A rolling stone gathers no moss.(転石苔むさず)(脚本)
〇セルリアンタワー東急ホテル
こちら、現在の渋谷、セルリアンタワーです!!
ご覧ください!! 巨大な怪獣が街を襲っています!!
怪獣「こんな建物、ぶち壊してやるぜえー!!」
???「そうはさせるか!!」
〇黒
──虎のアギトが悪を喰らう
──渋色の炎が幽谷を伝う
〇セルリアンタワー東急ホテル
ズンッ!!
シヴヤタイガー「シヴヤタイガー、ただいま推参!!」
怪獣「出やがったな、ヒーロー!!」
シヴヤタイガー「吾輩が来たからには好き勝手させんぞ!!」
〇渋谷のスクランブル交差点
サラリーマン「やっちゃえ、タイガー!!」
女子高生「カッコいいー!!」
渋谷を襲う怪獣を、巨大ヒーロー「シヴヤタイガー」が迎え撃つ、ありふれた光景。
マオ「本当に戦ってるんだ、こんな近くで・・・」
しかし、地方から就職活動で来ている私にとっては、あまり関係ないことだった。
マオ「午後の面接、中止にならなきゃいいなあ」
〇面接会場
某企業にて
面接官「志望動機をお聞かせください」
マオ「はい、あの、私は渋谷が大好きで!!」
マオ「どうしてもこの街で働きたくて・・・」
面接官「弊社を特に志望する理由はありますか?」
マオ「それは・・・えっと・・・」
面接官「・・・すみませんが、弊社で働くビジョンがない方をお迎えすることはできませんね」
〇カウンター席
渋谷駅近くのカフェ
マオ「これで面接69連敗か」
マオ「渋谷が好きってだけじゃ、ダメなのかなぁ」
ズンッ!!!!
シヴヤタイガー「隣よいかね!?」
マオ「た、タイガー!?」
シヴヤタイガー「おっと大きな声で呼ばないでくれ、一応正体は秘密なんだ」
マオ「いやバレバレだと思うけど・・・」
タイガーって、人間形態の時もこの格好なんだ・・・
シヴヤタイガー「浮かない顔だな」
シヴヤタイガー「どれ、吾輩が君の悩みを聞いてやろう!!」
マオ「ええ・・・別にいいです」
なんかめんどくさいなこの人・・・
シヴヤタイガー「遠慮するな、悩める若者を導くのもヒーローの務めだ!!」
マオ「うーん」
マオ「私今、就活中なんですけど」
マオ「渋谷に憧れてるからって、渋谷の会社の面接片っ端から受けて全滅」
マオ「「渋谷が好き」だけで、就職なんてできるわけないですよね・・・」
シヴヤタイガー「ぐぅ」
マオ「寝んな!!」
シヴヤタイガー「すまん、怪獣との戦いの疲れがまだ残っていてな」
ズシィーンッ!!
怪獣警報発令!! 怪獣警報発令!!
市民の皆さんは落ち着いて避難してください!!
シヴヤタイガー「どうやら出番のようだな」
マオ「ちょ、ちょっと・・・」
シヴヤタイガー「そうだ、人生相談の回答がまだだった」
シヴヤタイガー「「渋谷が好き」結構じゃないか」
シヴヤタイガー「少なくとも一人ここに、「渋谷が好き」だけで働いている男がいるぞ!!」
マオ「タイガー・・・」
マオ「あいつ、お会計してない・・・」
マオ「ん?」
マオ「なんだろこれ。タイガーの忘れ物?」
〇渋谷スクランブルスクエア
シヴヤタイガー「トオッ!! タァッー!!」
怪獣「グラララァー!!」
シヴヤタイガー「ぐうっ・・・!!」
〇渋谷駅前
サラリーマン「どうしたんだタイガー!?」
女子高生「調子が悪いのかな?」
マオ「もしかして・・・」
マオ「これがないと力が出ないとか!?」
マオ「もう、しょうがないなあ!!」
サラリーマン「おいアンタ、危ないぞ!?」
〇SHIBUYA SKY
SHIBUYA SKY 展望台
マオ「はあ、はあ。ここなら・・・」
マオ「あっ!!」
〇SHIBUYA SKY
シヴヤタイガー「く、油断したか」
シヴヤタイガー「ここで態勢を立て直さねば・・・」
マオ「大丈夫!?」
シヴヤタイガー「君は・・・」
シヴヤタイガー「どうした、急にサインが欲しくなっちゃったかい!?」
シヴヤタイガー「あ、それとも私のプレミアム生写真かな?」
マオ「いるか、んなもん!!」
マオ「あんたの忘れ物、持ってきてあげたの!!」
シヴヤタイガー「忘れ物・・・?」
マオ「あ!! 後ろ!!」
シヴヤタイガー「むっ!?」
〇空
ズンッ!!
怪獣「グララァ・・・!!」
〇SHIBUYA SKY
シヴヤタイガー「もう見つかったか。やむを得んな・・・」
マオ「待ってタイガー!!」
マオ「これを!!」
シヴヤタイガー「おおっ!! これは・・・」
シヴヤタイガー「・・・・・・」
マオ「・・・・・・」
シヴヤタイガー「なんだね、これは」
マオ「へっ?」
マオ「タイガーのじゃないの?」
シヴヤタイガー「女子か!!」
マオ「ええー!?」
マオ「じゃあ、私の苦労は・・・?」
シヴヤタイガー「全くの無駄だったと言うわけだな!!」
マオ「皆まで言わないで!!」
シヴヤタイガー「だが、危険を厭わずに平和を守ろうというその心意気は気に入った!!」
シヴヤタイガー「滅多に見せない吾輩の最終奥義、ご覧に入れよう!!」
シヴヤタイガー「とうっ!!」
〇空
ズンッ!!
怪獣「グララァッ!!」
シヴヤタイガー「くらえ、必殺・・・」
〇動物
シヴヤタイガー「もふもふ肉球イリュージョン!!」
マオ「な、なんかかわいいー!?」
〇動物
怪獣「ギャアアアアア!!」
〇動物
シヴヤタイガー「ふ、他愛もない」
マオ「最初からこの技使えばよかったのに・・・」
〇SHIBUYA SKY
戦いを終えたあと──
シヴヤタイガー「ありがとう、就活生クン」
シヴヤタイガー「渋谷の平和は今日も保たれた・・・君のおかげだ」
マオ「いや、結局私何にもしてないです・・・」
シヴヤタイガー「しかし、君が危険を冒してまでここへ来たのは本当だろう」
シヴヤタイガー「それはなぜだね?」
マオ「それは・・・やっぱり、大好きな渋谷を守る手伝いを少しでもしたかったから」
シヴヤタイガー「ふむ。ならば景色を見てみたまえ」
マオ「・・・?」
〇東急ハンズ渋谷店
シヴヤタイガー「東急ハンズも!!」
〇SHIBUYA109
シヴヤタイガー「109も!!」
〇渋谷ヒカリエ
シヴヤタイガー「ヒカリエだって!!」
〇SHIBUYA SKY
シヴヤタイガー「全部君の「好き」が守ったものじゃないか。胸を張りなさい!!」
マオ「いや、アンタの肉体美で全然見えなかったから!!」
マオ「でもそっか、私の「好き」が守ったんだ・・・」
シヴヤタイガー「そんな君に提案だ!!」
シヴヤタイガー「「渋谷が好き」でできる仕事が、吾輩の知る限り一つだけある」
マオ「えっ!?」
シヴヤタイガー「どうだ? 吾輩と一緒にこの街を守らないかね?」
マオ「タイガー・・・」
マオ「いや、それはちょっと」
シヴヤタイガー「なんで!?」
マオ「私、ムキムキ半裸の人と働くのはムリです」
シヴヤタイガー「地味に傷つくこと言うね君は・・・」
〇SHIBUYA109
あれから一年──
私は無事に渋谷で就職して、忙しい日々を送っている。
マオ「さーて、早く会社に戻らなきゃ・・・」
ズンッ!!
マオ「おー、やってるやってる!!」
〇渋谷フクラス
シヴヤタイガー「ツアーッ!!」
怪獣「ゲギャギャ!!」
〇SHIBUYA109
マオ「相変わらずデカイなあ、タイガー」
仕事は楽しいことばかりじゃないけど、彼を見ると不思議と力が湧いてくるんだ。
マオ「がんばれー! シヴヤタイガー!」
〇渋谷フクラス
──おうっ!!
彼が呼びかけに答えてくれたような、そんな気がした。
タイガーではなかった……
ポイントをズラした展開に秀逸なギャグが楽しいです。守った渋谷の名所を説明しているのに、敢えて前面にタイガーがいるところが好き☺☺☺
ギャグのセンスに脱帽ですね!
笑わせて ちょっと ジーンとさせる、さじ加減のうまさに感動です!!
そしてキャラクターのうまさに嫉妬です!!!
ギャグのセンスが素晴らしいです!!( ;;)
とても勉強させていただきました🙇🙇
女の子とタイガーのボケとツッコミが逆になるのも良いシーンでした!!