崖っぷちボーイ

ラム25

崖っぷちに立たされた男(脚本)

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〇岩山の崖
レン「隼人くん!私なんかよりお義母さんを助けて!」
母「いいえ!レンちゃんを助けてあげて!」
  俺は究極の選択を迫られている。
  母親と恋人が崖から落ちようとしているのだ。
  俺に二人同時に救う筋力など無い。
  だが迷っている暇も無い。
  どちらかを犠牲にする必要があった。
レン「隼人くん! お義母さんを!」
母「隼人! レンちゃんを!」
  そもそもこうなった経緯はこうだ。
レン「ねぇ隼人くん!見てみて〜崖から落っこちそう!」
隼人「本当に落ちたら助けないからな」
母「でもお母さんが落ちそうになったら助けるわよね?」
隼人「母さんなら自力で這い上がれるさ」
レン「ぷぷっ、お義母さんを助ける気はないそうですよ」
母「あーら、レンちゃんもさっき言われた事忘れたのかしら? 隼人は仮に私とレンちゃんが落ちそうになったら私を助けるわよ」
レン「あらあら、ぼけるには早いですわよ? 隼人くんが私という将来を誓ったパートナーを見捨てると思って?」
母「隼人?崖から落ちそうになったら私を助けるわよね?」
レン「いーや、私だよね?」
隼人(勘弁してくれ・・・)
隼人「それより腹減ったな。昼飯にしようか」
レン「え、どうしよう、お弁当忘れてきちゃった・・・」
母「あらあら、隼人の伴侶になるには100年早くてよ。 私のこのお弁当で・・・」
母「・・・」
隼人「昼飯は抜きか・・・」
レン「あ、でもあそこの崖にキノコ生えてる! 隼人くんキノコ好きだよね? 取ってくるよ!」
隼人「いや、待て・・・」
母「見つけたのは私が先よ! 待っててね、母さんすぐ取ってくるから」
「いやぁああああああああ!!」
「きゃあああああああああ!?」
隼人(言わんこっちゃない・・・)
  そして現在へ至る。
レン「隼人くん・・・私はもうだめ・・・ だからお義母さんを助けてあげて・・・今までありがとう・・・」
母「レンちゃん、諦めないで! 家族三人で幸せになるんだから!」
レン「三人・・・ふふ、ごめんなさい、お義母さん・・・本当は私、身籠もってるの・・・」
母「だったら四人で暮らすわよ! 隼人、今すぐレンちゃんを助けてあげて!」
レン「ごめんなさい・・・隼人くん・・・何も遺せなくて・・・」
母「あぁ! レンちゃん! レンちゃん!」
レン「お義母さん・・・私、お義母さんの娘で幸せでしたわ・・・」
隼人(・・・そろそろ助けるか)
隼人「一発芸やりまーす! 崖っぷちで逆立ち!」
母「え?」
レン「は?」
隼人「おぉっと、バランス取るのが難しいぞ! あぁ、こりゃまずい、崖に・・・落ちそうだ-!」
  隼人は崖から落ちそうになり、必死にしがみつく。
隼人「うわやばい、ガチで!崖にしがみつくってこんな筋力いるんだな!? 二人とも化け物かよ!?」
レン「隼人くん・・・!」
母「隼人・・・!」
  するとレンと母親はしゃかしゃかとゴキブリの如き速さで崖をよじ登り、慌てて隼人に手を差し伸べる。
レン「隼人くん、私の手につかまって!」
母「いいえ、隼人!母の腕力舐めるんじゃないわよ!私の手に!」
レン「いーえ、隼人くんは私が助けるんです!」
母「あーら、産まれたときから隼人を助けてきたのは私よ?」
レン「私が!」
母「私よ!」
隼人「ちょ、待て、ガチでピンチなんだが・・・ 二人協力して助けるって発想はないのかよ!」
レン「隼人くんは私がいないと駄目なんです!」
母「それは思い上がりよ!20年も隼人と一緒にいたから私が一番隼人のことは分かるわ」
レン「隼人くんとはその20年より濃い2年間を過ごしました!」
母「なんですって!」
「ちょっ、マジで限界・・・ うわあああああああああ!」
レン「隼人くんと私は運命で結ばれてるんです!」
母「運命なんて曖昧な物より血縁の方が強いんじゃなくて?」
レン「血なんてただの液体ですよね?」
母「まあ、口の減らない・・・!」
  隼人は全治三ヶ月で済んだ。
  無論その介抱も母とレンは奪い合い、隼人の気の休まるときはなかった。

〇明るいリビング
  7年後
睦月「お母さん、お婆ちゃん、みてみて、鶴折れたよ!」
レン「さすが睦月!器用ね! お母さんによく似たわね!」
母「この子はきっと天才よ! 将来はアイドルになるんじゃないかしら」
睦月「えへへ」
隼人「睦月には好きなことをさせてあげよう。 この子を幸せにするのが俺の使命だ」
レン「あれ、あなたいたの?」
母「睦月のことは私たちに任せて隼人は仕事してればいいのよ」
隼人「とほほ・・・なんだよこの扱い」
  こうして一家のヒエラルキーの最上位には睦月が立ち、隼人はいつの間にか最下位・・・
  崖っぷちに追いやられていた・・・
睦月「わたしはお父さん大好きだよ!」
レン「それを言うなら私もよ」
母「あら、私も負けてないわよ!」
  ・・・わけでもなかった。

コメント

  • 素晴らしい発想で楽しかったです!
    リアル崖っぷち!
    愛ですね。

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