エピソード1(脚本)
〇渋谷ヒカリエ
〇渋谷ヒカリエ
リポーター「先ほど、午後7時頃、関東上空で発光現象が目撃されました。 火球の可能性が高いようです」
〇ハチ公前
ユイ「あーあ、我ながら未練がましいなあ・・・・・・ つい来ちゃった」
昨夜、4年付き合った彼に、いきなりフラれた。
去年、彼の両親が海外に引っ越したときだって、「ユイのそばにいたい」と1人で残ったくらいだったのに。
今日は渋谷デートのはずだった。
ハチ公の前で待ち合わせて、ハチ公のぬいぐるみストラップをあげる・・・・・・
ユイ「スマホにつけてるのをかわいいって言ってくれたから、あいつの分も作ったのに」
そのハチ公の前を歩いていると──
ドン!
ユイ「ごめんなさい!」
ぶつかった少年が、振り返った。
ユイ「コーヘイ!?」
なんと、昨日フラれた相手だ。
コータ「コーヘイじゃない、コータ」
コータ「お姉さん、彼氏にすっぽかされたの? じゃあ、オレとデートしない?」
ユイ「すっぽかされたんじゃないわよ!」
ユイ「でも、いいわ、つきあってあげる」
コータ「オレ、ここ初めてでさ。助かるよ!」
〇渋谷駅前
〇SHIBUYA109
〇モヤイ像
〇渋谷ヒカリエ
〇渋谷スクランブルスクエア
〇SHIBUYA SKY
渋谷スカイのSKY STAGEにきた。
ユイ「わあ、キレイ!」
チケットがムダにならなくて良かった。
コータ「今日は楽しかった! ありがとう、ユイさん」
ユイ「どういたしまして。わたしも楽しかった。 また会える? どこから来たの?」
コータ「・・・・・・」
コータがうつむいた。
ユイ「もしかして、家出少年?」
コータ「違う・・・・・・。 オレ、ユイさんから見たら、宇宙人。 オレたち、この星を侵略しに来たんだ・・・・・・」
ユイ「まーた、なんの冗談よ!」
コータ「・・・・・・」
コータは、だまったまま。
ユイ「やだ、冗談でしょ。ねえ・・・・・・」
ユイ「まさか・・・・・・本当なの?」
コータがうなずいた。
ユイ「宇宙人ってことは・・・・・・」
本当の姿は・・・・・・
コータ「・・・・・・何を想像してるの?」
コータ「このままだよ。姿は変えてない」
ユイ「なーんだ」
コータ「なんだか残念そうに聞こえるけど?」
コータ「不思議なことに、言葉もそのまま。 宇宙船を降りてこの街に来たとき、本当に驚いたよ」
コータ「オレは偵察に来たんだ。で、この星が良さそうなら、高いところから合図する。 ちょうどここは、このあたりでいちばん高いね」
コータ「この星くらいの科学技術だったら、一瞬で終わるよ」
ユイ「そんな・・・・・・!」
コータ「だけど、オレ、ここが気に入っちゃった。 ユイさんのことも好きだ」
ユイ「・・・・・・なんで侵略なんてするの?」
コータ「オレたちの星は侵略されたんだ、異星人に。 もう100年も前のことだ」
コータ「そのとき、約80人が宇宙船で脱出したらしい。人数が増えて、今では母船だけでも150人を超えているよ。全部で200人弱かな」
ユイ「じゃあ、100年も彷徨って・・・・・・」
コータ「オレは17歳だから、これが当たり前なんだけどね」
たかが200人。だけど、紛争の絶えないこの小さな星で、科学技術が発達した宇宙人を受け入れて共存するのは、きっと難しい。
スマホが鳴った。コーヘイだ。
迷ったが、指が通話ボタンに触れてしまった。
コーヘイ「ユイ、すまない。本当は、今でも好きだ。 口止めされたんだけど、やっぱり本当のことを伝えたくて・・・・・・」
ユイ「・・・・・・」
コーヘイ「信じられないと思うけど、地球が宇宙人に侵略されるんだ!」
コーヘイ「昨夜、渋谷の上空に巨大な宇宙船が現れた。 それで、俺はすぐにジェット機で両親のいる研究所に連れてこられたんだ」
コーヘイ「俺たち、選ばれた研究員とその家族は、地球を脱出する。 ユイ、気をつけて。死ぬなよ!」
一方的にしゃべって、電話は切れた。
コーヘイの両親は北欧のすごい研究所に勤めている。
ユイ「結局、捨てるんじゃない!」
ふと見ると、コータが茫然としている。
コータ「そのストラップは!?」
ユイ「これ?」
スマホのハチ公のぬいぐるみストラップを見せると、コータがカバンから古びたストラップを取り出した。
コータ「何代か前のじいさんの形見だって」
ユイ「わたしが作ったのと同じ!? この世に2つしかないはずなのに!」
ユイ「こっちがユイのYで、これがそれと同じK。今日、コーヘイにあげるつもりだったの」
バッグからKのストラップを出して見せる。
コータ「まさか・・・・・・ここは別の星じゃなくて、過去の・・・・・・!?」
2本のストラップを近づけたとたん、コータのストラップが粉々になって消しとんだ。
我に帰ったコータが母船に連絡する。
コータ「作戦は中止! この星は過去の母星だ! 攻撃してはいけない・・・・・・! すぐにこの星域から離脱しろ」
ユイ「こんなことってあるの・・・・・・? でも、コータがコーヘイに似ているのって、子孫だからなのかも・・・・・・」
連絡を終えて放心しているコータに話しかける。
ユイ「これ、あげるわ。 形見、なくなっちゃったでしょ」
コータ「いいの? コーヘイって人に・・・・・・」
ユイ「もう行っちゃったもの」
コータ「・・・・・・ありがとう。 オレ、過去に干渉しちゃったから、もう帰れないや」
ユイ「それなら、コーヘイとして暮せばいいわ。 びっくりするくらいそっくりだし、あの家の人たちは、きっともう帰ってこないもの」
コータ「そうするよ」
ユイ「あれ? でも、このストラップがここにあるってことは・・・・・・」
コータが持っていたのは・・・・・・
面白かったです。
自分の身近な人も、いつのまにか宇宙人と入れ替わっていたら、怖いと思いました。
すり替わりを思いつくユイも怖いですね。
あぁ、ロマンっす。ロマンスっす。裏切りと切り替えのはざまでもあったりするっす。
面白かったです!
コータの祖先はコーヘイなのか、それともストラップがここにあるということは、コータ自身が祖先なのか……
そうなると、地球はこの後、別の宇宙人に襲われるのか……? いろいろと想像が膨む作品でした!