両思いのままに

イグニス

第3話:救いの手(脚本)

両思いのままに

イグニス

今すぐ読む

両思いのままに
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇通学路
岡田大地「・・・」
岡田大地「まだ、実感がわかないな・・・」
岡田大地「僕は・・・、ちゃんと生きているんだな・・・」
  柳原さんと偶然出会った僕は、あの時、彼女に助けてもらったんだ。
  最初はびっくりしたけど、柳原さん気まずくなかったかな・・・?
  でも、あの出来事がなければ、今ごろ僕は・・・いやいや!!何を考えているんだ!!
  逆に助けてもらわなかったらどうかしてた!!うん、そうだよ!!
  僕は、ちゃんと生きているんだ。

〇川沿いの公園
柳原香澄「そうだったんだ。お母さんが亡くなったのね・・・」
柳原香澄「しかもそんな時に、眞鍋くんたちに迫られたなんて・・・」
柳原香澄「そんなことされたら確かに、どうしようもなくなるよね・・・」
岡田大地「うん、もう何も僕には残ってないよ・・・」
岡田大地「これからどうすれば・・・」
柳原香澄「なんて言ったらいいか分からないけど、岡田くんに”ないもの”なんてないと思うの」
岡田大地「──??」
柳原香澄「言葉にするのは難しいけど、”優しさ”が残ってるじゃない。昔、眞鍋くんたちから助けてくれてたよね?」
岡田大地「そういえば、そう・・・だったね。助けるのに必死で忘れてたよ・・・」
柳原香澄「あの後お礼が言えてなくてごめんね・・・」
岡田大地「別にいいよ、感謝されるためにやったわけじゃないし・・・」
柳原香澄「どうしてあの時は助けてくれたの?」
岡田大地「人が傷ついているところを見たくなかったからさ・・・」
岡田大地「昔いたんだよ・・・助けられなかった子が・・・」
柳原香澄「え・・・!?」
岡田大地「僕が中学生の時に、ある小学生の男の子と出会ったんだよ」
岡田大地「その子も、いわゆる”いじめられっ子”だったんだ・・・」
岡田大地「放っておけなかったからさ、泣いているその子を慰めるために、よく傍にいたんだよね」
岡田大地「気づいたら、放課後に近くの公園で遊んだり、駄菓子屋で飲み食いするのが日課だったんだ」
岡田大地「でも突然、事件が起きたんだよ・・・」
柳原香澄「何があったの?」
岡田大地「いつものようにその男の子と放課後に合流しようと公園に近づいたら、悲鳴が聞こえたんだ」
岡田大地「もしかしてと思って近づいたら・・・」
岡田大地「なわとびの紐で首を絞められて倒れている姿を見たんだ・・・」
柳原香澄「──!?」
岡田大地「突然だったんだよ・・・だって昨日まで元気そうにしてたのに・・・」
岡田大地「僕は”いじめっ子”の存在に気づいてたんだけど、逃げ足が早かったから追いかけられなかった」
岡田大地「でも・・・」
岡田大地「何より一番悲しかったのは、その子がいつまでたっても目を覚まさなかったんだ・・・!!」
岡田大地「だから、時々思い出すんだ。あの時救えればって・・・」
柳原香澄「岡田くん・・・」
岡田大地「どうしようもないよね・・・思い出したって生き返るわけでもないのに・・・」
柳原香澄「うん・・・」
岡田大地「ごめん、なんか気まずい感じになっちゃって・・・柳原さんに言うことでもなかったのに・・・」
柳原香澄「ううん、私は、話してくれて嬉しかったよ」
柳原香澄「同じクラスメイトなのに、知らなかったよ・・・」
柳原香澄「でも・・・」
柳原香澄「いつかその”心の傷”が安らぐ日が来るといいね」
岡田大地「・・・」
岡田大地「・・・うん」

〇通学路
  あの時の柳原さんの言葉はどう表現したらいいか難しいけど、
  ただ”都合のいい”言葉を並べていなかった。
  なんなら”きれい事”ばかりを言っているわけでもなく、
  ありのままの”ことば”を伝えているようだった。
  こんな”気持ち”は初めてだ。
  人から優しくされたのは、いつぶりだろうか?
  下心があったとかそういうわけじゃなくて、こう純粋に嬉しかったって感じだった。
  柳原さんの行動には感謝したいくらい、嬉しかった気持ちがまだ抑えられないよ。
  次会う時には、ちゃんとお礼したいな。

〇住宅街
柳原香澄「・・・」
  あの時、力ずくで岡田くんを引っ張るようなことしたけど、やりすぎだったかな?
  でも、さすがにほっとけなかったよ!!
  私の恩人にまだ感謝してないのに、お礼言えないのはよくない・・・
  だから、あの時の行動は間違っていなかったんだ!!
  あの後どうなったか気になるな~。でも、今まで接点なかったのに厚かましく行くのはあんまりかな?
  う~ん・・・、どうしたらいいんだろう?
  でも、改めて岡田くんと話して、知らなかった一面が見れてよかったな~。
  思ってた以上に、岡田くんはいい人だな~。
  あれっ?
  この”気持ち”は、何だろう?
  今まで感じてこなかったこの”感情”は、身に覚えがない・・・。
  どうしちゃったんだろう?
  気にしすぎかな?
  分かっているのは、岡田くんのことを考えている時だけ、この”気持ち”を感じるみたい。
柳原香澄「・・・」
  あ~もう!!
  悩んでばかりいないで、ここは前向きにいこう!!うん、それがいいね!!
  また、岡田くんと会えるといいな~。

〇学校脇の道
岡田大地「・・・」
岡田大地「(あっ)」
岡田大地「おはよう・・・」
柳原香澄「あっ、おはよう!!」
柳原香澄「よかった、ちゃんと学校に来たみたいね」
岡田大地「あの時のことがあったと思うと、まだがんばらなきゃなって思ってさ・・・」
柳原香澄「朝からそんなに暗いこと言ったらだめだよ!!」
柳原香澄「せっかくなんだし、もっと前向きにいこう!!」
岡田大地「いや~なんかごめんね・・・」
柳原香澄「じゃ、さっそく教室いこっ!!」
岡田大地「うん!!」
  以前は人と会って登校するなんてなかったけど・・・
  柳原さんと会ってから変わったな、僕は。
  助けてくれた柳原さんの行いのためにも、自分の命は無駄にはできない。
  もう僕はいつまでも、眞鍋のいいなりにはならないんだ!!

次のエピソード:第4話:踏み出す勇気

ページTOPへ