この世界で恋をした

HANABI

エピソード1(脚本)

この世界で恋をした

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〇電車の中
  夕日の暖かい光りが電車内に差し込む
  僕は揺られながら目を閉じた
  浮かんでくるのはもうぼやけてしまう君の笑顔
  ねぇ、君は何処に行ってしまったの?
  君が居なくなって僕は青空が嫌いになってしまった
  綺麗な青はくすんで見える
  あの時僕は─、なんて意味のないことを考え後悔という波紋が僕の中に広がる
  現実に引き戻すようにアナウンスが流れる
  渋谷 渋谷
  
  僕は重たい瞼をあけ空を見る
  電車がホームに止まり、僕は腰を上げた

〇渋谷駅前
  改札を出ると沢山の人
  流石渋谷。とでもいうのだろうか。
  僕は友人を探すが、どうやらまだ来ていないようだ
  携帯が鳴る
佐藤 慎(さとう しん)「はい」
工藤 夏樹「わりー慎。10分くらい遅れそう」
佐藤 慎(さとう しん)「いいよ。改札出たところで待ってる」
工藤 夏樹「悪いな。飲み物奢るわ」
  夏樹からの電話が切れ僕は小さく溜息をつき耳にイヤホンをする
  懐かしく切ないメロディが流れ目を瞑った
  彼女と出会った日のことをそっと思い出す

〇公園通り
  彼女、神崎かなたと出会ったのは
  此処渋谷だった
  多分10年くらい前
10年前の慎(兄貴、人使い荒すぎ。何で渋谷なんか来ないといけないんだよ。CDくらい自分で買えっての)
  どうやらマイナーなアーティストで限られた店舗にしかCDを置いていないらしい。僕は大量のCDを抱え帰ろうとしていた
神崎 かんな「あの、」
10年前の慎(早く帰りてー)
神崎 かんな「あのっ!!」
  肩をポンと叩かれて振り向くとそこには見知らぬ女子高生が立っていた
10年前の慎「えっとダレ。てかなんの用っすか」
神崎 かんな「これ、落としましたよ?」
  彼女の手には兄貴に頼まれて購入したCDがあった
  買いすぎてどうやら一枚落としてしまったようだ
神崎 かんな「この世界で恋をした」
10年前の慎「は?」
神崎 かんな「このCDの曲名。私も好きでよく聴くんです。いい歌ですよね!」
10年前の慎「~//!!!」
  無邪気に笑う彼女。
  一目惚れ。だった
  初めての感覚に戸惑いながら気づけば連絡先を聞いていた

〇大学の広場
  僕等は意気投合し恋人になるまではそう時間はかからなかった
  大学も同じ場所に通い、幸せなキャンパスライフを送っていた
大学生の慎「かんな、次の休みちょっと付き合ってほしいんだけど」
神崎 かんな「うん!いいよっ」
  喧嘩も沢山したけど、お互いが歩み寄って乗り越えてきた
  かんなと付き合ってもうすぐ5年になる

〇ダブルベッドの部屋
  付き合って5年目の記念日
  僕は彼女にプロポーズをすることに決めてホテルを予約した
  素敵な日になるはずだった
  きっかけは、些細な喧嘩
佐藤 慎(さとう しん)「俺の気持ちも考えろよ!!」
神崎かんな「慎は私の気持ちを考えてないよ!!!」
佐藤 慎(さとう しん)「なんかもう、お前といるのキツイ」
神崎かんな「ッわかった・・・」
  そういってかんなは部屋を出ていった。
  言い過ぎた。思ってもない言葉。
  でもここはホテルだし、追わなくても彼女は帰ってくる
  それが間違いだった

〇黒背景
  キキィイッー!!
  ドンッ!!

〇黒背景
  あの日は大雨だった
  雨でスリップした車が彼女に突っ込んだ
  救急車で運ばれたが助からなかった
  プロポーズで渡すはずだった花束は彼女の腕に抱えられることもなく床に転がる
  僕があんなことを言わなければ、彼女を引き留めていたら、・・・もう遅い

〇渋谷駅前
  おい、おい!!
佐藤 慎(さとう しん)「っ!!!」
  目の前には僕のイヤホンを取って心配そうに見つめる夏樹の姿
工藤 夏樹「わりぃな遅くなって。 大丈夫か?」
佐藤 慎(さとう しん)「ああ、大丈夫だ。 少し考え事してただけだから」
工藤 夏樹「ならいいけど・・・。 場所移動するか。行きたいとこあんだよ」
  約束通り飲み物を奢ってもらい夏樹の行きたいところ。についていく

〇SHIBUYA SKY
  訪れたのは最近出来たと噂されている展望空間だった
  先ほどまで緋色に染まった町の景色は気づけば夜に染まっていた
佐藤 慎(さとう しん)「綺麗、だな」
工藤 夏樹「ああ、初めて来たときは正直言葉にならなかったよ(笑)」
  そのまま夏樹は頬を掻きながら少し深刻そうな顔で僕を見た
工藤 夏樹「来週此処で美紀にプロポーズしようと思ってんだ 3年記念日でちょうどいいかなって」
  早瀬 美紀
  夏樹の彼女で保育士をしている
  夏樹より年下だがしっかり者で僕から見てもいい子だと思う
佐藤 慎(さとう しん)「いいじゃん。お似合いだと思うよ」
工藤 夏樹「結婚したいって気持ちはあるんだ。 けど不安もある。 喧嘩だって沢山する。昨日だって些細なことで揉めた」
工藤 夏樹「俺は俺。それは変わらない。 けど誰かといるってことは多少俺を変えないといけないだろ?だから結婚に向かないんじゃないかって」
工藤 夏樹「そんなことぐるぐる考えて躊躇している自分がいる 親友のお前にはどうしても聞いてほしかったんだ。どう、思う?」
佐藤 慎(さとう しん)「弱虫」
工藤 夏樹「そりゃないだろーよ」
佐藤 慎(さとう しん)「お前が普段から過ごしてる当たり前は当たり前じゃないんだよ。何かを選べば何かを失う。それを捨てたとしても欲しいかどうかだろ」
佐藤 慎(さとう しん)「人は馬鹿だから。失った後に大切さや感謝の気持ち、愛おしさを思い出すんだよ。 間違ってもいい、後悔だけはするな」
  途中から誰に向けての言葉か分かんなくなっていた
工藤 夏樹「お前・・・まだ、」
  夏樹は言いかけた言葉を飲み込むとまっすぐ僕を見て笑った
工藤 夏樹「ありがとう慎。俺、やるよ」
佐藤 慎(さとう しん)「ああ、応援してるよ」

〇電車の中
  あれから1カ月
  夏樹からはプロポーズが成功したと写真付きで報告があった
  イヤホンをして目を瞑る
  曲名は、この世界で恋をした

〇菜の花畑
  瞳を閉じれば君にまた会える
  慎っ!そう僕を呼んで君は微笑むから
  ずっと愛してる。

〇渋谷のスクランブル交差点
  そして僕は今日も、君と出会ったあの街に向かう
  奇跡を起こす街に──

コメント

  • 思い出し後悔をすることがあります。それでも日はまた登る、前を向くしかない、応援歌に感謝。

  • 胸が切なくなるお話でした🥲
    いつどこで何が起こるかわからないからこそ、
    毎日を大切に生きていかないといけませんね😌

  • 後悔してもしきれない過去…もし現実にこのようなことがあったとしたら、ずっとひきずってしまうかもしれません。どう生きれば彼女は天国で喜んでくれるのだろう…答えの出ない問いですね

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