SHUTTEREDLIFE(脚本)
〇見晴らしのいい公園
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「・・・」
〇見晴らしのいい公園
〇見晴らしのいい公園
ヒトミ「・・・」
「なにとってるんですかー?」
ヒトミ「・・・」
女の子「はなちゃんもとってください」
ヒトミ「花ちゃんっていうの?」
女の子「はなちゃんです」
ヒトミ「・・・」
〇見晴らしのいい公園
〇見晴らしのいい公園
ヒトミ「・・・」
「花ちゃーん」
「帰るよー」
女の子「はーい。ママ」
女の子「バイバーイ」
ヒトミ「・・・」
SHUTTEREDLIFE
〇部屋のベッド
「こちょこちょこちょ」
「馬鹿、やめろよ」
「キモイキモイキモイ」
「ふふふ・・・」
レイジ「・・・」
レイジ「何でお前の撮る写真って花ばっかなの?」
レイジ「動物とか人とか撮んねーの?」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「知ってる?」
ヒトミ「昔の人って、カメラで撮られると魂を抜き取られるって思ってたんだって」
レイジ「あー。聞いたことあるなー」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「撮ってあげようか?」
レイジ「ははっ。殺されてもいいよ。ヒトミになら」
レイジ「つって・・・」
ヒトミ「・・・」
レイジ「・・・」
ヒトミ「・・・」
レイジ「・・・おい」
ヒトミ「抜き取ってあげるね・・・魂」
〇部屋のベッド
レイジ「おい、もういいよ。分かったよ」
レイジ「そういうの、もういいって・・・」
レイジ「やめろよ・・・」
レイジ「やめろ!」
〇部屋のベッド
レイジ「・・・」
レイジ「キモイんだよ」
〇部屋のベッド
レイジ「やっぱ帰るわ」
ヒトミ「そう」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「・・・」
〇見晴らしのいい公園
コウ「あ、あの・・・」
ヒトミ「・・・はい?」
コウ「と、撮ってみませんか?」
コウ「その・・・僕を・・・」
ヒトミ「・・・!」
ヒトミ「・・・ずっと見てたの?」
コウ「はい」
ヒトミ「花を撮ってるところ?花を枯らすところ?」
ヒトミ「それとも花を殺すところ?」
コウ「いえ、撮ってる人を・・・」
コウ「なんつって・・・」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「いいよ。撮ってあげる」
コウ「やった」
コウ「・・・!」
コウ「ごほっ!ごほっ!」
コウ「・・・」
「来ないの?それとも怖気づいた?」
コウ「ま、待って下さい」
〇田舎の線路
〇電車の座席
コウ「・・・」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「なに見てんのよ」
コウ「いや、カワイイなって思って」
ヒトミ「初対面の人間によくそんなこと言えるわね」
ヒトミ「キモイんですけど」
コウ「僕はずっと見てたんで初対面な気がしないです」
ヒトミ「このまま警察行こうか?」
コウ「す、すみません」
コウ「それにもう恥ずかしがってる時間ないから」
ヒトミ「・・・」
コウ「・・・」
コウ「あ!」
ヒトミ「だ、大丈夫?具合悪くなった?」
コウ「海です!海が見えてきました!」
ヒトミ「ビックリさせないでよ」
ヒトミ「っていうか、今ならまだ引き返せ・・・」
コウ「・・・」
コウ「海ですね。ヒトミさん」
ヒトミ「じゃあ海見てなよ」
〇海岸沿いの駅
〇堤防
コウ「~♪」
ヒトミ「ねえ、やっぱ困るんだけど」
ヒトミ「もう助からないからって」
ヒトミ「これって自殺ほう助ってヤツじゃん」
コウ「え?」
ヒトミ「あと、その眼差しもやめて」
コウ「自殺って。僕、生きたいですよ」
ヒトミ「は?意味分かんない」
ヒトミ「大体、私、死神じゃないんだけど」
コウ「死神なんて・・・」
コウ「どっちかって言うと天使かな?」
ヒトミ「い、いちいち恥ずかしくないの?そういう台詞」
コウ「恥ずかしがってる時間ないから」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「その花びら・・・」
コウ「こいつらは放っといてもいつか枯れてたんです」
コウ「人知れずひっそりと・・・」
コウ「でもあなたに撮ってもらえたから、今でも生きられてる」
コウ「これからもずっと、写真の中で」
ヒトミ「・・・!」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「サムい」
コウ「サムいですね」
〇海岸の岩場
『ホラ、もっと下がって』
コウ「もっとですか?」
『もっともっと!』
コウ「こ、このままじゃ海に落ちる気が・・・」
『なにビビッてんのよ、今さら』
コウ「すみません・・・」
『はい!撮るわよ!』
〇海岸の岩場
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「やめた、場所変える」
コウ「ええーっ!?」
ヒトミ「それと表情硬すぎるのよ。これからずっと残る写真なんだから、もっと穏やかな表情できないの?」
コウ「お、おだやか・・・」
コウ「こうかな?」
〇断崖絶壁
コウ「ひいいいいいいいいいいいいいい!」
『ちょっと何泣いてんのよ!穏やかに笑いなさいよ!』
コウ「わ、笑える訳ないじゃないですか!こんな場所で!」
『あともっと下がって!』
コウ「何ですかさっきから下がれ下がれって!」
コウ「僕、溺死したいなんて一言も言ってないでしょう!」
〇断崖絶壁
ヒトミ「チッ・・・ここが最高のスポットなのに。根性ないわね」
「別の場所行くわよ」
コウ「写真家って・・・怖い」
〇海岸線の道路
『うーん。ダメ』
〇海岸沿いの駅
『うーん。なんか違う』
〇海辺
『なんか普通、ダメ』
コウ「普通だからダメってなんですか?」
コウ「もう日が暮れるんですけど」
コウ「そのへんでちゃっちゃっと撮りません?」
『ア゛ア゛ン?』
『だったらまた崖に戻るぞゴルァ!』
コウ「す、すみません・・・」
〇赤い花のある草原
『・・・』
〇赤い花のある草原
ヒトミ「・・・」
コウ「どうしました?」
コウ「ここに決めちゃいます?」
コウ「ここでキメちゃいます?」
ヒトミ「バカじゃないの?」
コウ「でも、綺麗っすね」
ヒトミ「もう・・・そういうのいいから」
コウ「夕日が」
ヒトミ「・・・え?」
コウ「・・・あ!」
コウ「ああ、いえ、ヒトミさんも・・・」
ヒトミ「も、は無いでしょ。今さら・・・」
コウ「すみません・・・」
ヒトミ「ふふっ・・・」
ヒトミ「あはははは!」
コウ「ははははは!」
ヒトミ「・・・お疲れ様」
コウ「え?」
ヒトミ「ここじゃダメ。もっといい場所で撮りたいの」
ヒトミ「だから・・・また今度付き合って」
コウ「・・・」
コウ「・・・でも、僕にはもう時間が」
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「生きてよ・・・」
ヒトミ「生きるんでしょ」
コウ「・・・」
ヒトミ「頑張って生きてよ!私が最高の写真を撮る瞬間まで!」
ヒトミ「生きて・・・」
コウ「・・・」
コウ「今です」
ヒトミ「・・・え?」
コウ「今なんです。今が最高なんです」
コウ「だから、ヒトミさんにも笑ってほしい」
コウ「僕も笑うから」
コウ「永遠に笑っていたいから」
ヒトミ「・・・」
〇赤い花のある草原
〇赤い花のある草原
〇部屋のベッド
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「名前・・・聞きそびれちゃったな」
『笑って・・・』
ヒトミ「・・・え?」
『笑って』
ヒトミ「・・・」
ヒトミ「・・・うん。笑うよ」
ヒトミ「笑ってるよ」
〇赤い花のある草原
END
ファインダー越しに生と死の間の無限の時間が流れているような不思議な感覚のストーリーでした。花しか撮らないヒトミの渾身の最後のシャッターは、コウの魂を永遠の中に閉じ込めることができたのでしょうか。ヒトミの笑顔で終わるラストも良かったです。
余命幾ばくもないという状況は人を本来の姿に戻してくれるのかもしれませんね。キレイと感じるものを素直に自分の言葉で表現する、ある意味一番ニュートラルでいれる時間でしょうか。