隠村の謎(脚本)
〇平屋の一戸建て
村人D「みつごが決まったぞ」
村人B「これでしばらくは安泰ね」
村人C「これで少しは落ち着くわ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「何かのイベントだったんでしょうか?」
亜沙夏(あさか)「それもだけど、さっきの歌、 変じゃなかったかしら?」
亜沙夏(あさか)「それに、みつごって──?」
村人「どいつもこいつも・・・」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)(ここは、思い切って 話しかけなきゃ、取材にならないぞ)
藤坂 萩(ふじさか しゅう)(亜沙夏さんに良いところもみせないと!)
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「あの〜すいません」
村人「なんだ・・・よそ者か」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「僕たち、写真家でたまたまこちらに来たんですけど、みつごって何のことですか?」
村人「そんなもの・・・知らん」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「でも、先ほど村の方が──」
村人「知らんものは知らん」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「それでしたら、村長に話を聞いてみます。 どちらにいらっしゃいますか?」
村人「・・・村長は祈祷中だ。 さっさと帰るのが身のためだ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「亜沙夏さん、すいません。 詳しく聞くことができませんでした」
亜沙夏(あさか)「大丈夫よ。 それならそれで、辺りを見回りましょう」
〇農村
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「それにしても、奇妙なイベントでしたね」
亜沙夏(あさか)「イベントっていうより、 風習のように見えたわ」
亜沙夏(あさか)「だって、女の子たちは 巫女服を着てたんだもの」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「言われてみれば確かに!」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「お面に巫女服・・・ 儀式と言ってもいいかもしれませんね」
亜沙夏(あさか)「そう!」
亜沙夏(あさか)「黒い狐面の子たちが、 手でアーチを作っていたでしょ?」
亜沙夏(あさか)「それを白い狐面の子たちがくぐる・・・」
亜沙夏(あさか)「歌が終わると、 黒い狐面の子たち2人が」
亜沙夏(あさか)「白い狐面の子ひとりだけを、」
亜沙夏(あさか)「腕の中で閉じ込めてた──」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「もしかして──」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「その子が1番かわいかったとか!!」
亜沙夏(あさか)「そんなわけないでしょ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「・・・というのは冗談で」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「白い狐面の子は何かに選ばれた?」
亜沙夏(あさか)「そう思うのが妥当だと思うの」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「ただ、何に選ばれたのかわかりませんね」
亜沙夏(あさか)「それを探りたいわね・・・」
亜沙夏(あさか)「それにしても、真面目に話せば、 まともな考察できるじゃない」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「そうでしょう? 僕って優秀ですからね」
亜沙夏(あさか)「調子いいんだから」
亜沙夏(あさか)「私が調べた限りだと、」
亜沙夏(あさか)「あの儀式の情報はどこにも載ってなかったの」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「情報にない儀式を 取材できたってことですね!!」
亜沙夏(あさか)「それなら、さっきの儀式を 撮影出来たってことね!」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「・・・撮ってないないです」
亜沙夏(あさか)「冗談よ」
亜沙夏(あさか)「むしろ、あの状況で動画撮影なんかしたら 村の人達に追い出されてたに違いないわ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「よかったです。 正直、一歩も動けないほど怖かったので」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「それより、これからどうします?」
亜沙夏(あさか)「そうね・・・あの感じでは 村の人達が何か話してくれるか どうか・・・」
亜沙夏(あさか)「怪しいわね」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「さっきので疲れましたし、 休憩でもしましょうか」
亜沙夏(あさか)「そうね・・・焦っても仕方ないものね」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「亜沙夏さんは、神妙な顔より 今の顔がとても魅力的ですよ」
亜沙夏(あさか)「何をたくらんでるのかしら? おだてても何もでないわよ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「そんなつもりはありませんよ──ただ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「どうしてこの取材、亜沙夏さんと一緒に することになったんですか?」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「そろそろ、僕のことを信用して くれてもいいんじゃないかな、 と思いまして」
亜沙夏(あさか)「そうね・・・さすがにおかしな 案件すぎるものね」
亜沙夏(あさか)「いいわ。 少しだけ教えてあげる」
亜沙夏(あさか)「私も取材に参加してるのは、 私の単独よ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「危険かもしれないのに どうして・・・?」
亜沙夏(あさか)「人を捜してるの」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「人捜しですか」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「それなら、僕も捜しましょうか。 1人で捜すより2人で捜すほうが」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「見つかる確率が高くなると思いますよ」
亜沙夏(あさか)「・・・ありがとう。 気持ちだけ受け取っておくわ」
亜沙夏(あさか)「優しい人は嫌いじゃないけど 私の問題だから」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「話したくない理由があるんですね」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「どうしても手が必要なときは 言ってください」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「そのときは手伝いますよ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)(言われなくても、手伝いますけどね)
亜沙夏(あさか)「・・・一緒に取材を してくれるだけで十分よ」
〇田舎のバス停
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「休憩するところ、といえば ここしかありませんでしたね」
亜沙夏(あさか)「バス停だけど、ないよりマシね」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「それにしても、ここのバス・・・」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「1日2本しか通りませんね」
亜沙夏(あさか)「車で来たときも、かなりの距離があったから仕方ないわ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「2人きりのドライブデートでしたね」
亜沙夏(あさか)「何を言ってるの」
亜沙夏(あさか)「そんなこと言えないほどの 車酔いをしてたでしょ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「そ、それは言わないでくださいよ~」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「誰か来ますね」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「村長を捜していたっていうのは 君達かい?」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「ええ。 そうですけど──あなたは?」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「私は、村長の代理を務めている」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「鬼原 亜珠也だ」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「僕は藤坂 萩といいます」
亜沙夏(あさか)「亜沙夏よ」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「亜沙夏──?」
亜沙夏(あさか)「私の名前が何か?」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「・・・いや、何でもない」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「その・・・聞いたことのあるような 気がしただけで」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「それで、あなた達はどうして こんな田舎まで来たんだ?」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「田舎の風景をカメラに収めに 来たんです」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「なるほど」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「それで、どうして村長に話を?」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「村長は祈祷により 今日は誰とも会わない」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「村長に何か用事ならば、 代わりに私が聞くが・・・」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「ありがとうございます。 それでしたら、気になることがあります」
藤坂 萩(ふじさか しゅう)「少し前に、儀式みたいなことが 行われてました。 あれは何でしょうか?」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「あぁ、あれか・・・」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「あれは、次に7歳になる子の 代表を決める儀式なんだよ」
鬼原 亜珠也 (きはら あずや)「昔からの風習でね」
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藤坂くんには申し訳ないけど、探し物は恋人か子供なんだと思うんですよね。名字が隠れてるのも気になるけど、この花。増えるほどにダメな場所に誘導される気がする…はっ。もしかして藤坂は贄なのか…。色々想像掻き立てられます。
素晴らしいですね!村の情報や風景、人物の人格設定も詳細なので、気がつけばすっかり物語の世界に入り込んじゃってました!まるで長編アニメーションを見ている感覚になり、続きがめちゃくちゃ楽しみな作品です!☺️👍
村の儀式、亜沙夏さんの隠し事と探し人、などが絡み合って重厚な内容になっている一方で、藤坂さんの適度なユルさがアクセントになっていますねw この緩急に誘われるままに読み入ってしまいました!