渋谷の魔法使い

まと

はじまり(脚本)

渋谷の魔法使い

まと

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渋谷の魔法使い
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〇Bunkamura
渋谷で働くOL(やっと、仕事が終わった・・・)
渋谷で働くOL(上司の説教はウザいし、 後輩に出世抜かれるし・・・!)
渋谷で働くOL(会社の飲み会、週末だっけ? もう、キャンセルしちゃお)
  欠席の連絡を済ませ、
  ついでにSNSをチェックする。
渋谷で働くOL(『絶品フレンチトースト食べた♡  ふわふわでクリームも濃厚♡』!?)
渋谷で働くOL(ふーん。自慢? 優雅ね、平日の日中に・・・)
渋谷で働くOL(・・・ん?)

〇SNSの画面
  渋谷の坂に、気を付けて。
  魔法使いに、遭うかもしれない
渋谷で働くOL(渋谷の坂、 この辺だと・・・)

〇スペイン坂

〇Bunkamura
渋谷で働くOL(明日は午前リモートだし、 どうせ、この後も予定ないし)
渋谷で働くOL(行ってみるか!)

〇スペイン坂
渋谷で働くOL(なんか、嫌な感じ・・・ こんな雰囲気だったっけ?)
  在るのは建物だけで、
  居るはずの人間が、ひとりもいない。
渋谷で働くOL(『魔法使い』なんてデマ、 引っかからるんじゃなかった)
渋谷で働くOL「・・・え」

〇スペイン坂
渋谷で働くOL「ひっ・・・」
渋谷で働くOL「こ、来ないで──!」

〇スペイン坂
渋谷で働くOL(──ギリギリ避けた!)
「へえ。やるじゃないか」
???「結界を破って、 ここに入れるなんて」
渋谷で働くOL(結界? こいつ、まさか噂の・・・)

〇スペイン坂
  魔法使い!?
魔法使い「ま、そりゃそうか。 これらは、君から生まれたんだし」
渋谷で働くOL「は? こんなの知らな・・・」
渋谷で働くOL(増えた!?)
渋谷で働くOL(・・・今は、とにかく)

〇センター街
  逃げる!

〇渋谷駅前

〇渋谷スクランブルスクエア
渋谷で働くOL「はぁ、はぁ」
渋谷で働くOL「よし、着いた!」

〇空港のエスカレーター
  メトロと東急に続く、
  エスカレーター!
  複数路線が走る渋谷駅は、
  まるで迷路のようだ。

〇広い改札
  エレベーターやエスカレーターを
  正確に乗り継がないと、
  ホームに辿り着けない。
  魔法使いとはいえ、
  簡単には、追いつけないだろう──

〇広い改札
  ──そう、思っていた。
渋谷で働くOL「うそ・・・」
魔法使い「やっぱり、 自覚がないんだね」
渋谷で働くOL「人違いでしょ? あんな化け物、知らないから!」
魔法使い「じゃあ、教えてあげる」
魔法使い「これは全部、」

〇血しぶき
  「君から生まれた『怒り』だよ」

〇黒
  ──そういえば
  化け物に食われながら、
  朦朧とした頭で、考える。
  私はいつも、何かに怒っていた。

〇Bunkamura
  上司を怨んで、
  後輩と張り合って、
  フォロワーに嫉妬して、

〇スペイン坂
  自分の選択に後悔して、
  時間を惜しんで生きてきた。
  なんて、愚かで醜い感情。
  それはまるで、この化け物のよう──
  ──あぁ、そうか。
  この化け物は、
  やっぱり私の『怒り』なんだ──

〇黒
魔法使い「たいしたもんだ。 自分の『怒り』に、もう気づけたなんて」
  でも、どうして──
魔法使い「どうして今まで気づけなかったって? そりゃ、学んでこなかったからだろう」
魔法使い「『怒り』という化け物を、 飼いならす方法をね」
  そんなの、私には無理──
魔法使い「大丈夫。自転車と同じだよ。 練習すれば、できるようになる」
魔法使い「自分の『怒り』を認識して、 手放してあげる。それだけだから」
  知ったところで、もう遅い。
  だって、こんなに食べられて──
魔法使い「・・・そうだね。 まあ、自分の怒りに気づけたご褒美だ」

〇SHIBUYA SKY
  「君の過ちを赦して、戻してあげる──」
渋谷で働くOL「あれ・・・ 私、生きてる?」
魔法使い「君が感情をコントロールできないのは、 振れ幅が大きいからなんだ」
魔法使い「悪いことばかりじゃない。 喜怒哀楽の激しさは、君の魅力でもある」
魔法使い「何より・・・」
渋谷で働くOL「・・・!?」
魔法使い「感情の振れ幅の大きさは、 『魔力』に比例するんだ!!」
渋谷で働くOL「・・・は?」
魔法使い「科学が辿り着けない、唯一の境地。 それが感情であり、即ち魔法なんだよ」
渋谷で働くOL(わけ分かんないし、 うさん臭い・・・)
魔法使い「君はきっと、強い魔法使いになれる。 『怒り』を、使いこなせればね」
渋谷で働くOL「・・・」
渋谷で働くOL「それより私たち、 どうしてここにいるの?」

〇広い改札
渋谷で働くOL「さっきまで、地下にいたよね?」

〇SHIBUYA SKY
魔法使い「あぁ、それは──」

〇SHIBUYA SKY
  あっという間に担がれて、
  フェンスの瀬戸際まで運ばれた。
魔法使い「一緒に空を飛べば、 信じてくれるかと思って」
魔法使い「ほら。魔法使いと言えば 空を飛ぶって、お約束だろ?」
渋谷で働くOL(時代錯誤だったり、ベタすぎたり、 色々ツッコミたいけど、何より・・・)
渋谷で働くOL「あの。お姫様抱っこは・・・ この年で、ちょっと・・・」
魔法使い「ははは。 重いな、結構」
渋谷で働くOL「へえ。 早速、怒りを手放す練習?」
渋谷で働くOL「・・・まさか、 素で言ってないよね?」

〇SHIBUYA SKY
  ──これは、渋谷での物語。
  感情に支配されてた私の、おわり。
  魔法として使う私の、はじまり。

〇宮益坂
渋谷を歩く女性(はぁ、また既読スルー?)
渋谷を歩く女性(親友だと思ってたのに・・・!)
渋谷を歩く女性「──!?」

〇宮益坂
渋谷を歩く女性「きゃ──!」
「こんばんは」
渋谷で働く魔法使い「『怒り』の魔法、 使いこなしてみない?」

コメント

  • 怒りは何も生まないということですね

    自分も気をつけたいと思う作品でした(汗

  • アンガーマネジメントなんですね。仏教かと思って読んでいました。難しいテーマも、身近な問題となるんですね。テーマ的にとても興味を持ちました。

  • 怒りというのは気づいたら案外
    すぐそばにある感情だなと考えさせられる物語でした🥲
    最後の終わり方も続きがあるように思えて好きでした!

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