恨めない理由(脚本)
〇ダイニング(食事なし)
夢葉「え・・・ちょ・・・ま、どういうこと?」
優希「そのままの意味だ」
夢葉「・・・っ」
優希は私に今回の依頼のターゲットは台風組のボスだと告げた。
私は戸惑いを隠せなかった。なぜならそれはマフィアが依頼されて殺した場合だと私が恨む理由なんてないからだ。
もし私がマフィアではなければ、悪いのは自分の両親を殺した優希。そして依頼した台風組のボスだと信じることができるだろう。
でも、違う。私はマフィアだ。ある程度この業界の常識、ルールは全て頭に入っている。
上位勢に多い依頼を受け付け、ターゲットを殺って収入を得る場合は依頼者が最低限生活するための生命線となる。
つまり上位勢かつ、基本的に依頼を受け付けて生活をしている私達は依頼者を恨むなど言語道断。
例えターゲットが身内であっても、集団の利益や自分の命のために人を殺めることさえも厭わない。
そう・・・そうでなければならない・・・。
優希「今でも俺がお前の両親を殺したことを恨んでいるんだろ?そして今回の依頼は俺にそうしろと指示した奴がいる」
優希「つまりその相手を拷問するなり、脅すなりして吐かせればいい。あの事件の真相が知れるんだ。願ってもないことだろ?」
夢葉「それもそう・・・だね」
夢葉「でも、今まで優希は聞いても教えてくれなかったでしょ・・・?なんで今更・・・」
優希「それは聞くな」
夢葉「分かった。聞かない。その代わりターゲットから根掘り葉掘り情報を引き出してやるんだから」
ものすごい緊迫感だった。流石はここのボスと言えるだろう。
でも、訳が分からない。なぜ情報を与えるような環境を用意しながら自分では何も言わないのか。
実際私は両親が優希に殺されてしばらく経ったあと、しばらくの間あいつと一緒に生活することになった。
あの頃は・・・まぁ気が狂ってたから聞かなかったんだけど、お別れの際にどうして私の両親を殺したのかについて尋ねた。
結果は今と同じで答えてくれなかった。でも、またあいつは私の前に現れた。
一体どういう意図があるのだろう
優希「結局行くんだな」
夢葉「うるさい」
優希「まさか俺のために・・・!?」
夢葉「自意識過剰すぎでしょ」
夢葉「とりあえず今回は私のために行く。そういうことだから」
夢葉「出発はいつ?」
優希「3時間後だ」
夢葉「分かった。準備してくる」
そう言って私はリビングを出た。正直私を餌を与えて釣っておいてそれを自分のためだと言うあいつに呆れた。
でも何故か嫌な気はしなかった。付き合いが長いから慣れているのだろうか。でも、それとは違う感覚がした。
どこか・・・感情が高ぶるようなそんな感じがした。
まぁ今はいいや。集中しないと。
優希「そう・・・。これでいいんだ。あいつのためにも、組織のためにも」