一緒にいて疲れる』」
🥥🧡「『クラスのイツメンのポニーテール、一緒にいて安定ではあるけど普通過ぎて刺激ないから退屈』」