Scramble Crossing(脚本)
〇占いの館
マダム法子「見えたわ!」
千奈津「本当ですか?」
マダム法子「ええ、貴方のお母様が見える」
マダム法子「綺麗な人ね!」
千奈津「はい」
マダム法子「まぁ、大変!!」
千奈津「なんですか?」
マダム法子「あなたのお母様ね」
マダム法子「天国に行けなかったみたいなの」
千奈津「・・・」
マダム法子「言い難いことだけど」
マダム法子「すごく苦しんでいらっしゃるわ・・・」
千奈津「そんな・・・」
千奈津「なんとか出来ないんですか?」
マダム法子「うーん」
マダム法子「出来ないこともないんだけどねぇ」
千奈津「問題でも?」
マダム法子「この数珠をつけて毎日仏壇を拝めば」
マダム法子「お母様を助けられるわ」
千奈津「じゃあ!」
マダム法子「でも、すごく貴重なものなの」
マダム法子「神聖な山の石で作られててね」
マダム法子「少し高いのよ」
千奈津「いくらですか?」
マダム法子「100万円なんだけど・・・」
マダム法子「学生さんには酷よね」
マダム法子「特別に半額の50万円でいいわ」
千奈津「50万・・・」
マダム法子「苦しいの。だからお願い。助けて千奈津」
マダム法子「お母様がそう言ってるわ!」
千奈津「でも・・・」
マダム法子「無理にとは言わないわ」
マダム法子「どうするの?」
千奈津「・・・」
〇寂れた雑居ビル
千奈津「・・・」
智尋「大丈夫でしたか?」
千奈津「えっ!?」
智尋「あっ」
智尋「すみません、急に」
智尋「マダム法子の部屋から出てきたから」
智尋「高い壺とか買わされたんじゃないかと」
千奈津「いえ」
千奈津「私は数珠でした」
千奈津「50万円の」
智尋「やっぱり」
千奈津「買いませんでしたけどね!」
智尋「良かった」
千奈津「だって、お母さんは 私を千奈津とは呼ばないから・・・」
智尋「お母さん?」
千奈津「すみません」
千奈津「何でもないです」
智尋「何か悩んでるんですか?」
千奈津「いえ」
智尋「でも・・・」
智尋「マダム法子の部屋に行ってたのは?」
千奈津「お母さんに会いたくて・・・」
千奈津「もう死んでるんですけどね」
智尋「・・・」
千奈津「会って、一言だけ謝りたかったんです」
〇総合病院
母が死んだのは
三年前だった・・・
〇総合病院
千奈津「・・・」
〇病室のベッド
その日、私はお母さんと喧嘩をした
希未「しょうがないでしょ」
希未「私だって 好きで病気なわけじゃないもの」
千奈津「けど・・・」
希未「わがまま言って困らせないで」
千奈津「私だって」
千奈津「好きでこの家に産まれたんじゃない!!」
千奈津「別のお母さんだったらよかったのに」
希未「こらっ」
看護師「すみませんが、病室ではお静かに」
千奈津「もう知らない!」
希未「ごめんなさいね」
看護師「いえ」
〇病室のベッド
〇店の入口
〇レトロ喫茶
智尋「そんなことが・・・」
千奈津「その夜、母の容体が急変して・・・」
千奈津「まさか死ぬなんて思ってなかったから」
千奈津「酷いことを言っちゃったんです」
智尋「・・・」
千奈津「だから、どうしても謝りたくて」
千奈津「占師とか、霊媒師とかを訪ねました」
千奈津「でも、無理ですよね」
千奈津「死んだ人に会うなんて」
千奈津「そんなの分かってるんですけど」
千奈津「諦めきれなくて・・・」
智尋(もしかしたら)
智尋(あの人なら力になれるかも)
智尋「あの」
智尋「今度の週末ってお時間ありますか?」
千奈津「週末ですか?」
智尋「紹介したい人がいるんです」
〇モヤイ像
智尋「・・・」
千奈津「お待たせしました!」
智尋「いえ」
〇道玄坂
千奈津「それで、どこへ行くんですか?」
智尋「ついて来てください」
智尋「力になってくれそうな人がいるんです」
千奈津「力に?」
〇屋敷の門
智尋「着きました」
千奈津「ここですか?」
智尋「はい。中へどうぞ」
〇神社の本殿
星雲「・・・」
〇神社の本殿
星雲「やあ、来たね」
智尋「ご無沙汰しています」
星雲「その子が?」
智尋「はい」
星雲「なるほど」
千奈津「あの」
星雲「話は智尋から聞いている」
星雲「死別したお母さんに会いたいそうだね」
千奈津「はい」
星雲「いくつか方法がある」
星雲「だが、どれも多大な危険が伴う・・・」
千奈津「・・・」
星雲「死者の魂を呼ぶのは簡単なことじゃない」
智尋「でも」
星雲「ああ、分かっている」
星雲「だから、一つだけ方法を教えよう」
星雲「確率は低いが」
星雲「安全に会うことができる方法だ」
千奈津「どうすればいいんですか?」
星雲「この近くだと」
星雲「渋谷のスクランブル交差点がいいだろう」
星雲「交差点に行って」
星雲「行き交う人たちをよく見てみなさい」
星雲「運が良ければ、お母さんに会えるはずだ」
千奈津「・・・」
星雲「納得がいかないかい?」
〇渋谷の雑踏
星雲「渋谷のスクランブル交差点には 常にたくさんの人が行き交っている」
星雲「一回の青信号で なんと、約3000人もの人が通るそうだ」
星雲「そこに紛れて、まれに死者の魂が通るんだ」
星雲「昔から四辻はあの世と繋がっていると」
星雲「言われているからね」
〇神社の本殿
千奈津「四辻って何ですか?」
星雲「交差点のことだよ」
星雲「霊体が紛れやすい人混み」
星雲「そして、交差点・・・」
星雲「渋谷のスクランブル交差点なら」
星雲「条件にぴったり合う」
千奈津「本当に会えるんですか?」
星雲「確率は低いけどね」
星雲「君の思いが強ければ、きっと会えるよ」
〇屋敷の門
千奈津「ありがとうございました」
智尋「どういたしまして」
千奈津「さっそく、お母さんを探しに行ってみます」
智尋「頑張ってね!」
千奈津「はい!!」
〇高架下
〇渋谷のスクランブル交差点
千奈津「お母さん・・・」
千奈津「本当に会えるのかな・・・?」
私は人混みの中に母の姿を探した
しかし・・・
〇渋谷駅前
おびただしい人が行き交う中に
いるかどうかすら分からない母の姿を
探すのは困難だった・・・
千奈津「・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
千奈津「やっぱりいない・・・」
千奈津「本当にこんなことして」
千奈津「意味あるのかな・・・?」
私は疲れ果ててしまった
〇渋谷のスクランブル交差点
星雲(四辻はこの世とあの世がつながった場所)
星雲(だから、お母さんと会えるかもしれないよ)
千奈津「もう帰ろう・・・」
千奈津「あんなの、嘘かもしれないし」
〇SHIBUYA109
???「千奈ちゃん!!」
???「待って!!」
千奈津「えっ?」
駅に向けて交差点を渡ろうとしたとき
誰かが私を呼び止めた
千奈津(千奈ちゃんって呼び方は・・・)
千奈津「お母さん!」
希未「久しぶりね」
千奈津「お母さん・・・」
千奈津「ごめんなさい」
希未「なによ、急に?」
千奈津「だって、最期の日に」
千奈津「酷いことを言ったから」
千奈津「怒ってるよね」
希未「馬鹿ねぇ」
希未「あれくらいで怒るわけないでしょ」
希未「謝るのは私のほう」
希未「寂しい思いをさせてごめんね」
千奈津「お母さん」
希未「もう信号が変わるね」
希未「立ち止まってたら危ないから」
希未「じゃあね」
千奈津「待ってよ」
希未「元気でね、千奈ちゃん!」
〇SHIBUYA SKY
それからも私はときどき
渋谷のスクランブル交差点に行った
けれど、お母さんと会えたのは
あの一度きりだった・・・
千奈津(でも、見守ってくれてるんだよね?)
千奈津「お母さん・・・」
そして・・・
〇SHIBUYA109
弘介「どうしたんだ?」
弘介「急に渋谷に行こうだなんて」
千奈津「いいからいいから」
千奈津は弘介と並んで
スクランブル交差点を渡った
千奈津「お母さん」
千奈津「見てる?」
千奈津「私ね、この人と結婚するの!」
二人は交差点を渡り切った
希未「おめでとう」
希未「幸せになりなさいよ!」
希未「千奈ちゃん・・・」
腹黒い私は、負の連鎖を想像してしまいます。スクランブル交差点に感じる霊的なものを、どう捉えるかは、本当にあなた次第なんですね感謝。
ラストシーンが泣けました。
スクランブル交差点に行けば死者とも会えるなんて、素敵な物語ですね。
心優しい母親思いのヒロインが、幸せになってくれて良かったです(^^)
心の温まるとても素敵なお話です🥲
一回一回が短文なためとても読みやすく、
頭にも入ってきやすいのに、印象に残るストーリーでした😊