好奇心の代償

白黒柑橘

好奇心の代償(脚本)

好奇心の代償

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好奇心の代償
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〇大教室
マイ「ねえこのニュース見た?」
シオリ「なにこれ?「渋谷の行方不明多発!?無数の腕に引き込まれる現場を目撃した人も・・・・・・」」
シオリ「嘘くさ・・・・・・」
マイ「きっとこれはホントだって! その時の写真も出回ってるし」
シオリ「ボカシ入っててほとんど分かんないじゃん」
マイ「えー本物っぽいと思うんだけどなぁ・・・・・・」
マイ「じゃあさ!今度の休みに確かめに行こうよ!」
シオリ「ええ、やだよそんなの・・・・・・」
マイ「何もなかったらそのまま買い物にすればいいから!お願い!」
シオリ「分かった、分かったから揺すらないで・・・・・・」

〇道玄坂
マイ「なーんにもなかったね・・・・・・」
シオリ「そりゃそうでしょ」
シオリ「どうせ誰かが適当に流した怪談話だったんだって」
マイ「人通りの少ない怪しげな道とか、個人でやってる怪しい店とかにも寄ったのにー」
シオリ「ただの古本屋だったけどね」
マイ「シオリは気がついたら新しい服見に行ってるし」
シオリ「ごめんごめん、それにマイも後半はショッピングメインだったでしょ」
マイ「怪奇現象遭遇したかった!」
シオリ「はいはい。駅もうすぐ着くよ」
マイ「うえ~」
シオリ「・・・・・・あ、その前にそこのコンビニ寄らせて」
マイ「うん、私は外で待ってるねー」
マイ(オカルト話はいっぱい知ってるけど、遭遇したことは一度もない)
マイ(今日こそはって思ってたんだけど・・・・・・)
マイ「・・・・・・あれ?こんなところに裏道あったっけ?」

〇ビルの裏通り
マイ「こんな道今まであったっけ・・・・・・?」
マイ(異界へ繋がる謎の入口だったり、なーんて)
マイ「まさか、ね」

〇ビルの裏通り
マイ「あれ、もう行き止まり?」
マイ「まあそんなものだよね」
マイ「戻ろ・・・・・・」
  大通りに出るまで5分と掛からないだろう。出口の景色が見えてきたところで不意に足が止まる。
  いや、強制的に止められた。
マイ「え・・・・・・?」
マイ(私の足首、何かに掴まれてる?)
マイ(後ろには誰もいなかったはずなのに)
マイ(いや、誰かいたとしても足を掴むって何?)
  不審者か超常現象か、それは判別がつかない。
  それでも、待ち望んでいたかもしれない状況なのに、私は全く喜ぶことができない。
  足を掴む力はそれほど強くなく、今なら大通りへ無理やり進むことも出来そうだ。
マイ「シオリのとこに戻らないと・・・・・・!」
  足首から伝わってくるのは、人のものとは思えないひんやりとした感触。
  それを意識しないように大通りへ向けて歩みを進める。
  大通りの光景が見える地点までたどり着くのに、そう時間はかからないはずだ。
マイ「大丈夫、大丈夫・・・・・・」
マイ「うわぁっ!?」
  反射的に叫び声を上げてしまう。
  それまでは右足だけを掴んでいたナニカだったが、左足にもその手が伸びてきた。
  心なしか掴む力も先程より若干強くなっている気がする。
マイ(早く!早く逃げなきゃ!)
マイ(このままじゃ私、ホントに・・・・・・)

〇ビルの裏通り
  どれだけ歩いただろうか。
  日は沈み、夜の帳が下りても私は大通りへ出ることができていなかった。
マイ「な、なんで?入るときはすぐ奥まで着いたのに」
  肌寒さからか恐怖からか、鳥肌の立つ腕をさすりながらそれでも前へ進む。
  最初は片足だけを掴んでいたナニカの手は、今はその数を倍以上にして私の身体を雁字搦めにしていた。
  腕や肩までもが無数の腕に捉えられており、その力は今や万力の様で、身じろぎするのにも辛さがある。
  引きずるような前のめりの姿勢になりながらも歩みは止めない。
マイ(シオリ、心配してるかな・・・・・・?)
マイ(スマホも通じないし、もう帰っちゃってるよね・・・・・・)
マイ「・・・・・・あ!」
マイ(大通りだ!そこまで出れればきっと助かるはず)
  何の根拠もないが、そう信じていなければ心が折れてしまいそうだった。
  額から滲む汗がつたうのが不快だ。
  全身に絡みつく体温の無い腕が不快だ。
マイ「けど、あと少しで解放されるんだ・・・・・・!」
  少しでも早く届かせようと重たい腕を伸ばす。
  指先が暗い路地から明るい大通りへと差し込まれる。
マイ「これで、出れる・・・・・・」
マイ「・・・・・・え?」
  指先はそれ以上進まない。
  それどころか路地の方へ少しずつ戻されていく。
  それまではただ重たく、強く掴むだけだった腕が私を引っ張っている。
  気の遠くなる時間を掛けて歩いてきた、路地のその奥へ。
マイ「ま、待って!やっとここまで来れたのに・・・・・・」
  疲労した体では踏ん張りが効かず、徐々に徐々に奥へと引き戻されていく。
マイ「た、助けて!誰か!」
  視界の先の大通りには人が行きかっている。
  だと言うのに誰も見向きもしない。
  私の声に気づいてすらいない様子だ。
  新に伸びてきた腕が私の顔を、首を、腰を掴み、先程よりも更に強い力で引き寄せられる。
マイ「ひっ・・・・・・!お願い、誰か・・・・・・誰か・・・・・・!」

〇大教室
シオリ(あの日から数日、マイはまだ見つかってない)
シオリ(私がコンビニに行ってる間に行方不明なんて・・・・・・)
シオリ(本当に怪奇現象に巻き込まれた、なんてことはないだろうけど・・・・・・)
  出かける際にマイが語っていた怪談を思い出す。
シオリ「渋谷で行方不明・・・・・・まさかね」
  マイのために、私が出来る事なんてほとんどないだろう。
  それでもジッとしてはいられない。
シオリ「もう一回渋谷に行ってマイを探そう・・・・・・!」
  けれど私はその選択をすぐに後悔することになる。
  誰にも見つけられない、あの暗い路地の奥で・・・・・・。

コメント

  • 手の描写がすごくて、読んでるうちにゾクゾクしてきました。
    本当に「引き込まれてる」感じがするんですよ!
    ラストの不穏な感じもよかったです。

  • 人間の怖いもの見たさが招いた惨劇が、明解な描写でよく伝わりました。マイが何か目にしたわけでもなく、ただその感触から恐れを加速していく様がスリル満点でした。

  • ”手”の描写の怖さもあるのですが、マイの恐怖感がダイレクトに伝わってきました。希望と絶望の間で揺れ動く感情が生々しく、物語にぐっと引き込まれました。

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