料理魔法少女は会食恐怖症

VS悪食王(脚本)

料理魔法少女は会食恐怖症

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〇寂れたドライブイン
ぽん太郎「僕と契約して料理魔法少女になってぽん!」
田染みどり「いやです!」
  わたし、田染(たしぶ)みどり 蕎麦屋のむすめ。
  学校から帰ってきたら家の前に喋るたぬきがいたの!
ぽん太郎「早くこの黄金の包丁を手にとって ぽんぽこハングリーパワーメークアップと叫ぶんだぽん」
田染みどり「ムリムリ 何いってんの 大丈夫かな  私おかしくなっちゃったのかな?」
アキ「見つけたぞ みどりのたぬき」
ぽん太郎「ギャッ! キターッッ 食材にされてしまう」
田染みどり「ちょったぬき すがりつかないでよ」
アキ「お前が新しい料理魔法少女か」
田染みどり「ちがいますちがいます 私料理とかきらいです 会食恐怖症だし」
アキ「まあいい 魔法少女ごと 悪食王に献上しよう」
「ギャーッ!!!」
田染みどり「妖術で動けない・・・?!」
ぽん太郎「みどりちゃん・・・ これを」
  なけなしの力でたぬきから包丁を受け取る
田染みどり「ええい ぽんぽこハングリーパワー!」
田染みどり「うわー!」
ぽん太郎「なんて強烈なひかり」
アキ「目が〜!」
アキ「はっ オレは何を・・・?」
ぽん太郎「あきくん! 目覚めたぽん?!」
アキ「は? ぽん太郎どうしてこんなとこに?」
田染みどり「ん・・・?」
  魔法少女化して動揺している自分をよそにキツネとタヌキが喋り合っている・・・
田染みどり「あの よくわからないけど これで解決したんだよね  どうやったら魔法少女解除できる?  私 そういうのとは関わりたくない」
  平穏が一番だ!
アキ「すまないが 君の家系から料理魔法少女が生まれることになっている」
田染みどり「え?? お母さんもおばあちゃんも料理魔法少女やってたとか聞いたことないけど?」
アキ「ちょうど君の番に当たったのだ 悪食王の復活の年と」
田染みどり「なにそれ やめてほしい」
田染みどり「なに? 空が変」
アキ「時空の裂け目から悪食王が覗いているのだ 早く塞がねば」
アキ「我々の世界と現し世はもう混じり合う時期ではない」
アキ「お願いだ 一旦こちらへ来てくれ」
ぽん太郎「僕からもお願いするポン」
田染みどり「そんな頭下げられても」
アキ「このままではまずいことになってしまう」
田染みどり「なによ 断ったら私は悪者みたい ええい どこでも連れてけー!」
  キツネにおんぶされて私は時空の裂け目に飛び込んだ

〇山の中
田染みどり「ワァ もふもふだらけ 天国かな?」
きつね「あき様 ポン王子 ご無事で何より その方が料理魔法少女さんですね」
アキ「悪食王の様子は?」
たぬき「まだ大丈夫です 我々が結界を張っています」
ぽん太郎「ここは妖界 普段、狐の里と狸の里は分かれているけど、悪食王復活の今は協力関係にあるぽん」
田染みどり「で・・・私はどうしたらいいの」
田染みどり「怖いのは嫌だ はやくかえりたい」
アキ「その金の包丁で悪食王を鎮める飯を作って欲しい」
田染みどり「料理の自信ないんだけど・・・」
アキ「大丈夫だ 君が作ることが重要なのだ」
田染みどり「どうゆうこと?」
アキ「実際に作ってみたらわかる」

〇怪しげな祭祀場
悪食王「ぐるるるるるる」
田染みどり「こわ・・・・・・ な・・・何を作ればいいの? 満足するの?」
悪食王「・・・・・・ ケーキ・・・・・・」
田染みどり「ケーキだって」
  材料とレシピが運ばれてくる
田染みどり「・・・・・・ いちごがちよっと変な形になったけど できた」
田染みどり「はい、どうぞ」
田染みどり「・・・秒でたいらげられてしまった」
  それから、クレープ、シュークリーム、シュゼット、プリン、マカロン・・・などなど
  言われるままにお菓子を作り続けた
田染みどり「え・・・ これってきりがあるのかな?」
田染みどり「何を作ればいいの?」
悪食王「グラタン・・・」
田染みどり「あっちっち」
田染みどり「・・・レシピをにらみながらなんとかできた」
田染みどり「また秒でたいらげられてしまった」
田染みどり「・・・甘いものばかりだなあ」
田染みどり「・・・何を作ればいい?」
悪食王「・・・」
  何も返ってこないが目玉が濡れているのが見える
田染みどり「何も言わないんじゃわからないんだけど・・・」
悪食王「だまれ 黙らなければ食うぞ」
田染みどり「めんどう・・・なんでこんなことしてるんだろう」
田染みどり「眠い・・・」
悪食王「だめだだめだ 狐もたぬきもそこの女も全員食ってやる」
悪食王「ぐおおおお」
田染みどり「ちょっ まって まって 何を作ればいいの」
悪食王「いらん!」
田染みどり「ええ? 食べたいんじゃないの??」
悪食王「ぐるるるるるる」
田染みどり「もうめんどくさいなあ 刺すわよ」
  私は金色の包丁を悪食王に突き刺した
悪食王「きゃあああ」
  結界の外がどよめく

〇狭い畳部屋
みどり「ここは・・・」
パパ「もっと食べなきゃ大きくなれないよ」
ママ「元気がないんじゃないの? 病気なんじゃないの?」
みどり「私は至って健康だ! 家族の誰よりも。 病人扱いするな!」
みどり「体小さいからそんなに食べられないし・・・ なんでそこまでして大きくならないといけない?」
みどり「高身長には憧れるけど 兄みたいに足首引っ張られたりめちゃくちゃスポーツしたりしてまで伸ばしたいとも思えない」
ママ「あ そんな変な食べ方よそでしないでよ」
みどり「ソースがご飯に絡まるし器をきれいになって、洗うときの水の量が減っていいと思ったんだけどな」

〇教室
先生「残飯0ウィークなので、全員頑張って食べましょう」
みどり「ウワァァァ 最悪だ・・・・・・」
先生「ねえ このサイコロステーキ捨てたのみどりさん?」
みどり「・・・」
???「あの子昼休みになっても食べてるよ」
みどり「なんで なんで 食べるのに 頑張るとか プレッシャーがいるの?」
みどり「ああ 何も食べないで済んだらな 太らないし 金もかからないし 会食プレッシャーもないし・・・ 食べ物なんてテキトーでいい」

〇店の入口
田染みどり「ああ 窓の中に楽しそうな女子会の様子が見える うらやまし・・・」
田染みどり「何も気にせず女子同士でスイーツとか食べたりできる人生を送ってみたかった」
アキ子「いいじゃん 女子会」
田染みどり「んおっ?!」
ポン子「あたしポン子」
アキ子「うちはアキ子」
田染みどり「えっ」
ポン子「何が食べたい? 妖界のスイーツはいくら食べても太らないぽん」

〇テーブル席
田染みどり「ロールケーキ食べたい」
ポン子「オーケー!」
ポン子「この葉っぱを よいしょ!」
田染みどり「ロールケーキに変わった! すご」
田染みどり「かわいい 写メりたい うまっ」
ポン子「ケーキにクレープ なんでもだしちゃうぽん」
田染みどり「うまままままま」
田染みどり「いくら食べても太らないなんて最高」
ポン子「いっぱい食べる君もかわいいぽん!」
田染みどり「へげっ?!」
アキ子「食べることは恥ずかしいことではない」
田染みどり「そうか・・・そうだったのか」

〇怪しげな祭祀場
  悪食王はみるみるうちに小さくなって手乗りサイズになった
田染みどり「いただきます」
  なんとなくそうした方がいい気がして 私は悪食王を呑み込んだ
  食への恐怖が消化されていく
田染みどり「これで 魔法少女の役目も終わりかな」
アキ「それは君に任せる」
アキ「過剰な痩せ信仰の想念によってできた狐の里と 過剰なグルメ信仰の想念によってできた狸の里」
アキ「これらの統合の架け橋になる存在を俺たちは求めている」
ぽん太郎「料理魔法少女、続けてほしいぽん!」
田染みどり「うーん 趣味でいいなら 続けてみようかな! 料理って科学実験みたいで面白いと思えたし。 なにより変身が楽しい」
ぽん太郎「やったぽん!」
  こうして私は料理魔法少女になった!
  ↓作者のイラストギャラリー 思いついた当時はメシマズだけど料理魔法少女というタイトルでした
  魔法少女と(動物形態の)たぬきのデザインは黒真珠さん
  きつねのデザインは作者です

コメント

  • 食べることにストレスを感じることほど嫌なことはないですね。日本の学校は好き嫌いとか全部食べきるまで・・とか色々とキマリがあって、彼女のような症状を生み出すのかも。

  • 読んでる間中、マルちゃん「赤いきつね」と「緑のたぬき」が食べたくなって、作者さんの術中にまんまとハマってしまいました。悪食王を飲み込んで食への恐怖もろとも消化するとは、なんと大胆なショック療法!タッチが異なるイラストギャラリーも見応えありました。連獅子のような赤いきつねの迫力がすごい。エプロンの赤いステッチが小粋ですね。

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