第2話:ココロのイタミ(脚本)
〇葬儀場
とある日
僕は葬式に来ていた。
母さんの死因は過労とストレスらしい。
僕の家は貧乏で、父親がいなかったんだ。僕が生まれた時に病気で死んだようだ。
母さん一人でがんばってたもんな。
なおさら僕のいじめのこと言えないよ。
でも、気づいていたのかな?
じゃなきゃ・・・
こんなことって起こるのかな・・・
岡田大地「・・・」
???「あの子が岡田大地くんね? かわいそうに・・・」
???「でも、うちじゃ面倒見る余裕ないわよね・・・」
???「全く困ったもんだよ。あの子どうすんのさ?」
???「しっ!あの子に聞こえるじゃない!」
???「まあでも、あの子はまだ未成年だから施設行きで確定かな?」
もう聞こえてるよ。
でも、別に何か言いたいわけではないし。
ただ静かなところに行きたいな・・・
〇中庭
岡田大地「・・・」
岡田大地「何してんだろうな、僕は・・・」
???「おいっ! 見つけたぞ!!」
岡田大地「!?」
眞鍋俊「なにさぼってんだよ~ww」
伊藤和也「学校来てなかったから、逃げたかと思ったよww」
横田邦夫「まあでも、見つかったから問題ないなww」
岡田大地「・・・」
そう、僕はこいつらに毎日カツアゲされていたんだ・・・
今までは痛いのが嫌だったから、仕方なく受け入れていたけど、
なんか今はどうでもいいな・・・
岡田大地「・・・」
眞鍋俊「黙ってないでなんか言ったらどうだ!!」
眞鍋俊「どうなんだ!! ん??」
眞鍋俊「(あれはペンダントか??)」
眞鍋俊「(金目になりそうだから、今回はそれにするか。にししww)」
眞鍋俊「おいっ!!今回はそのペンダントを頂くぜ!」
岡田大地「嫌だ、触らないでくれ!!」
岡田大地「これは・・・大事なものなんだ・・・」
今どうでもいいみたいな感じでいたけど、さすがにこれだけは・・・
これだけは譲りたくない・・・
眞鍋俊「抵抗すんなよ、お前!!」
眞鍋俊「おとなしく、それを・・・よこせ!!」
岡田大地「うわっ!!」
岡田大地「だめだ・・・それ・・・を・・・返・・・して!!」
眞鍋俊「しつけ~な。 触んじゃねぇ!!」
岡田大地「うっ!!」
眞鍋俊「じゃあ、そろそろ行くぞ~」
横田邦夫「了解、了解っと」
伊藤和也「それ、いくらで売れるか楽しみだなww」
岡田大地「・・・」
岡田大地「・・・ょう」
岡田大地「ち・・・しょう」
岡田大地「ちくしょう・・・!!」
岡田大地「どうして、大事なもの守れなかったんだ!!」
岡田大地「あああああ!!」
岡田大地「うぅ・・・!!」
〇川沿いの公園
岡田大地「・・・」
さっきのペンダントは母さんの形見だ。
家で整理してたら見つかって、昔愛用していたものだと思い出したんだ。
これがあれば、何とか耐えられると思ったのに・・・
もう何も・・・なくなってしまったんだ!!
岡田大地「もう・・・うんざりだ・・・」
岡田大地「僕はここから落ちていなくなろう・・・」
岡田大地「もう十分生きたじゃないか・・・ 何を怖がる必要あるんだろうか・・・」
岡田大地「誰も心配してくれる人なんていないし、僕がいなくなったところでどうしろと・・・」
岡田大地「待っててね、母さん」
岡田大地「今からそっちに行くよ」
言葉にはしたものの、いざ乗り越えようとすると足が震える。
最後の抵抗だろうか。そんな余裕ないはずなのに、やっぱり怖い??
いやっ、決めたんだ!!
早く楽になろうって!!
別にいいじゃないか、焦らなくて。
まだ、時間はある。
ゆっくり、ゆっくり行こうじゃないか。
よしっ、なんとか柵を越えられそうだ。
改めて真下を見ると、更に震えてきた。
そりゃそうだ、こんなところに落ちる人なんていない。
でも、今日僕は落ちにいくんだ。
それで、早く開放されよう・・・
ああ・・・
どうして、現実は不公平なんだろう・・・
叶うことなら、”あいつら”を潰したかった・・・
本当は憎くて、抵抗したかったのに・・・
さっきみたいに震えるんだ・・・
体が・・・
結局、”あいつら”のいいようにされて、終わりなんだ。
もういい・・・いこう・・・飛び降りればすぐだ・・・
今だっ!!
???「待って!!何してるの!!」
岡田大地「!?」
柳原香澄「様子が変だよ!?どうしたの!?」
岡田大地「来ないでくれ!! 僕のことほっといてくれよ!!」
柳原香澄「何言ってるの!! そんなこと許さないよ!!」
岡田大地「僕は飛び降りるんだ!!」
柳原香澄「だめっ!!」
岡田大地「離してっ!!」
柳原香澄「絶対離さない!! 覚えてない!?私だよ!?」
その時、相手の顔が見えた。
見覚えのある子だ。見たことある・・・。
そうこうしている内に、彼女の掴む手の方が強くて、あっという間に柵から離された。
柳原香澄「だめだよ!! 命を粗末にしたら、いけないよ・・・」
柳原香澄「何があったか分からないけど、そこのベンチに行こう?」
岡田大地「・・・」
岡田大地「ごめん、柳原さん・・・ 柳原さんなんだね?」
柳原香澄「よかった、覚えていてくれたんだね・・・」
柳原香澄「やっぱり、あの時助けてくれた岡田くんだね・・・」
岡田大地「なんで僕のことを・・・??」
柳原香澄「偶然だよ。帰り道ここを通ってたら、様子が変だったから・・・」
柳原香澄「言いたくなければ黙ってるけど、何かあったの?話してくれるなら、聞くよ?」
岡田大地「・・・」
柳原香澄「無理にとは言わないけど、話すだけでも楽になれるかもしれないじゃない?」
岡田大地「うっ・・・」
岡田大地「うぁぁあああ!!」
恥ずかしいことに、声にならないほど泣いてしまった。
でも、柳原さんは嫌な顔をせず、そばにいてくれた。
ひとりの時間が多かったから、とても新鮮に感じるよ。
しかも、こんなふうに人から優しくしてもらったのも、いつぶりだろうか・・・?
僕はそれくらい外では孤独だったんだな・・・